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戦艦越後太平洋戦記  作者: 賀来麻奥
絶え無き戦闘
98/115

第二次水雷戦

 年休も今日で終わりか。



 今日は2話更新です。

〇二四五 

 戦艦同士の距離は二四〇〇〇メートル。両艦隊はお互いに横を見せている。こうしなければ主砲が全て使えないからだ。主砲発砲の閃光と海上で燃える紅蓮の炎がまるで昼のような明るさを出す。戦艦越後にZ旗が掲げられた。「皇国の興廃此の一戦にあり」という意味である。

 日本水雷船体はその最中アメリカ戦艦に向かい決死の肉薄攻撃を行おうとしていた。

 水雷戦隊の指揮は大森仙太郎に任せられた。


 一方海中に浮いていたアメリカ巡洋艦一隻と駆逐艦三隻はこの時沈没した。


 「邪魔なやつらが近づいてきてる。奴等を吹き飛ばせ」戦艦フロリダは飛騨から照準を変え、その邪魔なやつらに狙いを定めた。距離がぐんぐん縮まるその奴等とは水雷戦隊であった。

 戦艦越後はこれを見ると目標をイリイノへと切り替えた。


「距離一九〇〇〇です」「まだ九〇〇〇メートル進めろ!」敵に肉薄して必ず沈めるとの心意気でただただ水雷戦隊は邁進した。月が隠れても暁闇ぎょうあんにならない海は火薬のにおいと煙が立ち込めていた。肺の弱い者がいれば間違いなくむせるような場所だ。

 

 〇二五三

 ふと、妙高に上席していた大森少将は殺気の様なものを感じた。殺気というものは人間に恐怖心を与えるような音量をとらえた聴覚が発するのか、光芒を視覚でとらえたものか、又は第六感が感じ取るのか分からない。が、この時それを感じ取ったのだ。一秒後自身の艦を横切り、背後に流れそれは後方の艦に衝突した。後方の軍艦は那智だ。間違いなくそれは敵艦の砲弾だった。


 着弾し光芒を発した。その中で巡洋艦那智の船体から膨張するように噴き出てきた火炎が視界に広る。炸裂音が不気味に聞こえた。自分の船に命中したわけでもないのに耳が痛む。

「那智被弾!」敵艦の水柱が那智をあざ笑うかのように周囲に直立した。同時にまたほかの船に命中した音が聞こえた。

「羽黒にも命中しましたぁ」恐怖心が増幅する。自分達が隠れ場のない草原でライオンに向かって行く生身の人間のように弱弱しき存在であると感じた。それは自殺行為だ。武器がなければそうだ。巡洋艦といえど戦艦の前ではその防御力は戦艦の主砲弾の直撃を防げるほどの作りにはなっていない。

 羽黒は小規模の爆発を何回も起こした。再度激しく爆発すると羽黒の主砲搭が空を舞った。

 戦艦の前で巡洋艦は魚雷という牙で対抗することは出来るが防御力では太刀打ちできない。先に殴られたら終わりだ。殴られる前に沈めなくてはならない。それが戦艦に抗う巡洋艦がとるべき手段だ。

「距離一六五〇〇です」速度三十二ノットで進む艦隊は距離1万まで後六分半。最新鋭のフロリダは三十秒に一回射撃が可能である。だが史実でも同じだが一分間に一回などといった間隔での射撃は、艦砲射撃などではない限りしなかったそうである。つまりフロリダが攻撃できる回数は六回である。その回数で射撃できる砲弾数は十二門全てを使用すれば実に七十二発である。さらに魚雷を放てば砲弾が射撃がやむわけではない。命中して敵艦に大きな被害を与えたときに初めて射撃はやむのだ。そのため絶対に外せない雷撃であった。


 〇二五六

 ここで負けては起死回生の妙薬がない日本軍にとっては戦闘艦各一隻が本来求められている倍以上の活躍をすることが必要だった。その中戦艦尾張の射撃は味方ですら恐怖を感じるほど見事な射撃だった。尾張の乗員は新人ばかりの集団ではなく、ほかの艦から集めた乗員が多く船はまだ完璧に乗りこなしていないかもしれないが、戦いには慣れていた。

