表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カジヤノキヤクビト  作者: No.
工房日誌 2017.3~
90/411

3月27日雨 『賞金稼ぎ1名』

「新しいの、入ったぞー」

「おー、この街にも鍛治屋はあるのか。ラッキー、ラッキー」


古びた服装の男が、そう言って店にやってくる。まるで放浪者のような男は、髭をさわりながら、店の商品を物色していた。

誰にでも分け隔てなく、優しくないカルラは、男を軽く睨見つけた。


「何だ、お前。見たところ金は無さそうなんだが」

「いやいや、結構あるんだぜ。ほらよ」


焦った様子で、男は懐から金の入った袋を取り出す。

確かに、買い物できるだけの金額が入っていたが、家一件を建てられるようなくらいに持ち歩く奴なんて珍しい。

つまりは、普通の客ではないのだ。


「なるほど、強盗だな。しかも腕利き。……よし、商談だ」

「強盗だと思うなら、しないで下さい!」


いつの間にか後ろで立っていたシュラは、厳しい目付きで、小さな体でしかりつける。


「んだよ、シュラ。頭固いな」

「カルラさんがふやけているだけですよ」

「誰の頭が水浸しだ? もっとしっかりしてるからな」

「カルラ、そんなにしっかりしてない」


ニコもシュラと一緒に出て来て、平然とそう言ってのける。

少し落ち込むカルラに、男はヘラヘラと肩を揺らす。


「へぇ、結構な人気者だな、兄ちゃん」

「まあな。それで、そんな大金どうしたんだ?」


再び、それとなく聞いてみると、少し考えてから男は答える。


「ま、話してやってもいいかな。……この辺に、金をたくさん落とす魔物が生息していてな、そいつを狩っていたら貯まったんだよ」

「お金を落とすのですかっ!?」


金と聞いて、シュラが反応する。帳簿に赤い字が乱立しているためだろう。済まないとは思うが、反省はしていない。

興味を持った弟子に、カルラが説明を引き継ぐ。


「古代の金を喰う魔物がいるんだよ。結構有名な話だ。物によるが、そこそこの値段で買い取ってくれる」

「何故、それを知っていてカルラさんは黙っていたのですか。私達で狩れば、お金の心配しなくて済んだのですよね?」


鉱山に行ったり、ダンジョンに行ったりしたのだが、魔物の討伐はしたことがない。しかし、それには理由があるのだ。


「魔物の素材を売るには、ギルドに所属していなきゃならないんだ。んで、会費やら延長やらで金が掛かるからやらないんだよ。手続きも面倒だし」


ほとんどギャンブルの肉体労働で、命懸けとなれば、必然的にやる奴は少なくなる。

だが、金に目が眩んだようで、シュラは何かを呟く。


「それさえやれば、私も冒険者になれるのですね……」


止めはしない。たぶん、大丈夫だから。

カルラとシュラの話が終わると、男が思い出したように尋ねた。


「ああそれで、何か良い装備は売ってないか?」

「ミスリルの軽鎧なんてどうだ?」

「お、良いね。じゃあ、これで」


ぼとりと何かが落ちる。

黒くくすんではいるが、それは魔物の腕だった。

男は、恥ずかしげもなく豪快な笑い声をあげると、さっさとそれを拾い上げて、懐に戻す。


「悪い、ゴブリンの右腕だ。結構な値段で売れるんだよ」


それを見たシュラは青い顔をして、カルラの袖を引っ張った。


「カルラさん、私は冒険者さんになれません」


それが無くとも、実は年齢制限なんてものがあり、それに引っ掛かりそうな気がするのだが、それについては黙っておくとしよう。

冒険者……ガンガン逝こうぜ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