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カジヤノキヤクビト  作者: No.
序章とか、≪オマケ≫とか
1/411

○月△日晴れ『弟子入り志願』

1000文字ずつの投稿なら続けられるかな、という事で、メインの他に日記感覚で書いていきます。

「新しいの、入ったぞー」


 その大きな体で店の前に立ちふさがり、いつものように深藍色の作業服姿でカルラは言った。

 寂れた辺境の町とはいえ、何もせずに過ごすのは店主として如何なものかと思うところがあり、日に何度かこうして客寄せをしている。


 ―――……よし、居ないな。

 客が来ないと分かるや否や、傾いた店の看板にも気づかずに、せこせこと建物の奥へと隠れるように入り始める。


 もはや趣味となった鍛冶仕事に精を出すためだ。

 誰が使うかも分からない馬用の鎧を作るために急がせた足は、すぐに止まることになる。


「すみません」


 不意の呼び掛けに驚いて足が絡まり、転けそうになりながら身体を立て直す。

 そして、客商売とは思えない、不機嫌そうな顔で振り返る。


「あ、なんか申し訳ありません」


 まだ何も言ってないのだが。

 声の主を見ると、町で見かけないような、だぼっとした白い服に身を包んだ、小さな子供が立っていた。


「こ、こんにちは。ここは武器屋さんですか?」


 深々と被った桜色のハンチング帽を押さえながら、震える声でそう尋ねる。

 おっと、そんなにコワイ顔をしていたか。そう思って、精一杯の笑みを作ってカルラは接客を始めた。


「いや、うちは鍛冶屋だ。武器も作るし、盾や防具、革製品、硝子製品、焼き菓子を作っている普通の鍛冶屋だ」

「ふ、普通のですか。何かものすごく怒らせてしまったようで、申し訳ありません。あの、おじさんは店主さんですか? お願いがあるのですが……」


 笑顔を怒顔と解釈され、諦めたカルラは再びムッとしたような普段の愛想のない顔に戻す。

どちらにせよ、客にはならないから問題ない。


「いいか、ガキ。子供に売るような安全なものはここには無い、帰んな。あと、俺はピチピチの21才だから、おじさんって歳じゃねぇよ」


 手の甲をヒラヒラと振って、帰宅を促す。行商人の子供が戯れにでも来たのだろう。そう思っての行動だった。

 しかし、帰る兆しも見せず、子供は小さな身体が地面と水平になる程曲げて言う。


「ご免なさい。えと、新鮮なお兄さん」

「誰が海産物だ。カルラでいい」

「カルラさん、私に鍛冶を教えて貰えませんか!」

「断るっ!!」


 言ってから、その願いの意味を理解するカルラ。独学で初めてから十数年、弟子入りされるという体験は生まれて初めてだから、多少嬉しくもある。

 まあ、断るけど。子供は昔、一睨みで泡吹かせて気絶させて以来苦手だ。

 それでもなお、その子供は食い下がって、頭をさらに深く下げて懇願する。


「お願いします! 私は絶対に一流の道具職人になりたいのです。私を弟子にしてください!」

「だから、断るって」

「絶対に邪魔はしません!」

「絶対に断る」

「炊事洗濯掃除裁縫、何でもやりますから!」

「こ、断る……」


 家事が全般苦手なカルラは迷いながらも、なんとか願いを回避する。そして、店の奥へと足を向けた。


「悪いが、弟子は取らん」


はっきりと言うと、付け足すように特技を口にする。


「魔法も使えるのですが……」

「採用っ!」

「…………え?」


 魔法も苦手なカルラは、今まで魔法を使った道具を作ることが出来なかった。自分の作品のためなら、矜持も捨てる職人である。

 急に上機嫌になったカルラは、その子供の肩を掴み、にかりと気持ちの悪い満面の笑みを向けて尋ねた。


「採用だ。お前、名前は何てんだ?」


 カルラの表情の変化から、状況を飲み込んだ彼女は帽子を取り、空色の瞳はきらきらと輝かせて答える。


「はい! シュラ・トンプソンと申します」


 後ろで三つ編みに束ねた白い髪を揺らして、彼女は答える。


「俺はカルラ・ピースメーカー。シュラ、これからよろしく」

「はい」


 差しのべられた手を握るシュラ。そんな二人の物語が幕を開ける。



「あ、あと私、子供ではありませんよ?」

「ん?」

「今年で17になります」

「……じゅうなな? としごろ? んん?」


 そんな物語。

カルラ・ピースメーカー(21)

好きな食べ物……レバニラ炒め

備考……鉄は最高の素材だと信じている


シュラ・トンプソン(17)

好きな食べ物……カレーライス甘口

備考……成長期が都市伝説だと思っていた

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