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戦艦越後太平洋戦記  作者: 賀来麻奥
終局への道
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振り返えらぬ進路

 何をやってるんだ俺は。更新遅れてすいません。

四月一八日

 中国国民党の軍である国府軍と共に上空を乱舞するBf109を見て第五五師団が困惑し始める。機体の区別がつくわけでないが主翼に書かれた十字架マークをみればどこの国のものかが判別できる。

 ビルマの指揮官は中国機がドイツの国旗をつけているのかと思った。それほどにまで国府軍とBf109の襲撃がほぼ同時だったのである。

「くそっこっちの航空隊はまだか」第五五師団の兵士がドイツ機を睨みつける。メラメラとした闘士があふれるが上空を高速で飛び回る敵機には手も足も出ない。

 パパパッと機銃弾を浴びた地面から土埃が腰ほどの高さにまで立ち上がる。二百メートル向こうからは国府軍が盛んに発砲してくる。と、突如轟音が響き渡り地面が振動した。

 「な、なんだぁ」暁の炎がメラメラと日本軍の陣地側から立ち昇った。「くそっ」その炎が立ち上がった場所から転がるように兵士が出てくる。「チハ車が二輌ともがやられた」チハ車とは九七式中戦車のことである。航空機から発見されないため隠蔽していたが、見つかってしまった様である。戦車は上からの攻撃に弱い。上面装甲が薄いというのが第一の理由である。その様子をあざ笑うかのようにBf109が上空を突き抜ける。


 そのBf109が一瞬にして火だるまへと変わるにはそう時間はかからなかった。ビルマの航空隊所属九七式戦闘機が三〇機姿を現した。Bf109は二〇機前後いたが燃料のこともあったのか、まるで蜘蛛の糸を散らすように姿を消していった。するとどうした事か国府軍も一目散に撤退を開始した。九七式戦闘機が追撃に移ろうとしたとき、遠くの方から砲声が響いた。

 すると上空に黒い煙が広がった。ビルマ航空隊は驚いた。「・・・対空砲こんなところに」ビルマ航空隊が慌てふためくのも無理はない。それは国府軍についていたドイツ砲兵隊の八八ミリ砲4門が火を噴いたのだ。「よもや対空砲までもあるとは、ただの反発部隊などとはわけが違うぞ」第五五師団長の竹内寛たけうちゆたか中将は報告を受け取り呟いた。

「敵航空隊の確認のため偵察を行う必要がある」ビルマ配属の第五飛行師団長である小畑英良おばたひでよし中将はそう考え、参謀長と飛行機地司令官などと話し合いの結果九七式指令偵察機と其の護衛機でビルマ国境周辺の偵察を行うこととした。

 

 しかしながらビルマ所属の第五飛行師団は開戦半年後から英国空軍と小規模ながら空戦を繰り広げていたために戦闘機もそこまで多くはない。さらに【今後ノ戦闘大綱】と【本戦争ニ必要ナ兵力】により第五飛行師団には増援がしばらくないことが決定しているのだ。


 そのため最終的に九七式指令偵察機のみによる偵察を試みることとなった。さらにビルマの中国方面へと前線に兵力移行が行わることとなった。陸軍は飛行場大隊という飛行場を防衛する兵員からも少数ながら徴収し前線の強化に努めた。大本営陸軍部からは「戦線の拡大だけは避けよ」ときたが、兵力移行については「異論無し」との事であった。

 

 一方のインド方面ではこの連絡受け取った牟田口が決断を強いられていた。本来ならばすぐさま許可をすべきであるが現在攻略中のトンへは敵兵も増援が少しづつ来ており第三九師団と第三三師団は引くに引けない状況となりつつあったのだ。第九七師団の内の二個連帯隊も前線で交戦中である。

 後方のコヒマに駐屯している第九七師団の残りの一個連隊もも英国ゲリラ部隊と交戦が毎日のごとく続けられている。

 そもそもこの地帯には英国兵と英国側インド兵だけで三十万名以上もいる。現在は敵兵力が分散している事と武器等が不足している事もあり進撃ができているが、これが固まって動き出せば日本軍は間違いなくインドから海に叩き落とされる。そのため分散している今、各個別に撃破しながら敵の総兵力を削がねばならないのだ。


 だがビルマまでのルートをもし国府軍に寸断されてしまうとそれはそれで厄介なこととなってしまう。

 牟田口は考慮の末インド本拠地にいる第四十師団を向かわせる事とした。つまり自身の軍は動かさない事を示したわけである。インドの本拠地の総指揮官水上源蔵みずかみげんぞうは前線の状況を聞き第二総軍の第四十師団を国府軍撃破のために向かわせることを決定した。


 一方の英国側はすこぶる調子が悪かった。まず包囲されているため物資などが阻まれている事が第一だった。だがこれさえ耐えれば日本軍もこの地方攻略諦め、太平洋で米国が勝ち進んでくればこちらに気を配る余裕もなくなると考えていた。

 しかし英国はそれ以外にドイツ軍の存在に謎を抱いていた。それもそのはず英国はインドを植民地としていたが、ドイツ軍はこんなところを植民地にはしていない。第1次世界大戦前までは確かに青島チンタオを持っていたが第一次時世界大戦で日本軍攻略により消滅している。第一場所が若干違う。こればっかりは首をかしげる事しかできなかった。

 英国側は総合兵力約二十七万名。航空部隊は戦闘機60機、爆撃機30機、哨戒機20機を持っている。本拠地をインパールとして兵力八万名を既に集めることに成功していた。日本軍が現在攻撃しているトンヘは単なる時間稼ぎであった。


 四月一九日 国府軍が再びビルマ国境を超え進行を開始した。日本が偵察機がなんとか敵を確認したところ昨日とは比べ物にならないほどの兵力が確認された。

 「昨日のがまるで威力偵察のようだ」思わずそう呟く偵察兵。直後機体が激しく揺れ動いた。同時に四方八方に黒いものが浮かび上がる。操縦員が顔を引きつらせてあわてて高度を上げながら雲の影へと逃走をはかった。

 

 同日トンへのおよそ九割を攻略した。敵の増援は完全に途絶え英国兵は既に数百名規模にまで減少したとみられている。


 日本軍はここで全航空兵力をぶつけインドの戦いを終結させる方針をとることとした。

 作戦開始日は翌日となり全航空機の整備が慌ただしく行われた。攻撃地点はインパール。その後第一総軍を向かわせて攻略し北方からくる牟田口の部隊と合流する作戦をとることとなった。


 国府軍の脅威が見え始めると同時に発令された航空作戦は英国との激しい航空戦を呼ぶこととなった。

 次回「森緑の航空戦」 

 8月25日投稿予定 夏はいろいろあるので(震え声)

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