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戦艦越後太平洋戦記  作者: 賀来麻奥
珊瑚海、波高し
67/115

第二次珊瑚海海戦

 

 地面が爆発音がなる度に揺れに揺れ、亀裂が走ると大量の土が空中にばらまかれ砂埃となった。それがほぼ無限と言わんばかりに続く。滑走路はボコボコにえぐられ原型をとどめんばかりに破壊され尽くされていく。けたたましくなり続けていた味方の機関銃音、砲声が途絶えた代わりに空中から物体を落とす甲高い音とそれが爆発する音がポートモレスビーには響き渡っていた。先程トラック島に退避(不可能ならなんとか隠蔽するよう)命令が出たが爆撃機の残骸とでも言えるものが2つに裂けメラメラと燃えているところを見ると完全に逃げ切れたわけではないようである。兵舎は木っ端微塵に吹き飛び破片や飛び散った材木が蛸壷や塹壕で身を丸めている兵士たちに容赦なく襲いかかり死傷者を増やし続けていった。誰かが発狂したような声さえも聞こえてきた。しかし姿は爆煙と土埃といたるところから発せられる紅蓮の炎により確認できず、その惨劇な映像に付け加えられる音声により発狂者の声もかき消された。塹壕やたこ壺に爆弾が直撃すると人間が紙切れのようにふきとばされる光景がそこにはあった。

 

 米軍爆撃機・雷撃機が200機襲来しその後も何十機もの編成隊が襲いかかってきた。生きた心地がしないというがここではいつ死ぬんだろうという絶望に満ち溢れた兵士がただ機械的に動いていた。少しでも片付けや塹壕の構築をすすめているとまた来る。やがてジャングルに逃走する兵士が多数現れた。無理もない話である。しかし米軍もそれを確認すると草木が生い茂るジャングルに爆弾を投下し続けた。


 これが3月5日の午前中という時間内で起きた。陸海軍は既に1000名の死傷者を出し航空隊は壊滅島の設備の6割が消し飛んだ。残り4割はといえど分厚いコンクリート壁に守られた火薬庫などを除けばも良しわけない程度に立っている木製のボロ屋である。いや失礼、立派な兵舎である。焼けた跡がくっきり付いたその地面は裸足で歩いたら火傷するほど熱くなっていた。

 

 「次はいよいよポートモレスビー島を砲撃するぞ」ウィリアム・パイ少将は意気揚々としていた。艦隊は日本海軍の意外な攻撃により被害を負ったもののそれは充分まかなえるものであった。現にこうして日本軍がいる島々の地表ごとごっそり削ぎ落としているのが証拠であった。


「地雷でも誘爆しだしたのか」ポートモレスビーでは爆撃が終了したため、陣地構築・修正などをはじめようとしていた時だった。パッパッとひかる何かが海岸で爆発しているのである。これは島の奥にいたものの話であり、実際は艦砲射撃であった。偵察用の高台にいたものはその姿を確認することができた。

 戦艦2隻と巡洋艦以下の艦艇が10隻以上である。数分後にその高台は1トン超えの砲弾をまともに受けて倒壊した。

 「ジャップの砲弾は水柱を作るのが得意だな」生き残っている砲がアメリカ艦隊を砲撃するが、最大射程距離にしても砲弾は届かなかった。なにしろ距離は二万m以上とっていたため150ミリ砲などでようやく届く距離である。

 

 アメリカ艦隊はこの日、戦艦の主砲だけで200トン以上もの砲弾を打ち込んだ。巡洋艦・駆逐艦はあくまで護衛であったが20センチ砲を持っている重巡洋艦はなんとか砲弾を届かせることができ100発ほど撃ち込んだ。

 中には焼夷榴弾がありポートモレスビーは紅の炎によって燃え盛った。人や鉄はたまたゴムが焼けるような匂いが混ざりこんだなんともいえない異臭が漂った。

 この日米軍はオーストラリアから輸送船を出港させた。中には海兵隊が3万8000人もいる。海兵隊は全員精鋭の軍隊である。港にいる護衛空母も輸送船のお付き合いをするようである。艦隊速力が20ノットも出せない鈍足である輸送船団は珊瑚海を進みだした。

 

