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カジヤノキヤクビト  作者: No.
工房日誌 2017.2~
43/411

2月8日曇り 『釣り人3名』

「新しいのが釣れたよー、カルラくーん」

「そうか、新製品の調子はどうだ?」

「よく釣れるよー」


相変わらず、のんびりとした調子で会話をするジャックの手には、いくつもの、普通の釣具店には売っていないであろう改良が施された竿が握られていた。


町から北に何キロか進むと、湖畔が見えてくる。特別に綺麗だと言うわけでもないし、珍しい魚が釣れるわけでもないが、近くで最も広いということが、釣り人の間では賑わう理由になっているらしい。


そんなところで、釣りの趣味もないカルラが何をしているのかと言うと、試作品の試験である。


「カルラくん、他の人たちは何をやっているのかなー?」

「釣り……じゃねぇのか?」


他の人、というのは、ジャックを筆頭にした暇人達のことである。

こいつらいつ仕事しているのかな、と思わせるようの奴に声を掛けたら来た。


「シュラ、そっちは釣れたか?」


別の場所で構えていたシュラにもとに行くと、泣きそうな顔でこちらを見てきた。

苛められたの?


「カルラさん、エイルさんを止めてくださいっ!」

「悪いな、ちょっと体調が悪くて」

「逃げないで下さい、一人にしないでください!」


足にしがみつかれたら動けない。軽いから動こうと思えば動けるのだが、それをやったら文章的に不味いことになるだろう。

この小説は全年齢対象だから……。


仕方なしに、異様なオーラを醸し出している薬屋の後ろにカルラは立つ。


「おい、何してるんだ?」


猫のように曲げた背中に問うと、魔女顔負けの不穏な笑い声が返ってくる。タダで働いてくれるとはいえ、人選を誤ったことは確かだ。


「釣りですよぉ。見れば分かるじゃないですかぁ」

「俺の知っている釣りには、薬壺は必要ないのだが?」

「これを使うと、お魚さんがぁ浮いてくるんですよぉ」

「それ毒だろうがっ! 湖を汚染する気か!?」


壺を全て取り上げると、エイルは名残惜しそうにこちらを見つめる。


「あぁ~、それがないと、ジャック様に褒めて貰えなくなりますぅ……」


よく分からないことを口走るエイルをシュラに任せ、カルラはもう一人の協力者のところまで歩いた。


少し離れた、三人が居た場所の反対側で、ゆったりと、気品溢れる身だしなみで佇む女性の姿を視界にとらえる。

その背後に向かってカルラは尋ねた。


「調子はどうだ?」

「あら、カルラ。私に聞くの?」


自信の籠ったその言葉の意味をカルラはすぐに理解した。


「そうだったな。お前なら、占いで何でも分かっちまうんだったな。釣りのポイントぐらい、余裕綽々だろ」

「何でも、占いで解決するとは限らないわ」

「違うのか?」


垂らした釣糸は、緩やかな流れの模様を描き、イグはそれを目で追っている。

画家なら絵を描きたくなるのであろう光景が肌に合わず、カルラはそっと空を見上げた。


「占いは未来の一端を見るだけの能力で、全てが絶対に起こるわけではない。見たことによって変わることもあるし、何も出来ない未来もある。この能力は万能ではない」


近くに居るのに、その面影はどこか遠く、イグは佇んでいた。

誰にもない才能に恵まれて、誰もが欲しがる自分が居て、それでも手に入らなかったものが、視界にはあるのだろう。


見え過ぎるが故に、どれほどの秘密を飲み込んだのか、カルラには分からない。

しかし、友人としてなら、隣に居ても悪くはないと、黙って同じように、水鏡に姿を写しこむ。


頬杖をつき、カルラは尋ねた。


「それで、釣れたのか?」

「いいえ。あの男に釣れる場所を取られてしまったから」

「……結局占ったのかよ」


呟く声はどこか楽しげに響いた。

ジャック・アグラム(21)

得意料理……なんでも

備考……警備訓練中に迷子になり、カルラに誘われて釣りをしていた。まだクビにはならない。


エイル・レ・マット(20)

得意料理……甘いもの

備考……薬剤師としての実力は高いため、ものすごくお願いすれば万能薬までを作ってくれる……かも。


イグノラネス・ブローニング(20)

得意料理……ダークマター

備考……高度な占いが出来るため、あまり仕事をしなくても国が金を出してくれる。

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