紅の米西海岸
アメリカ西海岸には狂ったように砲弾と爆弾の雨が降り注がれた。紅の炎がサンディエゴを燃やし尽くした。黒煙を舞い上げた地上では阿鼻叫喚の断末魔の叫びや何かが誘爆する音やら形あるものが瓦礫へと変わりいくことがたやすく想像できる音が鳴り響いたが、その音さえかき消すごとく砲弾の命中音の轟音が地面を揺るがした。
さらには垂直射撃を大型巡洋艦である「松浦」「狩野」が行った。2世代前の戦艦の主砲のサイズである。これを食らったら鉄筋コンクリートでもひとたまりも無い。たちまち海岸線の防波堤、ビーチが瓦礫や土砂と共に投げ飛ばされて瞬く間にその場所を地獄へと誘なってしまった。
そこで日向型輸送船がクレーンから慎重に上陸用舟艇を出した。他の輸送船からも兵士がぎっしりつめられた上陸用の舟艇が降ろされる。2500人の先行部隊は軽機関銃を持ちながら土ぼこりがもうもうと立ち上るアメリカ西海岸のカリフォルニアへ進行していった。
同時に第2次攻撃隊と第1時攻撃隊が上空を交差したとき
「敵機です!」報告員が示す方向へ顔を向けると、いるわいるわ10、20、30…多数の陸上機と思われる四発機と単発機が迫っている。
「遂にきたか。総員対空戦闘準備!艦隊に傷ひとつつけさせるな!回避運動開始。駆逐艦は輸送船をなんとしても防衛しろ」
迫ってきたのは陸上戦闘機カーチスP-40とそれに守られているのは空の要塞B-17爆撃機である。ボーイング社の傑作爆撃機である本機は速度こそ爆撃機のため遅いが優れた防弾装甲と消化装置に加えM2機関銃を13挺、爆弾搭載能力は最大5トン近く積載することが可能だった。
越後以下の対空砲火が一斉に来るべき敵機に砲門を向けた。さらに空母から96式艦上戦闘機が次々着艦していく。そしていきなり操縦桿を胸元に引き上げると敵機に向かっていった。新型の20ミリ機関銃の成果をさあ見せようとばかりに巴戦に入る。
このカーチスP-40はP-40Bだったため7,7mm機4挺と貧弱だった。中には新型の12,7mm機関銃6挺の型と様々であわてて出撃してきたことが伺える。
速度は96式戦闘機より勝っているが数の上では40機に対して96式艦戦は60機だった。
「カーチスP-40とか言たっかな?こいつの名前は」中国戦線で何度か対戦したことがある。満州で海軍航空隊として勤めていたこの操縦士はカーチスP-40の事を良く知っている。
「奴らの機体に書かれているさめのマークはこけおどしだ!」このP-40はP-36と比べて速度が70キロも上昇したが運動性がその分劣悪になっていた。
96艦戦は有る程度良好なため巴戦で次々勝利し後ろにくっけるようにして20ミリ機銃を撃った。激しい発砲の衝撃で主翼がねじれそうになった。すると行き成りP-40が爆発した慌てて上や下に回避する。
「すげぇ・・・。陸軍はこの機銃を使ってたのか海軍はなんで採用が遅れたんだ?」戦闘機の戦いでP-40は次々墜とされていった。
一方の爆撃機も96艦戦のおつりが来ていた。M2機銃で送り返そうとしたが日本機は追尾を続けた。20ミリ弾を撃った。
「あれ?アタラネェ」と操縦士が言った。そうこうしているうちに敵が多量に撃って来たので左急旋回で避けた。
「糞もっと接近が必要か!なら照準器なんて見ないでこの肉眼を信じて落としてやる」B-17は膨張してくる。ここだ!20ミリ弾を発射した…。いや発射しようと思ったが弾切れだった。そのため9ミリ機銃しか出なかった。
「畜生!」呪詛をはき捨てたが時間は戻らない。他の操縦士も同じような過ちを起こしほとんどが20ミリ機関銃を放てなかったのである。それどころか厚い防御機銃でほとんどが落とされた。
結局24機中墜ちたのは3機のみだった。この21機が襲い掛かってきた。
「対空戦闘初め!」待ち構えていた防空指揮者が号令を出すと、下仕官が指揮棒を振り回しながら甲板を駆け巡った。
「危ない、輸送船がやられる!」気づいたときには輸送船が襲われてた。水柱がダダンと立ち上った。
10分後輸送船は1隻やられたにとどまった。幸い上陸を有る程度終えていた。しかしそれども水兵含めて500名が死亡した。さらには地上にも落とされたため300人が負傷した。だが軍艦の愛宕が2発受けて火災を発生して中破している。
ただしB-17は21機中追い討ちなどもうけ逃走できたのは6機でほとんどの機体に9ミリ機銃による穴がバコバコと開いている。P-40は29機中16機が撃墜された。
日本側の航空兵力の被害は艦戦21機にとどまった。また肝心の搭乗員も11名が救出された。
もちろん日本軍は作戦を緩めるはずも無くさらに1個連隊を上陸させた。そしてチハ戦車を4輌陸揚げした。瓦礫を踏み砕きながらチハは内地へと向かっていった。
「カリフォルニアの最南地方に布陣しているわが国の第1海兵隊はどうしている。北の陸軍は」ルーズベルトは反分冷静さを取り戻し、少々身震いが多いが話の口調はやや定まってきておりいつもの大統領である風格を取り戻してきていた。
