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カジヤノキヤクビト  作者: No.
工房日誌 2017.3~
80/411

3月17日晴れ 『百鬼夜行』

「新しいの、入ったぞー」


今日という日は、とても爽やかな天気が空を作っていた。

当たる太陽の光が眩く地面に反射して、この季節にしては陽気な日になろうとしていた。

しかし、この店にはそんなこと関係なく、おかしな客が現れる。


目の前に居るのは大名行列も恐れをなして逃げ出しそうな、魑魅魍魎がよろよろとバランスの悪い両足で立ち、こちらに濁った目玉を向けている。


なんだろう。呪いかな?


そんな状況にも関わらず、ニコは嬉しそうに目を輝かせている。


「カルラ大変、死んでる。死んでいるのに動いてる」

「ああ、そうだな。動いているな。だから、銃を向けるのは止めような?」


さっきから試し撃ちをしようとしている指をなんとか押さえている。


「嫌だ。ここで止めたら銃が廃る」

「廃れろ、んなもんっ! 撃っても腐肉がばらまかれるだけだろうがっ!」

「あら、お久しぶりですね。鍛治屋さん」


二人の格闘を見て、微笑みながら女性が近づいてきた。その顔に見覚えのあったカルラは眉をぴくりと動かす。


「ああリージェか、久しぶりだな。つーか、これお前の死体か」

「うん、驚かそうと思って、歩かせてみたの。どう? 驚いた?」

「魂抜けるかと思った」

「死体だけに?」


よく分からない冗談を毎度挟んでくるが、やはり感性が合わないのか、笑えたことがない。

店の前に死体を並べられて笑えるというのも、どうかと思うけれども。


「あ、リージェさん、お久しぶりですね」

「シュラちゃんも久しぶり。どう? 私の死体達、どう?」

「えーと……蠢いてますね」

「ありがとう! みんなも喜ぶと思うよ!」


褒め言葉だったのか? 今の。


「あの、それで本日はどのようなものをお探しですか?」

「そうだったわね。今日は武器を買いたいの」


死体達にでも持たせるのだろうか。そう思ってカルラが視線を向けると、それを察したのかリージェが笑った。


「この子達にじゃないよ、私の。この子達に渡しても上手く使えないから、宝の持ち腐れになってしまうわ。死体だけに」

「そ、そうですね」


笑いたくても笑えないジョークを連発されて、シュラも困惑している。

死体達も心なしか怒っているような……。本当に死体か? ものすごく睨んでいるけど。


「これなんだけど……」


シュラに言われて、リージェは自身の使っていた武器を出す。


「ロッドか。これならすぐに修理出来るぞ」

「本当! 良かった、これお気に入りだったから……。どれくらいで出来る?」

「二、三時間。それまで街をぶらついていろ」

「うん、ありがと」


リージェはロッドを置いて、歩き去っていく。それに続く死体の群れは、さながら百鬼夜行のようだった。


ニコは、その最後尾を指差して言った。


「あれ、生きてる」

「は? 死んでるだろ、目でも腐ったのか? 死体だけに」


冗談だと思って流そうとしていると、シュラも、


「あの方だけ、魂の色が違いますね。本当に生きているのかも……」


どこからどう見ても死体にしか見えなかったのに、もしかしたら人間なのかもしれないのか。

それは、なんというか、


「ヤバイな」

「それで済ませないで下さい! 確かめに行くべきです!」


死人より、幽霊よりも、人間が怖い。

リージェロット・バゼラード(26)

好きな本……BL

備考……外見はなかなか良いため、たまに人間の追っかけが現れるのだが、本人は気がついていない。

世の中、頭のわいてる人が結構いる。死体だけに。

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