3月18日曇り 『四天王1名』
「新しいの、入ったぞー」
「ふふんっ。人間よ、我にひへ伏すが良い」
眼下から偉そうな言葉が聞こえてきて、視線をそこに向けると、赤い髪をした少女が腰に手を当て、無い胸をはっていた。
なんだ、こいつは。カルラが面倒くさそうに、攻撃体制に入る。
「ダメですよ、カルラさん。お客さんを追い払おうとしてはいけません。まだ売り上げが増えていないのですから」
最近、さらに行動を予測しはじめたシュラがそう言った。
「カルラはすぐ女の子に手を出す。そういうの良くないよ」
「ニコてめぇ、勘違いされるようなこと言うんじゃねぇよっ!」
後ろで待機していた二人を、カルラは不機嫌そうに目を細めて睨む。
そして、仕方なく接客することにして、頭を掻きながら、大あくびをしながら、少女に尋ねる。
「で、何のようだ? クソガキ」
「クソガキ言うなっ! ……我は魔王軍幹部にして、方角を治める四分の王の一人! 西方の白虎、テイフュル・ララであるぞ!」
その瞬間、周囲は静まり返る。別に、恐怖したわけでもなく、戸惑ったわけでもなく、ただ純粋に、誰もその名前に心当たりが無かっただけである。
しかし、テイフュルは気を良くしたらしく、得意気な笑みを浮かべて、幼い口を開いて自己満足に浸り出す。
「どうだ、恐れおののいただろ? 我の強さは大陸でも一、二を争うからな。どうだどうだ、我の配下として、武器を貢がせてやっても良いのだぞ?」
「うるさいガキ。貢いで欲しがったら胸を増やしてから来い、クソガキ!」
全く動じないカルラの反応に、テイフュルは取り乱し、涙を浮かべて声を腫らす。
「ガキガキ言うな! こう見えても我は三百は生きた身だぞ! ガキって言うなぁっ……!」
三百も生きたのなら、このくらいで泣くなよ。
極めて自分勝手な考えを持つカルラに、後ろの二人は怪訝な表情を浮かべてこう言った。
「カルラさん、子供を泣かせてはいけませんよ。また捕まってしまいます!」
「カルラ、貢ぐ話で少女泣かせちゃった。いーけないんだ、国王に行っちゃお」
「お前ら、俺に何か恨みでもあるのか?」
町行く人々の視線がさらに痛くなって来たため、しゃくり上げて肩を揺らすテイフュルに向かって言う。
「つーか、ガキじゃねぇ証拠がどこにあるんだよ? それが無いと分かるもんも分かんねぇぞ」
「そんな事ないもん……分かるもん」
「じゃあ、こいつを見ろ」
シュラを掴んでテイフュルに見せるカルラ。同じくらいの背丈の少女に目を丸くしていた。
「シュラはこんなんでも17才だ」
「嘘だっ! こんなガキなのにっ!?」
驚きの声が響く。その反応に、カルラはさらに言葉を足した。
「お前が言っているのはこういうことだ。分かったか?」
「うん! 今度は色っぽくしてくるから、待っててね!」
「オー、キナガニマッテルワ」
二度と来ないでほしいと願いつつ、手を振って送り出す。
ようやく面倒なのが片付いたかと思ったとき、手の中に熱を感じた。
恐る恐るシュラの顔を見ると、いつになく不機嫌そうな顔をしていた。
「カルラさん、ロリコンもほどほどに!」
「誰がロリコンっ……。あ、てめぇ、また噂を立てる気かっ!?」
これから買い物にでも行こうとばかりに財布をちらつかせ、さっさと支度をし始める。店の奥に消えたシュラをカルラは説得しながら追っている。
残されたニコは、肩を竦めてこう言った。
「やれやれ、全く困った奴等だぜ」
「てめぇが締めるな!」
テイフュル・ララ(341)
特技……土魔法
備考……子供外見に子供思考。甘やかされて育ったため、偉そう。年齢はあるが、これでも幼年期であるため、伸びしろはある。
イメージは中国の四聖獣。四天王と言えば、これだよね!