力を合わせて抗体潰し 2
「ふぁーーっ、終わったぁ・・・」
「ホントに理事長が来たときはマジでビビったが、結構どうにかなるもんだな!!」
「いやぁ、二人ともありがとう。二人がいなかったらダメだったよ」
床にぐったりとして動かなくなった理事長を取り外したカーテンで縛る。
最初は手首だけのつもりだったが、そのカーテンで一緒に足首も縛る。
そうすると理事長がエビぞり状態になる。エロいし面白い。
私がくすくす笑っていると、久我が少し真剣な顔になって話しかけてきた。
「時村、そろそろ話してくれないか?」
「えっ、何を?」
「これのことだ。どうして理事長がこんなことをしていて、
そして、どうしてお前がそれを知っていたかだ」
そういえば後で説明するとか言っておいたな。
晴美ちゃんの方を見ると、
びしょびしょの体に眼鏡をかけたままの姿でこっちを見つめていた。
「はぁ、それじゃあ話してあげる」
その前に皆さんにはどうやって理事長を撃退したかを話しておこう。
時は三年生トイレに着いたときにさかのぼる。
「はぁ!?なんでトイレなんか来てんだよ。急ぎの用ってこれのことかよ」
「どうして久我くんも誘ったの?意味ないんじゃない?」
「まぁ、話せば長くなるけど・・・取り敢えず私に協力してっ!!後でポップコーンあげるから!!」
私は女子トイレの中に晴美ちゃんを入れ込むと、
「久我、こっち見んじゃないわよ」
とくぎを刺す。
最初は、はぁ?という感じだったが、私が服を脱ぎ始めたことで、目をそらす。
「お、おまっ!なんでいきなり服脱いでんだよ!!」
呆然としている晴美ちゃんに、
「晴美ちゃんも服脱いで。体洗うから」
と言っておく。
「えっ、えっ!?」
と驚く晴美ちゃんだったが、なんとか強引に服を脱がす。
「ちょ、ちょっとみくちゃん?」
「いいから、いいから」
やっぱり晴美ちゃんの胸はデカい。
未来でも教えてくれないが、きっとDぐらいあるだろう。
下着だけを残し、制服を脱がす。
そして、私も下着姿になってから、トイレにある掃除用のホースを取り出す。
「えっ、何してるの!?」
「これで体を洗って!」
蛇口をっひねって、ホースをシャワー代わりにして体を洗う。
晴美ちゃんは、嫌がっていてもしっかり体を洗ってくれている。
私は、自分の脱いだ制服で皮膚をこするようにして体をふくと、それを久我に投げ渡す。
「なっ!?」
久我は顔を真っ赤にして受け取る。
「それ着て」
それだけ言うと、私は再びシャワーを浴びる。
私が浴び終わったのに、まだ私の制服を着ていない久我に無理やり制服を着せる。
その前に、私のシャツを久我の体にこすり付けておく。
「ハイ二人とも、すぐにこっちに来て」
「えっ、どうなってるの!?久我君がみくちゃんの制服を着て、
私とみくちゃんが体を洗って下着のままで・・・」
「まぁまぁ、後で説明するから」
すぐそばにあった教室に入り、遮光カーテンを取り外していく。
「なにをしてるの?」
「ちょっと晴美ちゃん?隣の教室からも遮光カーテン取ってきて」
「俺もやるよ」
「いや、あんたは何にも触らないで」
晴美ちゃんは不思議そうにしながらもカーテンをとりに行く。
「どういうことなんだ、時村?俺たちはなんでこんなことをしている?」
これ以上隠し通すことは難しい。
時間がないので必要最低限しか話せないが、
話しておかなければ久我が理事長の包丁に掠る未来となってしまうので、
晴美ちゃんが遮光カーテンをとって戻ってきてから話をする。
「私は理事長に命を狙われているの」
「「えっ!?」」
単刀直入にに言っておく。
「私は理事長に狙われていて、それを防ぐために協力してほしいの」
「ちょっと待て!!どういうことだ!?」
「詳しい話は後でするから。今は時間がないの!
今から7分後くらいに理事長が私を狙ってやってくる。
久我はこれから1年3組の教室に向かってから、2年4組の教室に向かって!」
有無を言わせぬ感じで言っておいたので久我も押し黙る。
「二人ともついてきて」
と、その前に、トイレにおいてきた靴下を久我にはかせる。
ここまで来るのに使った階段とは違う、少し遠い方の階段を使い、
1階だけ上り2年生の教室が並ぶ階を歩く。
そして2-4の教室の中に入る。
「ここでどうするの?みくちゃん」
「持ってきた遮光カーテンに入って」
「えっ、これ?」
「そう、それ」
「で、俺は?カーテンは2つしかないけど」
「あんたはこのままこの階を横切って1-3の教室に入ってから、
ちょくちょく私の制服を壁に擦りつけながらこの教室に戻ってきて」
久我が教室を出て行ってから、晴美ちゃんと話をしておく。
「寒いからそのカーテンを羽織っておいて」
「どうして遮光カーテンなの?」
「見つからないようにだよ。
それと、理事長が久我に弾き飛ばされてしりもち着いたら、
このカーテンから飛び出して理事長の包丁を奪いに行って。絶対にケガしないから」
「・・・どうしてそんなことが分かるの?」
「ふっふーん。私には分かるんだ。
晴美ちゃん、私には晴美ちゃんが必要なの!
