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カジヤノキヤクビト  作者: No.
工房日誌 2017.1~
32/411

1月29日晴れ 『東の森にて』

「新しい情報入ったぞ」

「どうだって? ガセだったか?」


槍のエルフが、深刻な表情で首を横に振る。


「いいや、やっぱり部隊全員気絶だってよ。どうなってやがんだか……」

「化け物でも通りすぎたんじゃないか? とりあえず、賭けは俺の勝ちだ。早く出せよ」

「まったく最悪だぜ」


精鋭部隊がやられるはずが無いと思っていた槍エルフは、鞄から自前の缶詰を出して、杖のエルフに乱暴に投げ渡す。

そして、一休みしようと丁度いい石の側にたったとき、こちらに向かってくる人影に気がつく。


急ぎ足のその人物を、二人は道を塞ぐようにして止める。


「おい、お前。ここは今通れないんだ。明日まで待ってくれ」

「何故だ? 僕は急いでいるのだが」


革の手提げ鞄を持った男は、背筋をまっすぐ伸ばして二人を見据える。

腕に自信のあるエルフ達が通す気配はない。


「隊長の命令でな。文句なら、あの町の鍛冶屋にでも行ってくれ」

「つまり、貴様らはカルラのために、ここに居るのだな?」


名前を出すと、エルフは笑みを浮かべ、男の肩を掴むために手を伸ばした。

男は鞄をその場に落とした。


「なんだ、知り合いか。それなら少し話を聞かせて貰ーーー」


槍のエルフは声にならない悲鳴をあげて、その場で膝をついて動かなくなる。

男は、出された腕を逆に引いて、鍛えられたエルフの腹に拳を一撃食らわせたようだった。


「アイツのために僕が立ち止まる理由はない。患者が待っているんだ」

「このっ……!」


焦った杖のエルフが、咄嗟に魔法の雷撃を繰り出す。

しかし、男は難なくそれを回避し、胸に二発、腹に一発、顎に一発当てる。

うめき声を漏らしながら倒れるエルフに、単調な声で男は言った。


「全治3週間と言ったところか。それでも治らなければ、僕のところに来い」


鞄を拾い上げ、再び彼は歩み出す。

前方にはエルフが作った木製の壁が見える。


「僕は医者だからな」


男は頑強な壁を視界に捉え、近くにあった人間の胴体ほどの岩を、片手で軽々と持ち上げた。

超短編『暴力医者が居たわけ』


「エイルめ、僕に筋弛緩剤を打ったのか? 体が重い……。悪戯もほどほどにしてほしいものだ」

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