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カジヤノキヤクビト  作者: No.
工房日誌 2017.1~
35/411

1月31日雨 『作者1名』

「新しいの、入ったぞー」


徹夜で行った仕事の疲れが、未だに抜けていない様子で、低く掠れた声でカルラはそう言った。

目の前にいる客は傘を片手に、細く小さい体を目立たせるように、爪先立ちでカルラを見た。


「初めまして、No.と申します」


カルラは、にこやかに挨拶する人物を一瞥すると、下に向けた顔を正面に戻し、自分の首に手を当てる。


「そうか、今日はすごく眠いから、早く帰ってくれないか」

「もうちょっと構って下さいよ! 私、この日物凄く待っていたのですから!」


そんな叫び声に反応するように、家屋部分の扉が開く。

横開きのその扉には、白く、No.よりも小さな女の子が、仮眠でもしていたらしいボサボサの頭で現れた。

雨粒の弾ける音が、町内全体に反響する。


「カルラさん、どうされましたか?」

「いや、何にも。ただ頭のイカれたヤバい奴が来ただけだ」

「そこまでのことしてませんよねっ!?」


あまりに失礼なことを言うカルラの言葉に、No.は頭を眉間をつまんで嘆かわしいとばかりに首を振った。。


「……まあ確かに友人達には、変わっているとか、狂っているとか、本当に人間かと言われますが、至って普通の人類ですよ」

「本当に何をなさったのですか?」


訝しげな表情を浮かべて尋ねるシュラ。それを無視して、No.は話を変える。


「君達が楽しそうなのを確認したから、もういいですよ。私もわりと疲れたから」

「知らねぇよ。てか、何も買わねぇなら来んじゃねぇ、面倒だ」


傘を回して、No.は不思議そうに首を傾げる。


「誰が買わないと言いました?」

「何だ、買うのか?」

「買いませんよ、お金ありませんし」


二度手間である。

ケラケラと笑い声を上げる顔に、カルラは腕を組んで、無愛想な顔を変化させずに口を動かした。


「シュラ、鎚を持ってこい。こいつを叩き割ってやる」

「ダメですよ!? お客さんが死んでしまいます!」


すでに拳を振り上げているカルラを押さえ込むシュラ。

その光景を見て、No.はつまらなそうな笑みを浮かべ、手を振る代わりに握って開いてを繰り返してから、通りを歩いていく。


「今月も無事、手慣らしとして始めて、形態を掴めました」


ふわりと地面から足を離し、No.は空を歩くように雨雲に消えていく。

珍しいその光景に、鍛冶屋の二人は目を丸くしていた。


「また来月、機会があればお会いしましょうね。以上、No.でした」


独りで何か言葉を発しているようだが、届く前に雨音が遮る。

飲み込めない状況の変化に、シュラはポツリと呟いた。


「えと……、変わった方でしたね」

「そうだな、狂った奴だった」


本当に人間かも定かではないが、来月も来ることだけは確かだった。

No.(?)

趣味……読書と執筆

備考……小説の世界に行ってみたいという理由で、始まる前から予定されていた人物。物語に一切影響しない、どうでもいい存在。

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