1/1
ハジマリ
彼女は都会の雪のようだった。
彼女は深夜の雨のようだった。
僕の中にある、彼女に関する記憶と感情総てを以ってしても、これ以外の言葉を紡ぐことはできなかった。これこそが、僕にとっての彼女の、唯一の真実だった。
僕が彼女に対してあまり関心が無かった訳じゃない。むしろその逆。今だからこそ言えることだが、僕は彼女のことが、……好きだった。
ここに彼女と僕の過ごした時間を遺しておこうと思う。彼女のことを忘れないように、否、忘れられるように、かも知れない。
これは、彼女の『唄』と、僕の『光』の物語。