晴美ちゃんがやってくれなかったら私は死んでしまう。
だからお願い!!私を助けて!!」
「晴美ちゃん・・・」
さきほどまでオドオドしていた晴美ちゃんの目には確かな光が宿っていた。
そこに久我が戻ってくる。
「戻って来たけどどうするんだ?」
「そこのロッカーに入って!
しばらくすると包丁が突きささってくるから、
それから2秒待ってからロッカーのドアを勢いよく開けて!」
「えっ、ホントにどういうことだよ!?」
「しっ、静かに!!ドアを開けてから、
そこにしりもち着いて晴美ちゃんと組み合ってる理事長に向かって突進していって」
「だからどういう・・・」
「とりあえず入りなさい!!」
久我をロッカーに押し込む。
晴美ちゃんと私が遮光カーテンにくるまってから約1分後、
かつかつ、というヒールの音が廊下の方から聞こえてきた。
その音が2-4の教室の前で止まると、扉が、がらがら、と音を立てて開かれる。
理事長が教室内を見回す。
そしてそのまま私と晴美ちゃんを見つけられず、ロッカーへまっすぐ向かう。
理事長はロッカーに包丁を突き立てると、
2秒後に開かれたロッカーの扉によってしりもちをつく。
晴美ちゃんが、意外と機敏な動きで理事長に突進する。
それに続いて、女装した久我も突進していく。
その拍子に理事長が包丁を落とす。
全部計画どうり!!
私は包丁をとろうとする理事長の前に立ちはだかる。
「ふん!そんなことしたって無駄よぉ!!あんたが負けることは既に決まっているーーっ!」
と、まぁこんな感じだった。
現在に戻る。
「どうして理事長はお前を狙ってたんだよ!」
そんなことは簡単だ。
「私が予知能力者だからよ」
「はぁ!?」
「えっ、どういうこと?」
「でも・・・あぁ、そういうことか」
久我には心当たりがあるらしく、簡単に理解する。
混乱している晴美ちゃんにはきちんと説明しなければならない。
「かくがくしかじかなの」
生まれた時から1年ぐらい先の未来までが分かること。
自分の行動によって変わる未来もいくつか分かること。
「晴美ちゃんと仲良くなったのは晴美ちゃんが未来でもとってもいい子だったから。
1度でも嫌なことが未来にあると、どうしても仲良くできないんだ・・・。
だから晴美ちゃんがいてくれて、とっても良かったと思ってる!!」
「みくちゃん・・・ぐすっ」
こう言っちゃ悪いけど、晴美ちゃんちょろすぎでしょ。
「でも、だからってどうしてみくちゃんが狙われていたの?」
「それは私が世界にとってエラーだから。もう久我は分かってるよね」
「ああ・・・時村、なんかごめんな」
「いいって。それに全部私のせいだし」
これまでずっと一緒にいれば、それだけいろんなことがあった。
私に危険がたくさんあったことは、よく知っている。
「みくちゃん・・・」
「晴美ちゃん、こんな私だけどずっと仲良くしてくれる?」
「うん!!」
相変わらず晴美ちゃんは可愛い!!
それより、
「早く服着よっか・・・」
「あっ・・・」
全員で顔を真っ赤にする。
「と、時村!!これ返す!!」
「汚らわしい!!自分で洗ってから返しなさい!!」
「お前どうやって帰るんだよ!!」
「遮光カーテン着て帰るもん!!」
「本当に仲良いねぇ」
「仲良くない!!」
パトカーを呼んで、理事長を引き取ってもらう。
警官は終始疑っていたが、
ロッカーに包丁の刺さった傷があったことから一応引き取ってくれた。
私の服は、久我に買ってきてもらった。
その後、私たちも警察に連れて行かれ、取り調べを受けた。
取り調べが終わると、すでに10時だった。
「それじゃあ時村、また明日!」
「それじゃあね、みくちゃん」
「うんそれじゃ、さよなら!」
それぞれの親に引き取られて二人が帰る。
一人だけ警察署に残された私は、鞄に入れておいた本を取り出す。
「ふぁぅあ、散々寝たのにまだ眠いや・・・」
取り調べが終わってから約1時間後、私の叔父がやってくる。
「すまない、すまない。仕事が押しちまってな、ガハハハ!」
その大男は外からではなく内からやってきた。
「オジサン、遅いですよ」
「お前の連れてきた理事長関連だったんだ。仕方がないだろう」
このオジサンとはかれこれ8年の付き合いになる。
両親が抗体関連で死んでから、ずっとこのオジサンの世話になっている。
「さぁ、帰るか!」
オジサンは死にそうにない。
実際に死ぬ未来が、久我とも比べて全然少ない。
オジサンの車に揺られて家に着く。
その時に公園の方をちらっと見ると、まだ不良三人組がいた。
ホントに申し訳ないです。
ベンチでそのまま眠ってしまっている三人組のそばに、
コンビニに売ってあったポップコーンを一袋ずつ置いておく。
それにしても、今日はいろんなことがあった。
晴美ちゃんと出会って、久我に感謝を述べて、理事長に殺されかけ。
「はぁ、ほんとに楽しかった!!」
「ん?何んか言ったか?」
「ううん、なんでも!」
私は、予知能力を持って生まれてよかったと思っている。
両親は死んでしまったが、毎日充実してるし、晴美ちゃんや久我とも知り合えた。
その夜は、興奮してしばらくの間寝つけなかった。
とりあえず終わりました。
まだ書こうとは思っているのでよろしくお願いします。