大西洋の脅威
アメリカ海軍は今現在回復に向かいつつ前海戦で日本軍の艦隊に大損害を与えた。しかしながらその戦いで消耗した損失をいまだ回復できないでいた。
来年の1月に正式空母までに4隻建造、護衛空母12隻の建造が予定され、戦艦なども来年4隻が新たに作成される予定である。
艦載機は新型機が完成している。F6Fヘルキャットだ。既に量産体制に入っており次の海戦には参加できる。
「F6Fの性能はどんなものだ?ケリー」ここはアンカレッジだ。前回97式大艇に爆撃され飛行場が大破し機体もほとんどがやられてしまっていたところだ。しかし、ここで米軍の力である。2日で瓦礫処理を終了させ滑走路を小型ながら完成させ、100機程度を1週間で飛ばせれる滑走路を作成していたのである。
海上交通網の重要保護地区としてF6Fが24機配備されていた。もちろんP-40/39/38やB-17などの機体が空襲される前とは打って変わって強力かつ巨大になっている。
「ピリー最高だよ。エンジンの調子がとんでもなくいい。おまけにこの操縦席安心するよ」ケリーが返答をよこした。安心するよといった操縦席は穴の中に入っているようで心強いといっていた。F6Fの後ろについている8mmもない鋼板は角度がよければ13mmさえ防げる。向上でこれを取り付けようとしたときドリルでは穴がほげず熱で溶接するしか方法が無かったという。これが実戦でどのような力を発揮できるかお分かりいただけるだろうか。
エンジンはF4Fの1200馬力の1,7倍くらいの2000馬力エンジンだ。日本機がすぐに火を噴くことに着目して、当て逃げが出来るようにと最高速度は650キロと速い。武装も12,7mm機関銃が6挺装備されている。ただし零戦とは比べると運動性が劣る。まあこの物語では登場していないが。
そのころ大西洋では…。9月30日
いきなり輸送船団の1隻が強い衝撃を受けた。
「くそやられたかっっ!!」いきなり船体が2つに裂けて破片が海に降り注いだ。早くもその船は左右に傾斜した。他の船団も右往左往しているうちに2番船、3番船も波状攻撃を受けて海のそこへ引きずり込まれようとしていた。前のめりに沈む輸送船の推進軸がプロペラを離脱させながらも空回しながら沈んでいった。
「駆逐艦!速くしろ!」と1番船の船長が最後に見たものはまばゆい白い閃光と火炎地獄だった。直後その船の舷側には水柱が立ち上り、そのまま船を海底へといざなった。
結局25隻の輸送船団は護衛の駆逐艦2隻中の1隻と18隻の輸送船を餌食とした。Uボートは満足そうに海中を最高速度で戻っていった。
「これを続けていけばいずれイギリスは物資不足となり、ソ連戦に全力を傾けられる」と装填手は満足そうに言った。
「東洋の猿にやられてる国などわれわれの敵で無い」と潜望鏡をさっき覗いて戦果に興奮していた男が「ソ連もその猿と手を組んでるよな」
「全く、全世界狂っちまったんじゃないのか。まともなのはゲルマン民族だけだ」と自身の民族を一番優れた種族という話へと話題を変えていった。
ルーズベルトは不機嫌そうに顔をゆがめて書類を見ていた。そこには潜水艦による商船の被害が書かれていた。
その数20隻。ただこれにはイギリスは含まれていない。ドイツの潜水艦の攻撃は熾烈で1月で20隻に及ぶ輸送船とその中身の物資や人員を消失させているのだ。その人員はカタリナ哨戒機で救助しているのだが、救えなかった兵も多く死者/行方不明者は既に130名を超えている。積荷の内容は330台の戦車、200機の航空機、3000両の車輛もの物資が消えているのだ。
イギリスの輸送船は恐ろしいことに100隻の船舶が沈められていた。
これを野放しにしていればいずれ大西洋艦隊が戦力を喪失するような被害さえ出てくるかもしれない。現に1週間前は病院船が2隻、2級駆逐艦1隻その他小型船が20隻沈没させられている。
方法としては以下のものがある。
1、駆逐艦などを大量に大西洋に送り込む。
