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カジヤノキヤクビト  作者: No.
工房日誌 2017.2~
40/411

2月5日晴れ 『忍者1名』

「新しいの、入ったぞー」


カルラはただそう言っただけなのに、全身を黒装束で覆い隠した男は、マスクで隠した口を動かして尋ねる。


「拙者に必要なものは何だと思うでござる?」

「協調性じゃねぇか?」


闇夜に紛れる衣装を、昼間の明るさが目立つ場所で来ているのだから、かなり不審な人物に見える。

しかし、男は何を思ったのか、勝ち誇ったように鼻で笑った。


「ふん、忍に協調性など要らぬ。必要なのは、大衆に紛れる隠密の腕だけでござる」

「それが無いって言ってんだよ。鏡を見ろ、大衆から浮いた怪しい男が居るから」

「確かに、拙者は未熟者。まだ少しだけ気配を残してしまう」

「お前の耳には土でも詰まっているのか?」


かなり頭の中が痛い奴らしく、会話が成立しない。声色と、僅かに見える肌の色から、若い人間であることが分かる。

若さ故の活気からか、男は拳を振り上げ、大声で言った。


「しかしっ! 拙者は忍として足りないものを見つけ、それを手に入れる方法を知ったのでござる!」


たぶん、1つではないとは思う。


「それは手裏剣にござる」


……当然とばかりに言い切りやがった。


「絶対それだけではないと断言できるが、まあ一応理由を聞いてやろう」

「知らぬのか? 忍者と言えば手裏剣、手裏剣と言えば忍者。手裏剣を制せるものは、忍を制するのでござる」


少し前から気がついていたがこの忍、忍ぶ者であるのに隠す気がない。

まあ、エセ忍者だろうと客は客。最高の品で手向かえてやろう。


「欲しいのなら売ってやるぞ。他より少し値段は高いが、良い品ばかりだ」

「それは大丈夫だ。おつかいの……じゃなくて任務の報酬があるからな」


この忍者はお母さんにでも遣えているのだろうか。


「石投げで鍛えた拙者が、上手く使ってくれよう。はっはっはっは~」

「いや、自動追尾機能付きだから命中率なんてねぇよ」

「え?」


カルラは驚く忍者に、当然とばかりに言う。


「当たり前だろ。今時、投げられるだけの刃物なんて時代遅れなんだよ。もっと先を読んで、誰が投げても当たるようにして、城壁くらち破れる威力を持たせて、ついでに速度も上げておくのが、鍛冶屋の一般的な商業戦略だ」

「違いますよ」


そう言ったのは、お茶を持ってきたシュラだった。お盆を置くと、シュラは小さい頭を下げる。


「申し訳ありません。この方は結構頭おかしいので、気になさらないで下さい」


シュラは反抗期のようだ。

その言葉に、忍者は汗の滲んだ頭を上下に動かして、納得した様子で笑みを浮かべる。


「そうであろう、そうであろう。冗談でござろうに」

「いえ、冗談ではありませんけど」


もちろん、冗談ではない。何故か喜ばしい性能のはずなのに、忍者は不満そうに膝から崩れ落ちた。


「……それなら、拙者が一生懸命修行して身につけた、投石術はどうなるでござる?」

「俺の手裏剣があれば事足りるな」

「そんなっ……! 拙者の一年がぁ~!」

「どんだけ、手裏剣に全てを賭けていたんだよっ! 暇人か、お前は!」


もはや忍者というよりは、手裏剣術士のようなものである。

肩を落として、目に見えて落ち込む忍の背中に活気はない。忍者はマスクを取って、のそりと立ち上がる。

猿に似た顔を地面に向けて、ぽつりと呟く。


「もう帰るよ……でござる。僕……じゃなくて拙者は、自信を失った……でござる」


キャラがぶれる程ショックなことだったのだろう。ふらふらとした足取りで、家に帰っていった。


「なんか、不思議な方でしたね」


不思議というよりは、不自然でぎこちなく、とって付けたような設定を貫く意志が見られない。


「近頃の若者は、心が柔くていけねぇや。シュラはもっといい子に育てよ」

「カルラさん、私はもう成長しています」


少し寂しい風が心に吹いた。

エンジ・ガビシ(14)

特技……投石

備考……何となく、忍者を書いてみたかったのでやってみたら、何かおかしいのが出来ました。

その内、再挑戦しましょう

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