セイロン沖海戦=序章=
2月6日
神重徳大佐はインドの対Uボート作戦を考えインドの制海権を得るべきだと意見を出すこととした。ちなみにこの時日本軍は、きちんとした作戦を考えていなかったのであろう。なんという事だろう。もはや戦争以前の話である。いや、立てていた作戦が第2段階から頓挫し始めたというべきだろうか。
「轟水と戦闘機の生産にかなり手を回しているがちゃんと水上艦は修理できているんだろうな」このごろ需要大臣からも色のいい返事が来ない。豊田副武はカリカリとした気分でいる。インド方面には高速輸送船以外はほとんどの船舶は寄り付かず、インドへの物資が不足しているらしい。一応足が遅い輸送専用に旧式水雷艇が゛寄り添い゛程度の気持ちで付いてきている。速力も10ノットがせいぜいで本格的戦闘ができるものではない。さらに高速輸送船も1週間ほど前雷撃を受け、被雷こそしなかったが機銃や副砲を放っても手応えが応じられなかったとのことである。つまりはきちんとした戦術を確定しないことには、どんな設備でも無用の物になってしまうということだ。
2月10日
そして遂に輸送船ルートの安全性を求める者を恐怖のどん底へ突き落とす事件が起きた。
10隻の輸送船が航行しているさなか2隻のUボートから攻撃を受け3隻が撃沈され、2隻が航行不能にさくせられたという。そして水雷艇がしたのは航行不能になった2隻を処分するという皮肉な仕事だった。
さらにインドの湾口に停泊していた船舶の近くに浮上し機関銃を撃ちかけるという挑発的行為まで行ってきた。これにとうとう日本海軍は敵潜水艦駆逐のために、戦力を派遣することとした。
この時日向は輸送船から空母になる途中だったのだがまた駆り出された。なにに駆り出されたのだろうか。
参加するのは、
特務艦 「日向」「吾妻」「特〇一」 対潜艇 「轟水」1/3/5/6番艦
特務艦搭載艇 「特殊攻撃艇1型」10隻 予備戦力 (インド内陸航空隊)という貧弱さが目立つ戦力だ。そして特殊攻撃艇1型というのは何ぞや?「特〇一」とは?
その戦力は既にアリューシャンで見せれている。果たして今回は活躍できるのだろうか。
2月15日
夜の静寂の中輸送船らしき艦艇が一隻進んでいく。
「輸送船1隻発見。護衛艦はついておらず。距離2000、針路270度(西)速力7ノット」Uボートの中で潜望鏡から見える情報を報告した。この至近距離なら高確率であたる。
「不穏だな・・・あえて目立たせないためか?敵の重要な物資が積んであるのだろう。撃沈せよ」艦長の命令により魚雷発射の準備が行われた。
「装填は出来たか?」
「はい潜水艦艦長、装填完了!」
「よし放てぇ!」
Uボートより2発の魚雷が飛び出た。波の音とはあきらかに違うスクリュー音を立てながらまっすぐ輸送船に向かって魚雷は進んでいった。そして特務艦「特〇一」という無線誘導船は撃沈された。
「爆音の後、ノイズ途絶えました。撃沈された模様。他艦艇に連絡します」特務艦「日向」は特務艦「特〇一」に乗せていた無線電話から船が沈めらたことを確認した。乗せていた無電はとてつもなく性能が悪く、届くこと届くがノイズしか聞こえないというものだった。だが、今回は特務艦「特〇一」が撃沈されたかされていないかが判別できればいいのだから、これで十分だった。
日向は航空母艦となる船で通信設備も備えていた。
「日向より入電、特〇一が撃沈された模様。現場に急行せよ」
その時潜水艦は浮上していた。潜水艦の中の曇った空気とは違う外の空気を吸った。気持ちがいい。ドイツのUボートは日本とは大違いで小型だ。そのため移住性も悪い。
「めぼしい物資がないどころか人間すら出てこないぞ」奇妙な残骸を見て照準を定めたフィスターがいった。
「じゃあハズレだったんだだろ。たぶん操縦員しか載ってなかったんだ。東洋の猿だから数が不足してるんだろ」
「おいジョンそういう言い方は良くない。彼らはアメリカを相手に喧嘩をしているんだ。彼らが猿なら既に日本なんて無人島になってら」
「バラストタンク用の空気はもういいぞ。そろそろ戻るぞ」10分の休憩も終わり潜水艦の中に戻った。
そして帰路についたときだった。
「スクリュー音多数!距離3000以内に艦艇4隻以上!大型艦もいます」それは絶叫だった。
「なんだと。・・・まさか」艦長はすべてを悟った。そう罠だったのだ。詳しくは知らないがとにかく俺たちを狙っていたんだ。
「潜水艦と思わしきスクリュー音、距離1000」轟水は2方面から潜水艦を囲むように進んだ。そしてその後ろには「吾妻」がいた。旧式の装甲巡洋艦であるが潜水艦には脅威である。
47ミリ砲と8センチ砲を轟水からいわれた場所に放つ。仰角を大きく取った。そのため弾丸は垂直に近い角度で海面に入り込む。
30秒後そのUボートはダメージを受け、浮上したところを撃沈された。唯一飛び降りた3名のみが救出された。
「まず1隻か・・・」ほかにもUボートは多数いるだろう。
しかし、この海戦はやがて規模の大きいものへと変化していく。