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カジヤノキヤクビト  作者: No.
工房日誌 2017.3~
71/411

3月8日晴れ 『修道士2名』

「新しいの、入ったぞー」

「レラジェ様、ようやく目付きの悪い悪党鍛冶屋が現れましたよ」

「シトリー様、ようやく会えたと思ったら、新しい手下を従えていますよ」


修道服を揺らして、二人はそれぞれカルラとニコを指差してそう言った。

珍客に慣れたカルラだったが、この二人の訪問には首を傾げた。


「お前ら、そこまでシュラに執着するわりに、あんま出てこねぇな」


最後に見たのは2ヶ月くらい前のことであり、その存在を忘れかけていた程だ。

カルラの発言が衝撃的だったのか、二人は目を丸くしてから、ヒソヒソと耳打ちしながら、それでも周囲に聞こえるくらいの声量で話し出す。


「レラジェ様、このロリコン鍛冶屋が何か言っていますよ」

「シトリー様、私達への仕打ちを忘れているようです」


仕打ちと呼ばれるようなことはしていないし、忘れていたのだが、どうやら何かをしたらしい。

シトリーが声を荒げて主張する。


「私たちは何度も足を運びました。それなのに、毎回お店が閉まっていたのです!」


今度はレラジェが言葉を引き継ぐ。


「私たちは何度もお店を壊して侵入しようとしました。それなのに、壊れないのです!」


今度はカルラが主張する。


「壊そうとすんじゃねぇ! 人んちを!」


まさかの強硬突破である。

神に仕えているみたいな格好して、なんてことをしているのか。罪深過ぎるだろ。


「だいたい、うちの防壁はドラゴン討伐用に改良してっから、人間が触れたら危ないぞ?」

「カルラ、少しは手加減して。死人が出る」


ニコは何を言っているのか。俺の知ってる人間は、そんなに脆くない。


シトリーは気を取り直してもう一度、カルラを指差して宣言する。


「今日こそは、我々の幼女様を引き渡して頂きます!」

「いや、今シュラは実家に帰っていないぞ?」


ようやく本題に入ったところ悪いのだが、間の悪いところに、運の良いことに、シュラは現状報告のために帰省していた。

流石にそこの住所までは把握していなかったらしく、シトリーとレラジェは膝をついて落ち込む。


「レラジェ様、またしても鍛冶屋が邪魔をしてきました」

「シトリー様、この恨みは忘れてはいけませんよ。天罰を与えるのです」

「お前らに天罰が下ればいいのに」


カルラが呆れて溜め息をつく。

そのとき、ニコが修道士達の肩を叩いた。二人が彼女の顔を見上げる。


「シュラちゃんは、いつも心の中にいる」


目を見開き、悟ったように言葉を噛み締める。


「……レラジェ様、信じれば救われるのでしょうか」

「……シトリー様、そのようですね」


何か感動しているところ悪いのだが、いないよ? 別に死んだわけじゃないし、実家に帰っただけだし、それはただの幻だし。

しかしまあ、納得したようで、どこか晴れ晴れとした表情を浮かべて二人は立ち上がる。


「レラジェ様、我々は間違っていました。幼女様を捕まえて囲って育てようとしていました」

「シトリー様、我々のことを忘れられないくらいに調教しようとするなんて、やはり間違いなのです」


そんなことをしようとしていたのか。シュラを渡さなくて良かったと、常々思った。

二人がスキップを刻みながら、鼻唄を歌いながら去っていったあと、ニコは呟く。


「……クッキーは?」


それが狙いか。

シトリー・アーセナル(17)

趣味……洋服作り

備考……最近、孤児院の設立を考えている。


レラジェ・ガリル(17)

趣味……小物作り

備考……最近、公園の建造を考えている。

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