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カジヤノキヤクビト  作者: No.
工房日誌 2017.2~
59/411

2月24日雨 『国王一同』

「新しい武器はぁ、いらんかねぇ!」

「や、安くて、安全ですよ!」

「おいおいおい、あんたら何してやがんだよ!?」


王宮の真ん中、兵士達が定例会議で集うその広間で、トルは怪しい二人を呼び止める。


一人は背中にいくつもの武器の入った篭を背負い立っていて、もう一人は文字通り小さくその身を縮ませている。

カルラはその言葉を聞いて、面倒くさそうに答えた。


「見りゃ分かんだろ? 商売だ」


昨日、トルが迎えに来てから、せっかく王宮に招かれたのだから、出張販売をしようとシュラに提案したのだ。

最初は渋っていたが、設計図を手に入れるために必要だと言ったら了承してくれた。

ちなみに、全く関係ないのだけど。


トルは呆れたようすで腕を組み、商品を両手に持つカルラを見た。


「いや、分かるよ。俺が聞きてぇのは何で今ここでそんなことをしてるのかってことなの。連れてきた俺の品位まで疑われるから止めてくんない?」

「ご、ごめんなさい。でも、うちも苦しくて……」


シュラが申し訳なさそうに、恥ずかしそうに頭を下げる。事前に打ち合わせた通りの理由なのだが、自然すぎて演技に見えない。

たぶん、演技ではないのだろう。

その姿に、トルは何故か罪悪感を覚えたのか、少し戸惑っている。


「いや、嬢ちゃんは悪かねぇんだよ? ただ、場所が悪いだけで」

「そうだぞ? お前は店を思ってやってんだ、もっと誇りを持てぇい」

「カルラ、お前は悪いからな? 元騎士のくせに何してんだ」

「うるせぇ、過去よりも未来を見ろ」


今も昔も誉められた人間ではないカルラが言う。その時、広間の扉が開く。

久しぶりに見るその光景に、カルラは目を細め、室内を凝視する。


「入れ」


現れたホネストが、以前より少し疲れたような顔で現れる。


「久しぶりだな、元気にしてたか? くそ野郎」

「上々だ。特に、貴様を解雇してからは調子がいい」


睨みあうカルラとホネストの間に、トルが割り込み、両者の肩に腕を回す。


「まあまあ落ち着け、二人とも。過去のことは水に流して、今はお互い目的のために生きようや」

「肩を退けろ、トルアド。邪魔だ」

「そうだ、ドルフィン。加齢臭がキツい」

「そこだけ息合わせんの止めてくれる?」


カルラはトルの腕を振りほどき、円卓に歩み寄る。席は十五席設けられていて、騎士団と王、記録係、そして俺の席だろう。

騎士団が集まりだす中で、カルラは真っ直ぐ、奥の扉を凝視した。


扉の前に立っていたのは国王。

少し老けて皺が増えてはいるが、最後に見たときと同じ無表情。戦争の首謀者にして、師匠を捕らえるように命令した男。


目が合うも、カルラは何も言わず、拳を握りしめて席についた。

国王

特技……無表情

備考……表情がないと思われがちだが、照れ屋で、臆病。友達がいない。

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