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カジヤノキヤクビト  作者: No.
工房日誌 2017.2~
38/411

2月3日曇り 『町娘1名』

「新しいの、入ったぞー!」


カルラはいつも以上に気合いの入った声でそう言うと、次の瞬間その勢いが沈んでいくのが目に見えて分かった。

髪が長く、スカートを履いていたため、その人物が女性だと分かったのだが、年端もいかない子供だったときの反応だ。

ここ、テストに出るから覚えておこう。


そのことを理解したらしい少女は、頬を膨らませて、青臭い演技で大人っぽく振る舞う。


「ふーん、アンタがド変態のカルラってやつね。聞いていたとおり、冴えない独身男の顔ね」


冴えないは余計だ。

しかし大抵、人より上に立とうとする人は、人より下に居るものだ。

カルラは腕を大きく振って否定を表す。


「あ~、それは隣町の話だよ。悪いがそっちに行ってくれないかな」

「嘘……。私、間違えたの? どうしましょう、困ったわ。ここに来るまでの運賃しか持ってないのに……」


それはどちらにせよ帰れないし、ここから行ける隣町は、この少女が来た場所しかない。

どうやら、おつむが緩い子らしい。


「もうっ! 女の子虐めたらいけませんよ!」

「シュラ、たぶん客だぞ。だが、金は無さそうだ」

「…………お客さんですか?」


最近シュラちゃん、お金のことしか考えてない。その原因がオレだから何も言えないけど。


「そういや、うちに何の用だったんだ?」

「え? やっぱり、ここがロリコン変態鍛冶屋だったの?」

「人違いだ、とっとと帰れ」

「いいえ、こんな幼い子供が居るのなら見過ごせないわ!」


腰に手を当て、自信を持った語気で言いきった。その瞬間、シュラの表情が抜け落ちた。


「……私、子供ではありません。ありません。アリマセン……ーーー」


最近、誰にも信じて貰えないから拗ねてしまったようだ。


「わ、私のせい……?」

「そうだな。こいつはこんなにも幼く、幼い、幼すぎる子供だが、中身は大人なんだ」

「カルラさん、断罪しますよ?」


俺がいつ罪を犯したっけ。最後がいつかは覚えていない。


「私は、こう見えても17歳なのです。だから、私のことを子供扱いしないでください」

「そうなの~、あ、お菓子あげるわ」

「ありがとうござーー……信じてください!」


乗せられる方も悪いが、必死に訴える弟子が、少し憐れに思ったカルラは遅い助け船を出した。


「本当らしいぞ。だから、子供扱いしてやるな」

「にわかに信じがたいわね」

「じゃなきゃ弟子にしねぇだろ?」


採用基準が魔法の有無だったことは、すでに頭には無い。しかし、その言葉で納得したらしい少女は微笑む。


「分かったわ。お兄様達が勘違いしていたのね」

「お兄様?」

「ええ、私はテウス・レ・マットよ。私が最初に暴いたんだから、急いで自慢してくるわっ! それじゃね!」


上機嫌で、少女は走り去っていった。能天気なその様子を見て、カルラは呟く。


「絞りカスか……」


テウス・レ・マット(15)

特技……算数

備考……優秀なレ・マット家で唯一の落第者。しかし、馬鹿な子ほど可愛い。

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