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カジヤノキヤクビト  作者: No.
工房日誌 2017.4~
100/411

4月6日曇り 『時計屋1名』

「新しいの、入ったぞー」


そう言う前から、すでに人の姿があり、見覚えがあるその人物は先日訪れた時計屋の姿だった。

金色の髪を揺らして、真顔でそこに立っている。


「こんにちは。ニコは居るか?」


最近、度々訪れては、うちの従業員を連れ出そうとするのだ。

給料を払っているわけではないから問題はないのだが、あいにく今日に限っては帰ってもらうしかない。


「いないな。今日はシュラと高級砂糖菓子を買いに行ってる。隣町までな」

「はぁ、女という生き物はどうしてそこまで食に貪欲なのだ……?」


クロームは溜め息混じりにそう言う。

カルラも肩を竦めて、苦笑いを浮かべた。


「ほとんど同意だけど、お前も女だろ? 砂糖食べてキャッキャッするくらいの可愛げがあってもいいと思うぞ」

「砂糖だけ食べるなんて、私は蟻か? お前の女性像が狂っているな」


眉をひそめてそう言ってから、小さな声でもどかしく、恥ずかしそうにクロームは視線を伏せた。


「しかし何だ、私だって甘いものは好きなんだ」


それを聞いてなんとなく、この少女がどういう人間なのか分かってきた。


「……誘って欲しかったのか?」


尋ねると、真面目な目付きで睨まれてしまう。


「無論だ。私だってニコとぱふぇーや、きゃんでーなんて物を食べてみたかった。あの小さな女の子とも親交を深めたいと思って、手土産も用意したのだ」


カルラは饅頭の包みを押し付けられて、受け取らざるを得ない。おそるおそる核心を突いてみる。


「お前、案外寂しがり屋か?」

「案外ではない。私だって女の子なんだと言っただろ」


さらに言えば正直者だ。よく騎士団に入れたものだと思わせるくらいだが、思い返せば初めてあったときもこんなのだった。

小さく笑みを作り、カルラは店の方に歩く。


「仕方ない。代わりと言っちゃなんだが、俺が作った焼き菓子、食っていくか?」

「お前とキャッキャッウフフするのか?」

「その表現はどうかと思うが、まあそうだな。嫌か?」

「嫌とは言っていない」


ツンデレか。まともな案外まともなキャラクターだな。


「飲み物はミルクでお願いする」

「お前、意外と可愛いな」

「……うるさい」


頬を染めるクロームの姿は、年頃の女の子と変わらない。

クローム・スピアコールド(18)

好物……ミルク

備考……キャラクターが勝手に歩きだして行くことはよくあるけれども、まともにツンデレになったのは初めて。

嬉しい!

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