 そして二回目の命中で尾張の砲弾は戦艦イリイノの装甲を突き破って炸裂した。右舷後方に命中しイリイノの隔壁は次々破られ四度ほど傾斜した。しかし四度傾いたところで挫けるような意思しか持たぬものがこの船に乗っている訳がなかった。アメリカ海軍の優秀なダメコンの注排水活動によって傾斜は1度までに復元した。イリイノは反撃の砲弾を尾張目掛けて発砲した。

 

「迎え撃て、これ以上の敵の前進を許すな!」日本の水雷戦隊に立ち向かうのは一度撤退したアメリカ水雷戦隊だった。迎撃の態勢を整えていたのだ。

 フレッチャー級駆逐艦十七隻「フレッチャー」「ラドフォート」「ニコラス」「オバノン」「シャバリア」「パーシヴァル」「ソーフリー」「ベネット」「フラム」「スタンリー」「ロイツェ」「レンショー」「ストックトン」「ターナー」「コンヴァース」「テリー」「アンソニー」


 クリーブランド級軽巡洋艦五隻「クリーブランド」「コロンビア」「モントピア」「アムステルダム」「サンタフェ」計二二隻の雷撃と砲撃により沈められた駆逐艦十一隻と巡洋艦一隻の雪辱を晴らすため立ち塞がった。

「全艦敵陣を突破せよ!!」駆逐艦十七隻が巡洋艦の周囲に随伴する。「暁」「響」「雷」「電」の四隻はアイオワ攻撃を敢行したため加わっていない。

 

 司令官 大森仙太郎少将


 前衛 駆逐艦「浜風」「天津風」「時津風」「峯風」

    重巡洋艦「妙高」(旗艦)


 本隊 駆逐艦「澤風」「島風」「白露」「時雨」「村雨」「夕立」「初春」「若葉」

    重巡洋艦「足柄」「青葉」


 後衛 駆逐艦「春雨」「五月雨」「海風」「涼風」「狭霧」

    重巡洋艦「最上」

 

 戦列落伍 巡洋艦「那智」「羽黒」


 月明だけでは不安だったのか「星弾照明弾撃てぇ」と指令がくる。妙高の砲が火を噴いた。やがて敵艦上方で炸裂した。パッと敵艦上でマグネシウム粉を入れた照明弾がパラシュートをつけて落下した。月よりもはるかに明るい光が敵艦を照らした。


 〇三〇五


 距離六五〇〇まで迫ったとき両艦隊はいっせいに砲撃・雷撃を開始。六〇〇〇までくると駆逐艦も矢継ぎ早に撃ちだした。

 アメリカ軽巡が少し距離を取ろうとしたときに時津風が放ったモントピアに魚雷が突撃してきた。右舷に一本命中した。

 だが時津風にも砲弾が一発命中した。艦尾に被弾し操舵不能となった。さらに高温高圧

の蒸気が漏れ出し火傷する者が続出した。操舵不能になった時津風に米駆逐艦ベネッセとフラムが砲撃した。次々と砲弾が命中した。時津風は艦橋さえも損傷し艦長らを即死に至らしめた。そのため総員退艦の命令は最後まで出されなかった。時津風は火災を各所から起こしていたがそれでも反撃を行ったがやがて後部が二つに裂け沈没した。最後の雷撃をして。

 その魚雷はフラムに三本命中し巡洋艦サンタフェに二本命中した。フラムは沈没しサンタフェは航行不能に陥った。

 青葉に魚雷が二発命中し速度をガクッと落とした。足柄が時雨と村雨とともに雷撃で敵艦を巧みに後衛部隊の射程距離内に誘導させた。ターナーは七発、レンショーは九発を受け沈没した。

 だが青葉は右舷中央に大穴をポッカリ空け、スクリューは四本の内一本しか回らず八ノットしか出せないでいた。

 

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