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戦艦越後太平洋戦記  作者: 賀来麻奥
風雲告げよ
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小なれど鷹は鷹成り

 3月3日の戦闘記録。短文になってしまい申し訳ないです。

 九六/九七式混合戦闘機25機が姿をあらわした。海軍式に作り替えられた九七式戦闘機は速度が少々落ちたがほとんど空戦に問題はなかった。また今回海軍が特別に攻撃用に用意した機体があった。それは97式陸海両用軽爆撃機である。名前のとおり陸軍でも使用している機体である。といよ陸軍で使用していた機体を海軍が最低限の仕様を加えたのである。まずこの機体にはダイブ・ブレーキがなかったためを付け加え、さらにエンジンを海軍の「光」エンジン最終型となる三三型が搭載された。馬力は最大900馬力にも達する。96式戦闘機もこれに切り替わっている。計測器などは海軍仕様に96式戦闘機以降統一されているため(97式戦闘機は例外だが)最低限の仕様の変更で使えるのである。

 その97式陸海両用軽爆撃機(通常:97式軽爆撃機)は引き込み脚である。故に速度も速くなるように機銃も9ミリ機銃1挺しか付いていない。また操縦席並びに風防を少し小さめに設計した。(これは後に不評買うこととなる・・・)海軍が計測した結果最高速度489キロmを記録した。燃料は落下型燃料タンクを使用することで航続距離の短さをまかなった。この97式軽爆撃機は27機姿を見せた。


 レイモンド・スプルーアンス少将の第7任務部隊にそれは襲いかかった。スプルーアンスも確認しだい軽空母より戦闘機を上げた。上空にいたのも合わせ20機となったが、エンジンはまだFULLに性能を発揮できない。97式戦闘機が20ミリをダダッと短く撃ち込む。その攻撃を避けても96式戦闘機がそれを妨げた。運動性能が良い96式戦闘機は敵の攻撃をクルリと身軽な旋回を行い避けると、すかさず反撃に移った。9ミリ機銃は軽くテンポの良い速度で機銃弾をF4Fに撃ち込むが、何十キロという防弾装備で白煙も吐かない。だがそれは10発にも満たいない命中弾の話だ。さすがに何十発と打ち込まれると翼を失いそのまま海中に落下する。

 遅れてようやく97式軽爆撃機が到着する。駆逐艦や軽巡洋艦が必死に迎撃を行うが中々撃墜できない。ようやく敵機が火だるまになりだしたのは米軍戦闘機が機銃弾を打ち込み始めてからだった。4機が撃墜されるも軽空母インディペンデンスの上空に97式軽爆撃機は到着していた。最後の抵抗と言わんばかりに1機を撃墜したが、上空に現れた6機の97軽爆は抱えていた450キロ爆弾を投下しだした。すると機体が軽くなると高度をグンと上げ速力も早くなった。追い打ちの機銃弾が後ろより追ってくるが全く当たらない。

 1機目が投下してから数秒後空気を振動させる爆発音が鳴り響いた。1番機が翼を翻しインディペンデンスを見ると3番機が爆弾を命中させ火柱を上げさせているところだった。4番機も至近に水柱を上げさせていた。その後2発が命中し爆弾を4発受けたこのインディペンデンスは元々軽巡洋艦予定だったものを日本軍の米本土侵攻を受け大至急空母に変更したものである。元が元である上に軽空母であるためこの軽空母はたちまち炎に包まれた。排水能力と速力が優れ、装甲の上に甲板をつけているが四発の命中により電機系統は全滅した。そして致命傷となったのは4番機の至近弾であった。これにより舷側の隔壁が破壊された。艦内部には大量の海水が流れ込み甲板上や格納庫は火が暴れまわった。さすがに復旧が不可能と感じたらしく総員退艦の命令が出されるまで時間は掛からなかった。最も脱出できたかどうかは別問題である。さらに残った機体はプリンストンと軽巡洋艦サバンナめがけて空爆を行った。火柱が海上のあらゆるところで見受けられた。サバンナにはレイモンド・スプルーアンスが乗船していた。日本軍の爆弾は艦橋を真っ二つに分断させて第2主砲を損壊させた。それどころか1機が機体の引き上げに失敗しそのまま突き刺さるように機銃座5つを巻き添えに爆発を引き起こさせた。サバンナは消火が迅速に行われ沈没することはなかったが当たり一面ススまみれとなった。黒い水が艦内を汚し業火が構造物を溶かし、艦橋を破壊し戦闘継続能力を失わせた。スプルーアンスは恐ろしい光景を目の当たりにしつつ自分にくだされる処罰とこれから艦隊をどう動かすかを考えていた。

 プリンストンは計10機に攻撃された。熾烈な空爆を受けたたプリンストンは艦首に亀裂を入れられて煙突を削がれ海中に鈍い音を立てながら落下した。格納庫にも火が回り始めた。さらに速力8ノット以上を出すと艦首から大量の海水を飲み込んでしまい沈没の危機にさえさらされる。

「材木をもってこい!」残りの隔壁が破られないようにと材木で補強をしようと罵声が飛ぶ。

 やがて修復が終了したプリンストンは速力14ノットで航行できるかつて空母だったものとして駆逐艦5隻とボロボロの軽巡洋艦とともに南へ針路をとった。 こうして米艦隊は事実上作戦可能数90機(既に60機に減少していた)を失った訳である。残るハルゼーの空母2隻では200機近くが作戦可能だがこちらも消耗激しく80機が損壊・撃墜されている。しかし豪州より航空機の補給を受けれるようにしているため数時間もすれば搭載機はフル状態になる。

 しかし、予備戦力であった軽空母2隻を失ったという。それも友人であるスプルーアンスがである。

「日本海軍が空母を投入したのか?」ハルゼーが疑問をつぶやくとカーニー大佐はその言葉に納得した。 


 一方の日本はというと戦闘機10機、軽爆撃機8機損失と戦果に比べると意外と微々たる損害であった。山城の指揮官は山口多聞である。この戦果をすぐさま報告し、「小なれど鷹は鷹成り」と最後に付け加え打電した。つまり軽空母でも正規空母と同じようなものであると言っているのである。

 この報告を受けた井上中将は狂喜の数歩手前まで気分を盛り上げつつ外面に出さないように勤めていた。

 これで米本土上陸作戦で軽空母「天鶴てんかく」を沈めれてさえいなければもう1隻の軽空母と軽巡洋艦も沈めれていただろうと考えるが、井上中将は仕方ないと考えた。

  

 この日は米艦隊が一時期撤退し、終了した。日付は3月4日になりつつあった。

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