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戦艦越後太平洋戦記  作者: 賀来麻奥
絶え無き戦闘
99/115

激闘、マリアナ沖海戦

 〇三一五

 この一連の戦闘で雷撃を行った前衛と本隊は時期装填を急がねばならず弾幕を貼りつつ一時的に退避した。そのため後衛が前に出るという結果になった。

 後衛は左方に敵を発見した。「距離六〇〇〇メートル左砲戦用意」六隻の艦は早速雷撃を行った。巡洋艦クリーブランドと駆逐艦ストックトンに一発ずつ命中した。この時春雨だけ砲撃戦を開始した。そのためシルエットが浮かび上がりそこに米巡洋艦の砲撃が飛び交ってきた。集中砲火を浴びた春雨は火災を起こし敵のいない海域に逃亡を図ったが、その方角にはスコールに隠れていた米駆逐艦二隻がいた。


 春雨はスコールから出てきた駆逐艦パーシヴァル・ソーフリーと交戦するが損傷している上に数の優位には勝てず沈没した。せめて一矢を報いようと砲撃を盛んに行いソーフリーの煙突をなぎ倒したのが唯一の功績だ。

 春雨を追って航行した五月雨は二隻の駆逐艦がいきなり視界内に現れたため、思わず反転した。この反転で距離がかなり縮まった。対空用の機銃までも使用して両艦は撃ち合い五月雨は大破したがソーフリーを沈没に追いやりパーシヴァルにも命中弾を一発与えた。


 最上は魚雷を一発受けて動きが鈍くなっていたモントピアと交戦し右舷の高角砲二門が破壊されるも敵艦を撃沈した。

 ここに前衛と本隊が魚雷装填を終え再び雷撃を開始した。たちまち二隻の駆逐艦が沈没し、航行不能になっていた巡洋艦サンタフェが海に引きずりこまれるかのように転覆して沈んでいった。 

 さらに巡洋艦はアメリカ側が二隻しか残っていないのにも関わらず日本側は沈没艦が出ておらず戦闘海域にいる巡洋艦は四隻であった。クリーブランドは青葉の反撃と澤風の肉薄攻撃により沈没した。 しかしクリーブランドが最後に放った砲撃が澤風に三発命中した。無理もなかった何故なら澤風は距離四〇〇〇メートルまで迫っていたのだ。

 最後の巡洋艦一隻になったコロンビアは対抗したが砲の数が圧倒的に少なかった。舵と左舷をやられ火災を起こしつつ傾斜したところに三発の二〇,三センチ砲が命中し沈没した。米水雷戦隊は完全に長距離攻撃の手段を失った。日本艦隊は米水雷戦隊から離れつつ攻撃した。さらに重巡洋艦のアウトレンジ射撃に米駆逐艦は翻弄された。米駆逐艦はなすすべがなかった。八インチ砲と五インチ砲の撃ち合いではまるで話しにならなかったのである。

  

 〇三二八

 第二次水雷戦も鮮やかに日本水雷戦隊が勝利を飾った。だが戦艦フロリダがここぞとばかりに砲撃を行ってきた。青葉の第二主砲が裂けるように粉砕された。火薬庫もやられ数分後に大爆発を起こした。せめての救いは総員退艦命令が下されたことであった。艦長も部下達の必死の声かけにより、日本海軍の艦長としては珍しく降りてきた。大抵の場合日本海軍の艦長は艦と命を共にする。


 だが水雷戦隊の戦いにより距離が接近しており同士討ちを極端に恐れたフロリダはほとんど発砲しなかったため接近を許してしまった。魚雷が残っている巡洋艦と駆逐艦は一斉に雷撃を行った。白い航跡がフロリダにぐんぐん伸びていった。

 最後に涼風に被弾させ沈没に追いやったが距離一万での雷撃を行われた。このうちの六本がフロリダの左舷中央部に命中した。さすがの大型戦艦でもこれは答える。フロリダは完全に動きが封じられた。