2、船団などを組みそれを水上艦などで集中的に護衛する。
3、2を潜水艦や航空機により護衛する。
4、2と3を両方利用する。
1は日本との戦いで消耗しているためその太平洋でも使用するため余裕がなく出来たものでない。4が一番優れている案だが航空機をどうやって大西洋全域をどうやって護衛できるのか知りたいものだ。そして潜水艦もドイツの潜水艦の深度についていけないという報告がある。
とすると2しかないのだ。もちろんイギリスの海軍力を利用する必要性がある。
そして10月5日に正式に編成された艦隊はどのようなものだったのか。
第1輸送船団 20隻 巡洋艦1隻 護衛駆逐艦1隻 駆逐艦2隻 駆潜艇1隻
第2輸送船団 18隻 護衛駆逐艦1隻 駆逐艦1隻 駆潜艇2隻
第3輸送船団~第6輸送船団 第2輸送船団と同じ
第7輸送船団 50隻 巡洋艦1隻 護衛駆逐艦2隻 駆逐艦2隻 駆潜艇2隻
第8輸送船団~第10輸送船団 第7輸送船団と同じ
第11輸送船団以降 予備編成中
合計 輸送船/商船310隻 巡洋艦5隻 護衛駆逐艦10隻 駆逐艦17隻 駆潜艇21隻
これにイギリス戦艦や潜水艦などが場合によって出動するという構造だ。アメリカは航空機を哨戒機、爆撃機、戦闘機を300機を割り当てている。
そして迎えたのが10月9日最初の輸送船団とUボートとの遭遇戦だった。
〇六一二 第4輸送船団をドイツのUボートが発見した。最初は輸送船20隻重巡洋艦1隻駆逐艦3隻と誤認した。Uボートは他に波状攻撃を仕掛けるため2隻がいた。
一方米軍は対潜レーダーを備えていなかったため発見できなかった。
〇六一七 各Uボートが魚雷を2本発射した。狙いは輸送船である。駆逐艦に1発が命中し沈没したが肝心の輸送船には当たらなかった。さらにUボートはおおまかな位置を捕らえられた。
〇六一九 駆逐艦が最初の射撃を行った。距離8000での射撃はさすがの駆逐艦でもある程度の正確さはある。Uボートは無電で本国に連絡した。
〇六三六 駆逐艦や巡洋艦の射撃が集中した。Uボートは潜行していたものの1隻の外殻甲板には亀裂が入った。
「沈めろ!敵はもう袋のネズミだ」輸送船団の艦長は徹底的に敵を撃砕せよと命令した。もうすぐでカタリナ哨戒機も来る。
しかしこのとき輸送船団という護衛のための艦隊ということを米軍は忘れていた。
いきなり輸送船が1隻火包まれた。周りに水柱がドンドンと立ち上った。
「アドミラル・グラーフ・シュペー?」ドイツの装甲艦である。
52口径11インチ (28.3cm) 3連装砲2基 5.9インチ (150mm) 砲8門 150mm砲6門
37mm対空砲8門 20mm対空砲10門 21インチ (530mm) 魚雷発射管8基が主要武装である。
それが襲い掛かってきたのである。本国に報告が来た時フランスの方で停泊していたアドミラル・グラーフ・シュペー が向かったという次第である。
そのとき重油の膜を出して爆発したのがあった。先ほどのUボートが海中で爆発したのであった。
〇六五五 アドミラル・グラーフ・シュペーの到来で本来の目的を思い出した米輸送船団は駆逐艦で弾幕をはって逃亡させようとした。護衛駆逐艦と3隻の輸送船がアドミラル・グラーフ・シュペーの砲撃で沈められた。
〇七〇一 カタリナ哨戒機と重巡洋艦が駆けつけてきた。さすがにポケット戦艦とでも言うべきアドミラル・グラーフ・シュペー といえども新戦力が来たと見るとすみやかに撤退した。
米軍は深追いをしなかった。
この戦いでドイツ軍はUボートを1隻沈没しアドミラル・グラーフ・シュペー は駆逐艦により1発受けていたためわずかな損傷を受けた。
アメリカ/イギリス軍は輸送船5隻と護衛駆逐艦と駆逐艦が沈没した。さらに2隻が損傷した。既にケルト海でありイギリス湾に入港した。
これが最初におきた輸送船団とドイツ軍との海戦だ。
アメリカ側はミッドウェー海戦で受取った報告書の中にあった日本軍の対潜艇と同等以上の性能を持った船を要求した。