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カジヤノキヤクビト  作者: No.
工房日誌 2017.3~
73/411

3月10日雨 『宿屋1名』

「新しいの~」

「あれ、カルラ兄ちゃんとシュラ姉ちゃんは?」


目の前の少年は、物珍しそうな眼差しでニコを見てから、周囲を探すように視線を動かした。

飴玉を口の中で転がしながら、ニコはこてりと首を傾げる。


「誰?」

「タルトって言うんだけど、知ってる?」

「ううん、知らない。でも覚えたからいい」


友好の証なのか、ニコは飴玉を差し出すと、タルトはどうもと受け取り口に放り込んだ。

甘ったるい味に顔をしかめながらも、タルトは初めと同じように尋ねた。


「それで、兄ちゃん達はどこに居るの?」

「お買い物」

「へぇ」

「俗に言う、お買い物デートよ」

「言い換える必要あったかな?」


想像してみれば、ただの親子の買い物にしか見えないのだろうけど、それでもシュラは喜びそうな単語だ。

しかし、現実とは残酷もので、カルラの方は絶対にそうは思っていない。


タルトはふと疑問に思って、ニコの顔を除き込むた、それを口にする。


「そういえば、あんたは二人の何だ?」

「ニコ?」


考えたこともなかったのか、深く深く考え込んで、腕を組んで揺れている。それでも答えが出なかったようで、不機嫌そうに瞼を半分閉じてこう言った。


「ニコとは誰? 神は何故ニコを作ったの? ニコは神?」


凄まじい混乱である。とりあえず、神ではない。


「いや、姉ちゃん。僕はただ何しているのかって聞いただけだよ?」

「何だそんなこと……」


再び深く考え込んで、ようやく思い付いたらしく、表情を明るくタルトを見た。


「ニコは鍛冶屋のペット。これ、完璧」

「絶対に勘違いされるよね? お手伝いとかでしょ。カルラ兄ちゃんの噂がグレードアップしちゃうから、そう言ってあげて」

「……うん?」


分かったのか、分からなかったのか、そんな曖昧な返事をする。


確かに、この動作からは犬や猫のような、予測できない可愛らしさがあるのだが、せめて人と扱ってやらなければ、色々と問題が生じるだろう。


ぼんやりと、店の品を見て時間を潰していると、今度はニコが尋ねた。


「タルトは誰?」

「僕?」


少し前までは誰でもなかった。ただの泥棒で、生きるために生きている、そんな生活をしていた。

でも、今は違う。

人が居て、出入りして、笑い会える場所にいる。


「僕は宿屋の息子だよ。少なくとも、今は」


雨音に混じって、足音が近づいてくる。ここは人が通る道。

タルト・ローマン(8)

備考……宿屋では接客を行っているため、口達者。カルラから武術も習っている。

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