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カジヤノキヤクビト  作者: No.
工房日誌 2017.3~
75/411

3月12日晴れ 『狩場にて』

「新しい罠、設置してきたぞー」


東の深い森で、そんな声が聞こえてくる。背の高い草を掻き分けてカルラが顔を出すと、シュラとニコは焚き火の用意を始めていた。


「なんでこんなことに……」

「仕方ないだろ。最近、何も売ってねーんだから」


小さな火を眺めながら、カルラはそう言った。

何故か客だけは毎日、滞りなく訪れはするのだが、結局のところ誰も買いはしなかったのである。

その前の月は店を空けたり、王宮襲撃したりで忙しく、売る間もなかった。そのため、カルラの貯金も、手立ても底を尽きて、今現在、予算削減のために狩りを行っているのだ。


元騎士隊長が二人に、魔法幼女が一人居るのだから、容易いものだろうと、そう思っていた。


「カルラ、銃はどこ? 木っ端微塵にするから」

「おいニコ、何聞いてたんだ? 俺らは狩りに来たって言ったばかりだろ! 肉片にしてどうすんだよっ!?」


この通り、最も狩りに向いていそうな奴が使えないという事実に、ついさっき気がついたわけだ。

王国支給の対物ライフルなのだから、威力はお墨付きだ。


「なんで、ボウガンは嫌なんだ?」

「威力が足りない。そんなものでドラゴンを倒せると思わないで」


ニコは突き出された武器を受け取らずにそう言うと、カルラは不機嫌そうに喚く。


「思ってねーよ。誰もドラゴン相手にしようなんざ言ってねぇだろ! 居たら即効で倒してるし!」

「倒せてしまうのですか……」


シュラが呆れてため息をつく。そんなシュラの魔法なのだが、強力過ぎて地形が変わりそうになったため、却下した。

普段は物凄く手加減してくれているのだということが知れて、内心怯えているのだが、顔には出さない。男の子だもん。


「結局、狩りが出来んのは俺だけか」

「そのようでーーー」


ドゴンッパアァァーンッ!


そんな音が聞こえてきて、シュラが驚き、音の方向を見ると、爆煙が空に向かって伸びていく光景が見えた。


「……あの、カルラさん」

「なんだ?」

「仕掛けた罠って、何ですか?」

「『竜殺し』だ。ドラゴンも殺れる」


平然と言って退けるカルラに、シュラは湿った視線を向ける。誰一人として、まともに狩りを行えるものがいなくなってしまったのだ。


「何で皆さん、ドラゴンを倒そうとするのですか!? 猪とかで良いではないですか!」

「でも、ドラゴン美味しい」

「まあまあ美味いな」


当然のことを言うシュラは、何故か疎外感を感じて膝を折った。


「うぅ……人選ミスでした……」


ドラゴンなど、この辺りに居るはずもなく、このままでは今夜の食事にすらありつけない。

そう思ったとき、目の前の茂みが揺れた。


「お、こんなところに良いカモが居たぞ~!」

「マジじゃんっ! よっし、狩ろうぜ~」

「へへへ、逃げようと思うなよ~。ここいらは、俺らの縄張りなんだから、逃がしはしねぇよ?」


風体の悪い男達が周囲を囲む。なかなかに強そうな彼らを見て、鍛冶屋の三人は表情を明るくした。


「カルラ、銃」

「あいよ。シュラ、手加減するなよ」

「いいえ、命を取ったらダメですから!」


余裕の会話をする三人は、三十人の集団を前にして軽く身構える。


「おいおい、たった三人で何を……。えっ、そんな、やめ、やめて……ギャーーーーっ!!」


その一時間後、手配中の盗賊団は警備隊に引き渡され、賞金になったとさ。

手配中の盗賊団

特技……仲間を呼ぶ

備考……東の森に居た野党。元々は他の地域に住んで居たのだが、サーカスを見るために移動した。そこそこ強いが、ドラゴンよりは弱い。

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