帰る場所
まだ残っていた謎解きを終わらせました。
朝、目が覚めると頭痛がした。
「ああ、寝不足・・・」
昨日は興奮してなかなか寝付けなかった。
そういえばオジサンに話した後もこんな感じだった気がする。
それに昨日は昼寝もしたし。
時間は7時30分。学校にはすぐつけるので、まだまだ余裕がある。
ここで二度寝をすると遅刻するので、渋々布団からでる。
1階に降りて、ポップコーンが散らばったリビングを抜け、洗面所へ向かう。
今日はパジャマが濡れていない。私は面倒くさがりなので、お風呂は夜に入るだけだ。
適当に歯磨きをしてから、時間もあるので床に転がっているポップコーンを片付ける。
「誰よ、こんなことしたの・・・」
もちろん私がしたに決まっている。
友達は昨日出来たばかりだし、オジサンはポップコーンを食べない。
ポップコーンをすべて片付けた後、新しい袋のポップコーンを食べる。
よく床にこぼしてしまうので、こぼさないように注意する。
食べ終わってから手を洗う。
それから、こんなこともあろうかとストックしておいた予備の制服に身を包む。
「よしっ!」
今日の学校はかなり荒れているはずだ。
どのルートを行ってもしんどい。眠たいが、気合いを入れなければ!
オジサンの使っているトレーニングルームに入り、サンドバックを2、3度叩いてから家を出る。
学校につくと、学園じゅうがすごいことになっていた。
それはそうだろう、新学年が始まったばかりで、理事長が殺人未遂だ。
私が撃退したということは隠しておいて正解だった。
昨日見た未来では、隠していておかずにいると一気に有名人になって面倒くさかった。
私は面倒くさいのは嫌いだ。
「おい、時村。すごいことになってんな」
久我ごときがでしゃばってくんな。私がほしいのは晴美ちゃんだけだ。
「みくちゃん、おはよう!」
「晴美ちゃ~ん!!」
相変わらず可愛い。眼鏡の奥の目の下にくまが出来てしまっているが、それでも可愛い。なお可愛い。
晴美ちゃんを眺めていた私に、少し真剣な顔つきになった久我が話しかけてくる。
「時村!俺、昨日ずっと考えていたんだけど、俺たちの行動の意味ってなんだったんだ?」
理事長を倒した時の方法はまだ言ってなかったので、説明してやらねばなるまい。
「ちょっとこっち来て」
晴美ちゃんと久我を人気の無い階段の方へ連れていく。
「まず言っておくと、理事長は私たちが倒したって話さないで、気づかせないで。
それが分かられると面倒くさいことになるから」
「うん」
「ああ、分かった!」
「・・・よろしい!」
私は少し偉そうにコッホンと咳をしてから話し出す。
「昨日私たちがした行動は、全て理事長の特殊能力への対策なの」
「特殊能力?」
「そう!抗体は無駄にハイスペックだったりして、今回の場合、鼻が良かったの。
体を洗ったのは臭いを消すためで、服に臭いがついているから脱いだの」
「なんで俺は体も洗わず時村の服を着せられたんだ?」
「そんなの決まってるでしょ!?囮よ囮」
「ひ、ひでぇ・・・」
「なら、どうして遮光カーテンを使ったのぉ?」
「嗅覚が強いんだったら、視覚を頼らずとも嗅覚を頼った方が良いでしょ?
だから、遮光カーテンで姿を隠すだけで大丈夫だったの。
といっても予知の通りにやっただけなんだけど・・・」
「それでもすごいよ、晴美ちゃん!私だったら逃げちゃってたよぉ」
「ありがとう、晴美ちゃん!」
「ずっと気になってたんだけど、理事長って最初から抗体ってやつだったのか?それとも後からか?」
「後よ、理事長の方が年いってるんだから。
世界はすこしづつ世界を歪めて、動機を作って私を殺すように仕向けるの」
「晴美ちゃんが途中で寝ちゃう前には理事長に殺されないはずだったんだよねぇ?」
「そうなのよ!その動機のほうが全然思い付かないの!!」
私たちが頭にハテナマークを浮かべていると、久我が恐る恐るといった感じで手を挙げる。
「あの、ちょっといいか?」
「なに、久我?今忙しいんだけど」
「その理事長の動機だけど、それ心当たりある」
「えっ!それを早く言いなさいよ!」
「お前には予知能力があるんじゃなかったか?なら俺がこう言うのも分かったんじゃないのか?」
「予知能力は頭を使うのよ。
脳の中に、1年より遥かに多い情報が一気に入ってくるんだからしんどいの!
そんな力だから、死が関わってこなければそんなに使わないわよ。
それに意識し過ぎるとルートからそれやすいし」
「ふーん、意外と予知もしんどそうだな」
「そうよ!もっと私を褒め称えなさい!」
私は胸の前で腕を組む。
「久我くん、それで理事長の動機って何だったの?」
「それがな、入学式の時、時村が晴美ちゃんにベタベタしていくほどに、理事長の顔が険しくなっていってたんだよ」
そういえば理事長がずっと私を睨めつけていた気がしないこともない。
理事長は、晴美ちゃんの親でもなければ親戚でもないので、
それがどう作用したかは分からないが、動機はそれで間違い無いだろう。
「そろそろ授業の時間だよ」
「もうそんな時間か」
私は少しの間悩んだ後、教室へと戻って行こうとする二人を呼び止める。
「これからも私といるとこんなことが幾度となくあると思うけど、それでも一緒にいてくれる?」
思いきって聴いてみる。
「当たり前だろ?」
「そうだよ、みくちゃん!」
そうだよね、二人とも私なんかにはもったいないほど良い人だ。
能力のことを二人に話しておいて良かった。この二人が私の帰る場所だ。
どんなことがあろうとこの場所は守ろう、いや守って見せる!!
「みくちゃん早くぅ!」
「時村?」
「ちょっと待ってよ!」
まだ登校2日目だが、すでに学園生活は薔薇色の予感だ!
これで終了です。