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カジヤノキヤクビト  作者: No.
工房日誌 2017.2~
42/411

2月7日晴れ 『看板息子1名』

「新しいの、入ったぞー」

「相変わらず暇そうだな」

「うるせー、お前が来たときだけ暇になるんだよ」


店の軒先に腰掛けて湯呑みをすする、宿屋のタルトの横に座って暇そうに、誰もいない店の前をカルラは眺める。

今日は宿屋の老夫婦が知り合いの遠出しているから、子供であるタルトを鍛冶屋に預けていたのだ。


「シュラ姉ちゃんは?」

「工房で練習中。その間は覗かないでくれって、鶴の恩返しかよ」

「鶴というよりはヒヨコみたいだけどね」


同感だが、それを本人に言ったら、きっと俺は消されるのだろう。……俺が。

町の生活にも慣れたらしく、タルトは随分遠慮が抜け落ちて、生意気に拍車が掛かって子供らしく笑っている。


「そう言えば、カルラ兄ちゃん」

「なんだ?」

「シュラ姉ちゃんが背を気にしているなら、成長を早める道具とか作れないの?」


考えたことも無かった。シュラ自身からも、考えにあったのかは分からないが、聞かれたことはない。

しかし、すぐにカルラはかぶりを振る。


「成長を促す道具があっても、結果が出たことを変えることは出来ねぇ。残念ながらな」

「運命って残酷だね」


子供の夢を奪ったようで、罪悪感が心の底に溜まる。そのあとすぐに流されるけど。


「でもさ、手足を伸ばす道具なら、何とか出来るんじゃない? 骨が折れたら、長さが変わって治ることもあるでしょ」

「出来ないことはないが、あいつの外見は手足だけじゃねーだろ。顔も肌もガキだから、不自然極まりねぇ。人類の神秘だよ、あれは」

「本当に17歳なのかな……。本当は子供って考えた方が自然じゃない?」


少し前までカルラも疑っていたのだが、根拠たる根拠が出来てしまった。


「あいつの兄貴に手紙で聞いてみたら、確かに17だとよ」

「姉ちゃんの兄ちゃん? どんな人?」


この前襲撃に来た人と言えるはずもなく、単純に見たままを口にする。


「大人だったな。少なくとも、大人に見える外見だった」

「ふーん……」


曖昧な相づちの後は静かになり、何を思ったのかタルトは、カルラの顔を見て、一言尋ねる。


「兄ちゃんは、シュラ姉ちゃんとどういう関係なの?」

「弟子と師匠だな」


即答すると、タルトは不服そうに口を尖らせた。実のところ、何が言いたいのかは分かっていた。

たぶん、こんな感じに聞いてくる。


「じゃなくて、恋愛とか、そういうの」


ここで肯定すると、ロリコンの噂に拍車が掛かって火を吹きそうだから、当然とばかりに否定する。


「あるわけねぇだろ。俺はガキよりも胸の大きな女がいいの」

「絶対にですか?」

「絶対にねーな。ペッタンペッタンで、ツルツルで、おまけに怒りっぽいからな……ん?」


冗談を交えて笑いながら、そこまで言ったところで気がついた。声が高くなったような……。

振り返ると、いつの間に作業を終えたのか、シュラが小さな足で立っていた。


「シュラ……ちゃん……? いつから居たんだ……?」

「成長を促す道具、のところからですよ」


かなり序盤だ。

隣からは押し殺したような笑い声が聞こえてくる。


「兄ちゃんダメだよ、女の子にそんなこと言っちゃ。じゃ、またねっ」

「あ、このっ!」


知っていて、俺にあの言葉を言わせたらしい。店を飛び出すタルトの後を追おうと立ち上がるカルラだったが、袖を掴まれ、動けないくらいの殺気を感じた。


「逃がしませんよ?」


シュラの手には闇が広がっていた。見たことの無い魔法だから、きっと練習したのだろう。

今の表情と合っていて怖い。


「カルラさん、何か言うことは?」


聞かれて答えるべき言葉など、女に縁の無いカルラに期待してはいけない。


「えーと、幼女最高?」

「違います!」


カルラはロリコンの称号を手に入れた。

タルト・ローマン(8)

特技……悪戯

備考……宿屋の手伝いをしていて、たまにカルラをからかいに来る

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