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カジヤノキヤクビト  作者: No.
工房日誌 2017.3~
77/411

3月14日曇り 『王様1名』

「新しい商品、入りましたよ~」


カルラの不在中、シュラが店の前に出てると、そこには一人の女性が立っていた。

豊満な胸に高い身長、癒しを与えるような柔らかな物腰は、自分に無いものであることを瞬時に認識した。


サイズの違いに思い悩んでいると、女性はシュラに微笑み掛ける。


「こんにちは、今日も良い天気ですね」


その言葉を聞いて、空を見上げる。曇天の雲行きは、今にも崩れそうに揺れている。

どう返したものかと悩んでいると、隣にいるニコが飴を含んだ口を動かした。


「曇りだけど?」

「ニコさん、もう少し相手の意を汲んでください。きっと深い意味がおありなのです」

「でも、曇りだよ。ニコの心のように淀んでいる」

「今朝ピーマン残さずに食べられましたね」


遠い目をしているニコの姿を見て、女性はくすりと笑いかける。落ち着いたその仕草からは、二人にはない大人びたものが見てとれた。


自分が笑っていることに気がついて、女性はそっと口許を隠す。


「失礼しました。久しぶりに女の子らしい会話が出来たもので……」

「女の子らしくはありませんけどね」

「大人っぽいからね、ニコは」

「子供っぽいという意味ですし、あと私を外さないで下さい!」


再び可笑しそうに目を細める女性。一通り笑ってから、ようやく深い呼吸をして落ちてくと、ひとつの商品を指差して二人に尋ねた。


「ああ、そうでした。これ、どんな物なのか、お教え願えますか?」


指の先にあるものは、どうやら杖のようだった。ようだった、というのはいつもの如く、それが普通の品でないことは分かりきっていることに他ならない。


シュラは恐る恐る、その杖を手に取ると、名札に書かれている説明文を読みだした。


「これはどうやら、地面を突くタイプの杖ですね」

「違うのがあるんですか……」

「ええ、まあ」


倉庫を整理しているときには、空に向かって使ったり、水辺に向けて使うものがあった。


「それで使い方ですが、普段は地面をついて杖のように使えるのですが、身の危険が迫ったときにこのボタンを押すと」


カチッと音がして、シュラの体には光の膜が現れた。


「バリアが展開できる仕様になっています」


もう一度ボタンを押すと、膜は消え去り、普通の杖に戻る。

感心したように女性は頷き、シュラの手から杖を受け取った。


「買わせていただきますね。聞いていた通り、変わったお店ですね」


金貨を手渡す女性の発言に、シュラは疑問を覚えて口にする。


「どなたからの紹介ですか? いつか、お礼をしたいのですけど」

「それは秘密です、友達とは思われたくないので」


酷い言われようだ。


「けど、仕事ではよくお世話になっているので、信用はしていますから、本日は足を運んでみました」

「お仕事はどのような?」


お釣りを手渡すシュラの顔に口を近づけて、そっと耳打つ。


「しがない魔王をやらせて頂いています」

「ふぁえ?」


理解できずに固まるシュラから顔を話す女性は、微笑み掛ける。


「これからも、ルシフル・マーリンをよろしくお願い致します」

ルシフル・マーリン(?)

髪……栗色

備考……国内に潜伏している幹部の助けで入国。勉強ばかりの人生だったためか、女の子らしいイベントに飢えている。

年齢は秘匿。魔王権限で国家機密に指定されている

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