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戦艦越後太平洋戦記  作者: 賀来麻奥
終局への道
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森緑の航空戦:後編

 航空隊裏神はインドの英国陣地を爆撃する作戦に加わる。しかし思いがけないミスにより機位を喪失し敵の攻撃を受けるも反撃しこれを撃退するが、裏神に新たな敵が現れ・・・。

奇跡的に命中はしなかった。何だ。機体を滑らせるとまた曳光弾が流れてきた。また敵機だ。そしてまた追われている。 速度だけは落とすなと自分に言い聞かせた。追われている最中に速度を落とすなど自殺行為だからである。「ザザ・・・ッ裏神・・・こだ」恐怖のあまり意識が飛びそうな中無線機から声が飛んできた。彩峰曹長の声だ。返答しようとしたときにさらに自機に一撃が加えられた。擬音で表せないような音が鼓膜を振動させるとともに機体を激しく揺さぶられた。鉄の塊にでも突っ込んだかのようなとんでもない衝撃である。同時にオイルが弾け飛びエンジンからわけのわからない異音が聞こえてきた。俺もここまでか・・・汗がじっとりと出てくる。機体が直後ガクリと速度を落とした。エンジンに明らかなトラブルが起こったんだ。

 後方から機影が膨らんでくる。ここで終わりか!イチかバチか操縦桿をぐっと下に向けた。翼がガタッと揺れた。瞬間的に機速が五三〇キロを超えた。高度は一五〇〇mにまで降下した。

 雲が切れ森緑の大地が眼前に広がった。高度一〇〇〇mもう限界だ。操縦桿をぐっと引く翼が軋む。振り切れたか。後ろを見る。

 敵機は驚く程の速度で一〇〇mほど上をかすめるように通過していった。ここまで追い詰めて止めを刺さないのか。と思ったときもう一機が自分の頭上をかすめていった。あっけにとられていると右に影が、翼を翻しそれから逃れようとしたとき気づいた。味方機である。

 「無事か裏神」上壁兵曹?間違いない。右を見ると上壁兵曹が乗った九六式戦闘機が現れた。さっき頭の上を行ったのは・・・。前方を見ると九六戦に追い詰められた一機の機体が煙を吹いて森の中に落下していく光景が見えた。自分はここにきて助かったのだと自覚した。自分を追っていた英国機を撃墜したのは彩峰曹長だった。

「もたもたするな高度を上げるぞ!ちゃんとついてこい」と上壁兵曹は自分の機体と並走しながら言った。そしてジェスチャーで殴るような真似をした。自分はすいませんとジェスチャーで返した。


 一分後上昇に移った。オイル漏れはなんとか収まりエンジンも少し落ち着いてきた。するとしたの方から衝撃を受けた。対空砲火だ。いよいよ敵の本拠地の上空まできたのか。これでもかとばかりに撃ち上げてくる。そのために小さく振動する。と、ドンッと爆発音が聞こえた。九六式陸攻が運悪く直撃を受けたらしく木っ端微塵になった。そんな事に構うものかと敵の対空攻撃はますます激しさを増した。すると森緑の大地に兵舎のようなものが見えた。この時九六式陸攻がまた一機撃墜された。

 だがもう遅い。味方の編成は敵の陣地の上空を覆った。同時に腹から幾つもの黒いものを落としていった。数秒後・・・大音響と共に地表が紅に染まった。いくつもの爆発が起こった。さらに第二次攻撃隊。先ほどよりも多くの爆弾を落とした。火柱と黒々とした煙が上空に舞い上がった。オレンジ色と紅が地上で幾度となく弾ける。五十発を超える二五〇キロ爆弾は敵陣地を見事焼き払った。作戦成功だ。大戦果間違い無い。あまりの感激に涙が出そうになった。


 帰路に入る。意気揚々と翼を連ね陣地へ戻る。どこの誰もが興奮していたに違いない。 そして燃料メーターがほぼ0になったとき味方陣地へと戻れた。着陸に無事成功した。

 生きて帰れた。正直これが一番の感想だった。陸攻も他の戦闘機も次々着陸しわらわらと降りてくる。

 上壁兵曹は「敵さんが予想以上に多く、貴様急にいなくなるから彩峰曹長も心配してたぞ」と言ってきた。それから戦果報告などいろいろあった。

 今日の攻撃で九六式戦闘機一四機・九六式陸攻四機・九七式戦闘機八機を損失した。向こう側から指揮官機に付いていった同期予科練卒業生の本田が駆け寄ってきて「俺は今日一機撃墜確実だぞ」と満面の笑みを浮かべて来たので俺も一機撃墜したぞと返してやった。


 英国はこの日戦闘機二七機を損失した。スピットファイアの編成隊はどうやら日本編成隊に先に攻撃を受けたらしく反撃に時間がかかったとの事である。並びに英国軍の陸上施設の破壊に成功。二個大隊に全滅規模の損失を与え、補給庫や対空陣地の一部を焦土化。

 

 二〇〇〇 その後第一総軍がインド東南方面へ移動開始。トラックで急行した。

 この日のインドの航空戦の報告は大本営により大々的に発表された。少々戦果を誇張していたがそれはどこの国も似たような事である。


 ・・・ここで少し時間を遡る。

 〇八三〇 一方この日ビルマ戦線では熾烈な戦闘が行われていた。どこからそのような兵器を得たかと言わんばかりに軽機関銃や重機関銃を振りかざし国府軍は怒涛の進撃を開始した。一方の日本軍は前線の防衛陣地作成が不完全なままであり簡単に侵入を許してしまった。それでも頭数は増やしていたため応戦はできたが足止め程度であり敵の主力を粉砕するにはいたらなかった。

 偵察機により情報を得ていたビルマ航空隊はBf109と交戦。


 国府軍の先頭が五キロ前方に進んだ時ようやく強力な的と遭遇した。それは九七式戦車四輌とハ号戦車二輌を主力とする部隊である。

 九七式は八八mm搭載モデルである。そのため速力は遅いが破壊力は抜群である。五〇〇m向こうからこの国府軍は一方的に攻撃を受けることとなった。国府軍は一時撤退し戦線は五キロ地点で膠着した。

 これ以上先に日本軍が進もうとするとドイツ軍から付与された武器をもった後方の八八mm砲が火を噴く。かといって国府軍が進撃すると戦車隊が火を噴く。


 

 一八〇〇 幾度も出撃して空戦をするという航空戦も終わりを告げ陸上も静まり先程まで本当に戦争が行われていたのかと言わんばかりにビルマは静まり返った。


 だがこの日ビルマの本当の戦いは夜におこった。夜戦の火蓋はたった一発の火炎瓶であった。

 次回「ビルマの砲声」

 更新九月一日予定

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