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戦艦越後太平洋戦記  作者: 賀来麻奥
惨劇の後に・・・ 
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陸の志2

3月10日 〇九四〇

「・・・こちらグループ1、イギリスの航空隊を確認、交戦の是否ぜひを問う」

「━━━━機体並びに機数は」基地からの返答だ。

「・・・ハリケーンと思わしき機体が4機ほど」と質問に答えるパイロット。

「━━━━攻撃を許可する、戦闘時間は5分だけだ」

「・・・了解」通信を終了するとともに13機のBf109は機体を傾けて英国の編成部隊に襲いかかった。

 この英国航空隊はドイツ機を確認したという信じられない報告に対し、一応出しとこうという気持ちが伺える、曖昧というか適当とでも言える程の気持ちで出撃命令を出された編成隊である。僅か4機である。おまけに高度はこちらが700m上でどうやらあっちは気づいていないようだ。英国航空隊は現在カモとでもいえる状況下にある。

 

 Bf109のエンジンが何かに目覚めたかのように力強く唸った。速度が一気に加速した。ハリケーンは鼻歌交じりに空の散歩でも楽しんでいるかと錯覚するような重鈍さで空を駆けていた。恐らく気づいたのはBf109が銃撃を開始した頃からだろう。

 ハリケーン2機の翼の根元に幾つもの弾丸が命中した。1機はそのまま翼を失い上空から姿を消した。もう1機はそこから炎上し数秒後に爆発四散した。

 残った2機のハリケーンのパイロットは驚愕し混乱した。混乱しつつも取るべき行動がわかったのだろうか、エンジンを一気に強め離脱しようとした。だが、既に2機は蜘蛛の糸に掛かっているような状況下にあった。

 エンジンを最大にし離脱を試みる2機の前方斜め上方には、Bf109が4機突如として現れた。2機はあっけなくコックピットを狙い撃ちにされ地面に叩き落とされた。

「・・・こちらグループ1、4機とも撃墜。損害なし、現空域に機影を認めず。帰投する」

「━━━━了解」

 

 

 閃光を放つそれは上空に高速で駆け上がるり、やがて落下し始めた。急速なスピードで落下していくそれは海上から放たれた砲弾である。陸地に着弾すると轟音と共に爆風を生じさせ周囲のものを吹き飛ばした。

 巡洋艦平戸が台湾の西部海岸から艦砲射撃を開始したのは一〇三〇であった。いかに旧式艦といえど15,2センチの砲弾は重砲で言えば最大サイズである。(正確には155ミリ)

「初弾、目標地点に命中」観測員が腹の底から声を出し告げると、艦長もそれに負けぬような声で「ならば結構、主砲一斉射撃だ、砲術長」

「全砲、撃ち方始め!」

 

 

 目標地点周辺には陣地の中らへんにいるドイツ・共産党軍がいた。双方の軍はいきなり飛来してきた砲弾に度肝を抜かれどっと混乱に陥った。落下した場所には蛸壺陣地のような穴がポッカリと開いていた。

「伏せろ!」警告の声と共に背中に刃物を向けられているような恐怖を思わせる音が聞こえ始めた。頭を抑え地面に伏せると、意識が飛びそうな衝撃が五感を通じて伝わってきた。

 上陸軍が民間人から奪い取った(民間人は射殺)民家が木っ端微塵に吹き飛ばされた。ガスに引火して発せられる炎が柱となり直立し、次々と飛来してくる砲弾が新たに衝撃を与え続ける。上空には獲物が動けなくなるのを待ち望んでいる獰猛どうもうな怪鳥を思わせる偵察機が旋回していた。だが彼らはそんなものには目もくれずただこの恐怖の攻撃が止むのをひらすら願った。


 

 一三〇〇 この時間台北では盛大に軍歌が流れていた。その中で足音を揃え行進する部隊の姿があった。台湾防衛国民軍の中でもエリートが集まった集団である。総数は1000名ほどであり1割だけ日本軍が編入されていた。彼ら台湾国民軍に大雑把な指揮するのは台湾防衛第1連隊指揮官だが、この部隊で直接の指揮をとるのは同じく台湾人である潤小袋である。目が細く、耳たぶが小さい(というより無い?)といったあまり嬉しくないような特徴を持つが、カリスマ性も人望も豊富であった。またその才能を認めざるを得ないほど認知が素早く判断が適切であった。日本語もある程度なら喋れることも指揮官に任命された要因であった。台湾防衛国民軍の指揮官は兵士長という階級が割り当てられるがこれは陸軍の兵長とはまた違ったものである。

 ともかく1000名の指揮を任せられることが何より潤兵士長の有能さを証明するものであろう。

 


 


 「物資の輸送が1%遅延か・・・」牟田口中将はさして深刻そうな顔もせずに呟いた。「1%くらいなら、問題ないと思うが・・・」と少し考慮し「弾薬物資を優先して輸送、復唱せよ」通信兵にい渡すと通信が復唱し後方の部隊と通信をとった。牟田口中将率いる第33師団・第39師団とその先方を行く斥候隊はひらすら山脈地帯へ向かっていった。

 そしてようやく着いた。ここから先はトラックが登れるような斜面ではない。バイクも不可能とされていたが、超えてしまえば再び平地があるわけである。そんなところで何もないとなると困りものである。そのためバイクは運ぶこととなった。トラックも分解し運ぶことが検討されたが体力の消費は避けるべきことであるため止むなくその計画は破棄された。


 英国部隊とも少しずつ交戦し始めている牟田口の軍隊だったが消耗兵力はほとんどなく現在のところまでは作戦は順調に進んでいるようだ。


 

 3月11日 台北方面攻略軍は艦砲射撃で兵力を消耗していた。さらにその最中航空隊まで出撃し機銃掃射で逃げまとう兵士を射殺したらしい。中間地点が艦砲射撃を受け戦意を失いつつあったが前線は双方勇猛に戦闘を繰り広げていた。この日ついに日本軍の第1陣が壊滅しその後3キロの進行を許してしまった。

 しかし中部軍壊滅のため台北方面攻略軍は補給などの遅延により進行ペースと火力は低下していった。


 3月12日 台湾第1防衛連隊第2陣に潤兵士長率いる台湾防衛国民軍が到着した。海上では補給艦より物資を受け取る巡洋艦平戸の姿が確認された。

  護衛艦もそれを見守る。その時海中には白い線がスッ・・・と平戸に伸びていった。轟!直後振動が水兵たちを襲った。

 次回、6月中・・いや23日ら辺更新。予定。

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