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プロローグ
私は、走っていた。太陽の光は既になく、月光さえも、辺りに生い茂る木々によって隠されていた。
私は、走り続ける。聞こえるのは、自分の呼吸音と今にも弾けてしまいそうな心臓の音。それと、草木を踏みしめながら走る、足音が二つ。
私は、逃げていた。後ろの足音は、ペースを乱すことなく、「ドスン、ドスン」と重い音を響かせ、前を行く軽い足音に、着実に近づいていく。
私は、振り向けない。振り向くと、自分が消えてしまいそうで。振り向かずとも、自分が消されることは分かっていた。
私は、転んだ。暗い根に、足をとられて。
私は、振り向く。転んだのは、諦める口実だったのかもしれない。
私は、見た。何かを。
何かは、笑った。私は、消された。
ここは、詩っぽいですが、次からなんか書きます。