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カジヤノキヤクビト  作者: No.
工房日誌 2017.3~
82/411

3月19日曇り 『機械工2名』

「新しいの、入ったぞー」


店の前にはすでに、男と、その子供らしき少女が並んで立っていて、男の方は、なにやら不機嫌そうな顔つきでこちらを凝視していた。

少女に何かを諭されながら、重々しい態度で口を開いた。


「ネジを頼む。a3タイプのシーリンス鉱石が入ってなければ何でもいい」


ずいぶんとマニアックな注文である。

店内にある箱の中から、該当するネジの入った箱を、いくつか重ねて持っていく。しかし、注文の品を前にしても、その眉間の皺は次第に濃くなっているだけで、とても客の顔とは思えない。

そんなカルラの心情を察したのか、少女が男の袖を引っ張る。


「先生、そんな顔していたら、怒っているように見えるよ?」


男は今にも食い殺しそうな目付きで、少女を見ると、一言だけで返す。


「……怒ってない」


怒ってないのか。

少女は腰に手を当て、大人である男に向かって、説教じみた言葉を口にする。


「分かっているよ。だから、勘違いされる前に、ラルカは言っているの。ほら、笑って」

「無理だ」

「諦めるの早いよ! 挑戦しようよ!」


ラルカと言う少女は、困ったような笑みを、今度はこちらに向けて話し出す。


「ごめんね。先生はこんな顔しか出来ないの。でも、今日はとても良いお店見つけられて、物凄く機嫌が良いんだよ!」

「俺には殺意が沸いたようにしか見えないけどな」

「まあ、少し怖いけど」


少し?


「結構、優しいかもしれないよ?」

「かも、じゃねぇか! 何で未定なんだよ」

「だって、機嫌なんてその時々に寄るでしょ。……ああっ、先生が悲しそうな顔してる!」


まるっきり変わらない男の顔を見て、ラルカはそう言った。男はひとしきりネジを観察すると、五箱からそれぞれ10個ほど取り出して、カルラに見せた。


「これを貰う。いくらだ?」


今は買い物に行っていて、シュラもニコも居ない。しかし、会計くらいなら、自分ひとりでも出来る。

100Gが二箱と、200Gが三箱だから……。


「500Gくらいか?」

「……安いな。良いのか?」

「良いんだよ、サービスだ。また来たときに何か買っていけ」

「……分かった」


商品を袋に詰めているカルラの横で、、ラルカは店内の品々を眺めている。その様子を見ている男の視線が気になった。


「そういえば、お前らはどんな関係なんだ?」


その問いに答えたのは、ラルカだった。


「制作者と、その作品だよ」

「え、親子か?」

「それだと、かなり厭らしい表現だとは思わないの? そのまんまの意味だよ。ラルカは機械人形だもの」


どこかの国の書物に載っていたような気がするが、まさか本物が居るとは信じがたいが、目の前の少女らしき存在は、自らの腕を軽く取って見せてそれを証明した。


「作れる奴が居るんだな。だが、そのデザインはこいつの趣味か? どう見ても幼すぎんだろ」

「……姉が欲しかったんだ」


今度は男が話始める。


「姉が欲しいと言ったら、両親に無理だと言われた。だから、作ってみた」

「いや、幼すぎんだろ。姉のサイズが小さ過ぎる」

「ラルカを作ったとき、先生は12歳だったから、外見年齢を13歳に設定したんだ」


なるほど、それですぐに追い越してしまったわけか。


「今は、姉弟じゃなくて、先生の助手として居るけどね。引いた?」

「いや。……ただ、機械で女を作るってエロいなって」


少し軽蔑されたが、すぐに元に戻る。


「凄く最低だね。でも、ありがと。先生もほっとしているよ」

「相変わらず、俺には殺人鬼みたいな顔にしか見えないがな」


袋詰めが終わり、二人に渡す。

日も暮れ始めた時間帯に、曇った空は暗く、早めに夜を運んでくる。


「鍛治屋さん、ありがと。また来るね!」

「……トリガー・モトリストと言う。困ったら、助ける」


実に奇妙な機械と一人。いや、二人は夜の闇に消えていった。

トリガー・モトリスト(35)

特技……機械人形制作

備考……機械の街の出身で、優れた発明家。どこかのパティシエとキャラが被ったけど、別に良いよね。


ラルカ(23)

特技……ロケット・パンチ!

備考……機械の体に人の心を宿した存在。高度な知能と、戦闘力から、いくつかの組織に狙われる。

機械の女の子ってエロいよね!

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