 ここで飛騨が怒涛の反撃戦に移る。身動きの取れないフロリダに主砲を撃ち続けた。合計で一〇発を超える命中弾を受けたフロリダはとうとう海中に没した。

 これにより戦局は一変した。


 

 尾張は戦艦イリイノからの命中弾を六発貰う代わりに五発の命中弾を返した。尾張の六発の撃ち三発はバイタルパートにあたっていたため自慢の五〇〇ミリという途方もない装甲で防いだ。一発は第二主砲の天蓋に命中したが特に被害はなかった。二発は中部甲板に命中し火災を起こしたが大事には至らなかった。

 一方の戦艦イリイノはアイオワ級戦艦の弱点である自身の砲にも耐えられるように作っていないバイタルパートの弱さがここで影響した。五〇口径一六インチ砲を搭載しているアイオワ級であるが装甲は対四五口径一六インチ砲だった。そのため三発目の命中で尾張の砲弾はアイオワ級のバイタルパートの装甲を撃ち破ったのだ。缶室に海水が流れ込んで速度を落とした。四発以降の命中でイリイノは傾斜し主砲の発砲が不能となりヨロヨロしつつ遁走した。


 残るはニュージャージー・ミズーリの二隻である。このまま戦闘を続ければ必ず勝利を得れる。

 飛騨の反撃はやまず越後と共にミズーリへ攻撃を開始した。既に越後との交戦でイリイノは艦橋を粉砕されていた。一方の越後も中央構造物が破損し後部甲板からは火災を起こしていた。火災を起こしつつもミズーリへ必死の攻撃を行う。命中弾を三発叩き出したところでニュージャージーとミズーリが反撃した。飛騨はさらに二発の砲撃を受けて、とうとう第一主砲が照準機どころか砲塔が下から跳ね除けられるかのように敵の砲弾が炸裂した。

 

 尾張は目標をニュージャーシーへ変更した。同時刻ミズーリは第三砲塔が損壊した。だが越後も第二砲塔を破壊された。飛騨は二つ目の牙である第二砲塔までも破壊された。

 だが双方の距離は二二〇〇〇まで接近していた。ここで横腹に越後と飛騨の主砲弾が吸い込まれるように命中した。破口がぽっかりあいた部分に海水がどっと流れ込んだ。撃つのをやめない二隻にミズーリは押される形となり大型巡洋艦からも射撃され遂に大爆発をひき起こし沈没した。

 

 〇三五〇

 残ったのはニュージャージーただ一隻である。さすがに不利と察したのか高速で撤退を開始した。大型巡洋艦や水雷戦隊も再び攻撃を試みようと追跡しようとしたそのときだった。戦艦尾張に乗っていた栗田艦長は「全艦集合ここに集まれ」と伝えた。

 司令官の命令には逆らえず第一・第二艦隊は集合した。


 本来であればこのまま陣形を整え次第再びサイパン島へ向かい敵の主力を粉砕するか、輸送船を全て沈めてしまえばよかったのだが、栗田は艦隊を下げた。


 だがこれは戦艦飛騨をはじめとし那智や羽黒を喪失しないためだったとされる。この判断はある意味正しかったのかは分からない。だが、帰投時アメリカ第三艦隊は駆逐艦が三隻と大破した戦艦一隻と僅かに被害を被った戦艦一隻と寒々しい状態だった。まさかここに日本潜水艦が潜んでいたとは思わなかっただろう。

 

 〇五一五

 海中で何かが走るのを駆逐艦が発見したがとき既に遅くイリイノに三発、駆逐艦コンヴァースに一発、ニュージャージーに二発が命中した。結果イリイノは沈没しコンヴァースも必死に航行したが途中で沈没しニュージャージーも速度を最大速力が二四ノットに落ちた。

 結果日本第一第二戦隊の損害は小さくなかったがアメリカ第三艦隊は全滅規模の被害を受けた。

 こうして激闘の夜戦は終了し朝がふたたびマリアナ沖に訪れた。

 次回「夜明けのマリアナ沖」1月19日更新予定。

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