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カジヤノキヤクビト  作者: No.
工房日誌 2017.4~
103/411

4月9日晴れ 『霊媒師1名』

「新しいの、入ったぞー」

「ふぅ……。お兄さん、悪霊に取り憑かれていますよ?」


カルラが呼び掛けを始めると同時に、着物姿の青年がこちらを見てそう言った。着物姿で、短く切った赤い髪を揺らしている。

錫杖はなく、魔道具らしきものもないのだが、それでも魔力の流れを感じた。


「また、宗教か。いい加減にしてくれよ、まったく。肉屋とか、騙しやすいだろ、何でうちに来るんだよ」

「僕は宗教ではありません、見えたものを言っただけです。お兄さんの肩に悪霊が乗っています」

「見えなけりゃ、神も幽霊も約束もおんなじだろうがっ」


青年が言っていることが正しいのか、それを知る術はない。有ることより、無いものを証明する方が難しいのは必然だ。


「どうなさいましたか?」

「カルラ、怖い顔してる」


そこに、シュラとニコが買い物から帰ってくる。シュラは客の姿を見つけると、買い物袋を置いてきて、接客用の笑顔に切り替わる。

ニコは飴を舐め始めた。


「何かご用ですか?」

「ふぅ……。君にも、悪霊が憑いているように見えますね。珍しいこともあるものだ」

「害悪なら、よく見かけるけどな。シュラも、見えるのか? ……シュラ?」


返事がない、ただの屍のようだ。ではなく、焦点の合わない目でどこかを見つめている。

カルラはシュラの肩を揺すろうと手を伸ばす。


「シュラ、どうした?」

「キャアアアアッ!」

「うわっ、どうした!?」


半狂乱で荒れ狂う幼女を取り押さえると、周囲の視線が痛い。痴漢ではないのだ。


「オバケ……。オバケなんて……死んでしまえばいいのです……」

「落ち着け! もう死んでいるから!」


普段、真面目で頼れる弟子には、幼女らしい面が見られるが、これもその一つなのだろう。

しかし、頼みの綱も無くなったか。


「カルラ、見えないの?」


ニコがそう言って、カルラの肩辺りを見つめている。


「ふぅ……。お嬢さんには見えるようですね」

「え、そうなの? 確かに、野性動物は勘がいいけど」


動物扱いで奇異の視線を向けていると、ニコが袖を引っ張り、唇を尖らせる。


「カルラ、それならカルラも見えてないとダメ」

「誰が野性動物だ? 俺は人間だ」

「ニコも動物じゃないもん。肉より砂糖が食べたい」


つまり虫になりたいということだろうか。劣化しているような気がする。

それはさておき、ニコが見えるのなら聞いておきたい。


「とりあえず祓えるんなら、祓ってくれよ。仕事に影響しそうだ」

「僕は祓えませんね、強すぎます。良い教会をお教えします」


青年は手記を手渡すが、少し遠い場所にある教会であるため、すぐには行けそうもなかった。


「んだよ、使えねぇな」

「使えませんねっ!」

「カルラ、シュラ、落ち着いて」


このままでは、色々と弊害がありそうだから、一応尋ねてみる。


「俺らに憑いている悪霊って、どんな奴だ?」

「ふぅ……、そうですね。お兄さんに憑いているのは、鍛冶屋の霊ですね。鍛冶仕事をしなければ禁断症状が現れるでしょう」

「なにそのヤバい薬みたいなやつ。悪霊ってそんなんだっけ?」


カルラの言葉を無視して、青年はシュラの方を向く。


「君にはロリコンの霊が憑いていますね」

「それは危険だな」

「危険って何でですか! 私は17歳です!」


その怒る仕草も、幼さの残る可愛らしいものであるから、きっと霊媒体質になっているのだろう。

そして、取り乱すシュラに青年が捕捉をする。


「あ、でも強い愛情を感じますよ」

「それは逆に不味いんじゃねぇか?」

リンデル・コーゲンス(21)

特技……霊視

備考……幼少期から霊が見える体質で、どんな霊なのかも分かるように訓練している。自分では祓うことは出来ないが、祓う気はないので練習していない。

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