表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カジヤノキヤクビト  作者: No.
工房日誌 2017.3~
83/411

3月20日晴れ 『鳥人間1羽』

「新しいの、入ったぞー」

「新しいものだけではなく、古きものにも目をやれ。それが進化の糸口だ」


店に来ていた人物には黒い羽があり、それでいて人間のような形をしていた。服装も自分の羽と同じような色の、闇夜に紛れそうな色合いで、どこから見ても奇妙な男だった。


「何だあれは?」

「カルラさん、あの方は鳥人族ですよ。郵便屋さんと同じ種族ですよ」

「いや、そういうことじゃなくて、アイツはうちの前で何をやっているのかってことだ。とりあえず、何か無償に腹が立つんだが」


冷静に返すシュラに、カルラは苦々しい顔で返す。その間も、男は身動ぎひとつ変えずに佇んでいるのだが、すこぶるウザイ。

焦れったくなったのか、片眉を下げてシュラが切り出す。


「私が聞いてみましょうか?」


しかし、カルラは首を横に振る。


「いや、ダメだ。ロリコンかも知れないから、シュラはダメだ」

「カルラさん、弾き飛ばしますよ?」

「弾き飛ばすって何だよ、新しいなっ!」


想像はつかないまでも、とりあえず録な目には会わないのだろう。カルラは後ろを振り返り、砂糖菓子を口に運ぶ店員を見た。


「……まあ、こんなときこそニコさん、よろしくお願いします」


ニコはやれやれと腰を浮かし、体勢を崩して寝そべる。そして、年頃の女の子としては無防備に、だらけたことを言った。


「めんどいヤダ。カルラがやれば良いのに」

「俺だって嫌なんだよ。お前なら、穏便に暴力で解決できるだろ?」

「暴力は穏便ではありませんっ!」


そう思うなら、弾き飛ばそうとしないで欲しい。

シュラは面倒ごとを押し付けようとするカルラの背中を押した。


「そもそも、危ないと思うなら、女の子に行かせないで下さい」

「はぁ、分かったよ」


いやいやながら、カルラは鳥男に詰め寄る。


「おい、鳥野郎」

「鳥野郎って!? ……俺は由緒正しき烏の一族だと分かって言っているのか?」

「知らねぇよ。ただ、そこに居られると営業妨害なんだよ。さっさと退け」


しっしっと、手を払う動作をすると、男は急に笑いだす。


「はっはっは、やはり分かっていないようだな!」

「え、何が?」


何か考えているのかと思って聞き入るカルラ。その態度に気を良くした男は声色高々に言った。


「これほどまでに格好良い俺が居るのだ。女の子達が集まらんわけがないだろう、たわけ!」


その声に、周囲の人々は距離を置いた。


「たわけはテメェだ! どっから見ても格好良くは無いし、むしろ黒々としていて気味が悪いんだよっ!」


ここで初めて男は動揺を見せる。羽をバタつかせ、自己主張の五月蝿い個性を出してくる。


「そんなわけ……。だって黒だぞ? 格好良いじゃないか!」

「単色でファッション語るなよ。もっと色を使え」

「カルラさん、種族ですからね? 無茶を言わないで下さい」


冷静なシュラに言われ、カルラも落ち着きを取り戻し、本題に入った。


「それで、何の用なんだ?」

「何がだ?」


とぼけた風でもなく、そう返される。


「いや、なんでここに居るんだって……」

「はっはっは、決まっているだろ!」

「よく笑うな……」


あきれるカルラに、男は誇らしげに胸を張る。


「俺は行きたいところに行く! だから理由はない!」

「……シュラ、客じゃないってよ」

「分かりました。仕事に戻ります」


しっかりと確認を取ったところで、さっさと店に戻る。こんなやつに関わる理由が無くなったから、当然である。


「え、ちょっと、もっと構って! ねぇっ!」


黒い烏は泣き声を上げている。

烏の男

備考……黒い羽を持つ一族のひとりで、そのことを誇りに思っている。他の色は許さない、断じて!


ファッション……黒とか白とか揃えておけば良いよね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