このしつもんにこたえたのはマーシャル参謀長だった。
「第1海兵隊はあくまでも日本軍の展開を待つでしょう。奥地に入り込んだところで撃滅です。陸軍のほうもそうするでしょうが、深刻な問題があります」と告げた。
「ほう深刻な問題とは…飛行場か?」と先ほど入ってきた報告を思い出したルーズベルトは早口で聞き返した。
「はい。8ヵ所の飛行場が落下傘部隊により占領/破壊工作されています。さらにこのうち2ヶ所に合計で新鋭のF6Fが40機配備されていたのですが、恐らく全て破壊されたと思います」
「落下傘兵力の規模は?」
「合計で200名~300名と思われます。さほど多くは無いでしょう。奪還の件は他の飛行場部隊で爆撃するのは得策ではありませんので陸軍で再占領するのが望ましいと思います。ただしこの場合小規模ながら兵力を引き裂く必要性がありますので…」
「ふむ…」ルーズベルトは困りきったような顔つきになった。
そこに海軍関係者が入ってきた。
「失礼します」
「おお、君かちょうどいいところにきてくれた」
時間はようやく8時を迎えた。朝の明るさは瓦礫の容貌を露わにした。
「敵影見ゆる、距離3万メートル」越後が敵艦らしきもの物を捕らえた。
鴨田は
「さあ神なくしとしようか」とつぶやいた。
機動部隊はこれを受け爆弾を魚雷の改装にかかった。
「敵さんもわざわざ近場に殺されに来無くてもいいのにな」と源田が言うと山本が笑い飛ばした。
「速く戦争を終わらせてくれと懇願しているのだよ。最もそう思ってほしいのはアメリカ国民だがな」山本は民間人の戦意喪失が一番の武器と思っていた。
「陸軍が97式特型滑走路の整備に必要な場所が確保できたそうです」と報告が入った。
「よしよし。これで制空権はしばらく安全だ」
アメリカ海軍の船と思われた艦艇は監視艦2隻と魚雷艇5隻だった。駆逐艦とかと接触しかけたら知らせよという命令のもと出撃した小部隊だった。また小規模な戦力なら撃滅しろと言う任務も含まれていた。
機動部隊の偵察機が確認した。小部隊と判明したため魚雷を使う必要はなしと判定した。大型巡洋艦が迎撃に向かった。
戦艦越後も射撃をしようとした。
「待て。敵はまだ気づいていないのではないか」と鴨田が言った。
「そうですね。もう少し接近してから射撃を行いますか」と察した重徳が聞いた。
「そうしよう。2万5000メートルからだ」
風速と敵艦の速度をすばやく計算した。そして砲弾到着場所に着く時間と敵艦の速度から考えた到着時間の計算をした。
「ヘイ!向こうに見えるマストはジャップのか?味方のか」
「この場所にいるのは敵じゃないのか。さっき偵察機みたいなの飛んでなかったか」
「そうとなりゃあさっさと逃げたほうがいいような気がするぞ」事態の深刻さを実感し始めた米軍は逃げ出したがそこが距離2万5000メートルの地点に入っていた事など知る由も無かった。
越後と巡洋艦が主砲を撃った。
「ほら見ろ!敵さんが撃ってきたぞ!!」と砲弾の飛来音を聞いて半絶叫気味に言った。
しかし砲弾の水柱が前方に来たとき隣の魚雷艇が爆発した。監視艇も爆発飛散した。副砲が第2次として飛んできた。さすがにこの距離では正確さにかけるが動きを止めるには十分だ。
「オー神よ!われを助けたまえ」神に祈りだしたがそれは自分の体と共に吹き飛ばされて消えていくのであった。
重油のまくと紅の炎が海面に残り生存者は遂に確認されなかった。
「そら早く敷け!」陸軍は97式特型滑走路を設置し始めていた。これは木材をつなぎ合わせたものでタイヤがなくても飛べるようになっていた。2本の丸太のレールの上に滑る材質がある。機体をこの上に設置して後方の火薬式の射出器を使う必要性があった。角度を利用し約100メートルの滑走を行った後に飛び出る。しかしギリギリの速度のためエンジンを常に最大にする必要があった。
着陸はなんとタイヤではなく橇が下についているためこれで着陸するようにとされていた。当初は速度の出すぎでひっくり返ることが懸念されたが綿密な研究の末なんとかそれを防ぐことが出来た。また海面に飛び込んでもある一定の時間は浮いていられる構造となっていた。
火薬はあまり必要とせず、予備の滑走路でも出来れば使用する必要が無くなる。橇はすぐに取り外せる。
この日アメリカ軍は射程内の南西海岸の残存航空機による攻撃を行ったが機動部隊と97式戦闘機により大した成果が挙げれなかった。飛騨に爆弾1発と空母加賀に至近弾、巡洋艦三隅が大破するという被害で澄んだ。97式戦闘機が12機破損したが、操縦員は幸いにも全員無事で落とした数のほうが多かった。
米軍は早急に北の航空兵力の転用を求めた。
この日、近衛師団と機甲軍の1部が上陸し橋頭堡を築きあげようと必死に進撃したが後方で待ち構えていた州兵が死に物狂いで町への進撃を食い止めた。
西海岸は文字通り炎上し紅に染まった。アメリカ国民はクリスマスイブの日にこの惨劇が早く終わるように願うしかなかった。
次回の話と今回の話をあわせて書くつもりだったんですが、様相外に長くなってしまったので分けます。