 3月6日になり三時間が立ったそんな時間にその艦隊はある海域に到着した。作戦では3月6日の日付から二時間すぎる2時00分〜20分で到着予定であった。

 防空戦艦山城がその艦隊を見るかのように艦橋を覗かせた。軽空母と駆逐艦がそれに続いて姿を見させた。ニューブリテン島北部に日本艦隊は到着した。

「20ノットで走り回ったのだ巡洋艦・駆逐艦・轟水に給油をさせよ」越後と飛騨はまだ余裕があった。

「米軍め待っておれ、すぐにハワイに返してやるわ」豊田副武はそう呟いた。1時間後には既に日本艦隊は巡航速度でポートモレスビー方面に向かっていた。今回は空母の位置を特定されるのを防止するために無線封止を行った。


〇六一二

 朝の速くから爆発音が聞こえた。その爆発音は爆弾の音とは相違なる音であった。それはプロペラの発動機を起動させる音であった。九七式軽爆撃機、九六,九七式戦闘機は30機ばかしで第1次攻撃隊を編成し、第2時攻撃隊は第1次攻撃隊と比較し戦闘機の割合を多くし、これも30機で編成した。正直、これに10機加えた70機が機動部隊がもてる戦力だった。軽空母はニューブリテン島に移動する前トラック島で許容範囲の補充を行ったが80機の最大搭載数より少なくなってしまった。ただ日本軍はなんとか有効に使用しようと幸い補充が十分であった爆弾を多く積んだ。

「ポートモレスビーを爆撃している艦隊がいるくらいだから、ポートモレスビーから周囲400キロ圏内を探せば必ず敵はいる」とトラック島に送られてきたポートモレスビーからの報告を受けてそのように命令を出して攻撃隊を出した。大雑把な命令だったがこれはなんと的中した。 


〇七二〇

 「ジャップのやつらは完全に黙ったようだな。これで海兵隊のやつらが上陸しちまえば今回の作戦は終了するってわけだ」ハルゼーは何か腑に落ちないような表情でカーニーに言った。

「消えた機動部隊でしたら恐らくトラック諸島にでも引きこもっているのでしょう」ハルゼーが気に掛けていることを察することに成功したカーニーだが、そんなことは知っている。しかし輸送船がそれぞれ所定の場所に付くには後3日間は最短でも必要だ。これに上陸時の支援まで必要なのだからたまったものではない。こんな退屈なモグラの穴掘りの手伝いをするのはやめてほしい。と思っていたところにその報告は入ってきた。

 「なに、哨戒中の第29駆逐艦隊の1隻が日本艦隊から攻撃を受けただと!」第29駆逐艦隊というとリー大佐の管轄下の艦隊である。その1隻が攻撃を受けたというのだ。一時は豪州北部島の島付近にいたが、機動部隊が現れると聞きそちらの方面へ出撃したのがリー大佐の艦隊である。

 

「駆逐艦1隻撃沈か」距離1万5000で見つけられたその米国駆逐艦は大型巡洋艦4隻の集中砲火を受けた。なんせ口径が違いすぎるその戦いに駆逐艦側の勝利はなかった。速力も同じくらいである。1発受けただけで構造物が一瞬で破壊されるのだ。それが確認されただけで十発が命中した。駆逐艦は前後左右に揺さぶられ装甲がズブズブと突き破られ、艦底にまで穴が空き四散しつつ海に没していった。大型巡洋艦は一番槍と言わんばかりに30ノットの速度で前線に貼り出ていた。機動部隊はその300キロ後方にいる。少し遅れて対潜艦隊(轟水と駆逐艦)が来ている。


〇七四六

 ハルゼー機動部隊は自ら第16任務部隊に敵機が接近している事を察せずにいた。まさかスプルーアンスに次いで自分の艦隊が攻撃されるなど夢にも思わなかったのだ。

 それは突然の襲来だった。20機の軽爆撃機が第16任務部隊に襲いかかったのだ。その頃パイ少将はリー大佐が攻撃された報告を聞くと、これの撃退にかかった、

 第16任務部隊は弾幕射撃を作り出した。しかし、既に上空には日本機が舞い踊っていた。そして空母や巡洋艦に襲い掛かった。

「油断していていた!」ハルゼーが叫んだときその声を消しさるような大音響が紺碧の海原に轟き紅の炎が舞い上がった。

 少し筆記中にアクシデントが起こったため少々艦隊の動向が抜けたりしているかもしれません。

 

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