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りんなとゆうちゃん  作者: 如月海月
Chapter1
2/49

エピソード1 続

 その日は父さんも母さんも仕事でまだ帰ってきてなくて、俺は一人でテレビを見ていた。凜奈は決まって俺の部屋で駄弁りたがるから、仕方なく切り上げて俺も自分の部屋へ行くのだ。彼女を一人で俺の部屋へ置いておくと、何をされるか分かったもんじゃないから。

 凜奈は部屋へ入るなりまた俺のベッドへとダイブした。

優太朗ゆうたろう、ひま」

「知らねえよ」

 彼氏にでも構ってもらえ、と言う言葉をぐっと飲み込んで俺は自分の机に向かった。凜奈が付き合い始めてから数か月。俺は今のような軽口すらいえなかった。

「ねえさー、あんた最近暴言酷くない? 荒れてるの?」

「バカいえ。俺が品行方正なことぐらい知ってるだろ」

 ははっと笑われる。

「優柔不断な引っ込み事案の間違いじゃなくて?」

 俺の印象は、幼い頃から変わっていないらしい。ふん、と鼻を鳴らしてみせる。

「で、今日は何か用か」

 すると、凜奈やや顔を曇らせた。

「あ、うん……えっとね。最近、りょう君がさ……」

「りょう君って誰だよ」

「2組の鈴谷遼君だよ。もー何回言ったら覚えるわけ」

 もちろん覚えてる。意味のないことだ。でも、やらずにはいられなかった。凜奈の彼氏だ。

「あんたの家に入り浸るの辞めろだって。意味分かんなくない? 流石にそこまで縛るのはどうかと思うんだ」

 どうやら、付き合って数か月でようやく気が付いたらしい。奴と凜奈がどんな会話をするのかは知らないが、どうしてか気持ちが浮き上がった。しかし、俺の口は脳及びハートとは結びついていないらしい。こう口走っていた。

「当たり前だろ。そういうもんだ」

 すると、凜奈は口をへの字に曲げた。

「なに、あんたもやっぱり迷惑だったわけ。だったらちゃんとそう言ってくれればよかったのに」

 言っただろ! という心の声はさて置いて、俺は大変言葉に迷った。どの言葉が自分の声で、どれが言うべきセリフなのか。心の中で無数の言葉が浮かんでは消え、消えては現れる。

 迷ってるうちに、凜奈が先に口を開いた。

「前にあんた迷惑じゃないって言ったよね?」

 しっかり覚えてやがった。しかも都合の良い部分だけ。

「そうだけど……」

「私が誰と遊ぼうが、遼君が制限するのはおかしいと思わない!?」

 そうだろうか、

「お、おかしいな。うん」

「でしょ!? だからね、優太朗が迷惑だったら辞めるよ。どうなの」

 まさかの再選択である。この前のやり取りを思い出す。あの時、俺はもごもごとごまかしてしまった。迷惑なのだろうか? いや、実際には全然迷惑なんかじゃない。でも厭わしいと思ったことはなかったか? いやそもそも、俺は何を厭わしいと思ったのか。

 ごちゃごちゃと頭の中に浮かんだ考えは全て消え、

「うん、迷惑じゃないよ……」

「でしょ!」

 結局俺は幼い頃の優柔不断な優ちゃんに返るのであった。くそ!


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