激戦!!ミッドウェー水雷戦
最初に戦艦で砲撃を命中させたのは飛騨だった。長い砲身から発射された弾は完全に目標を捕らえていた。命中させたのはアイオワ級の戦艦ウィスコンシンだ。
しかし距離2万4000メートルであり、命中箇所は集中防御区域である。角度も悪かったらしく砲弾は弾かれて海中に大きな水柱を立てるだけとなった。アイオワ級戦艦は対45口径16インチ砲防御しかしていない。一方の飛騨の威力は18インチの貫通力に匹敵する。飛騨の主砲の初速は850m/sである。実史の大和が780m/sであるからそれよりはやい。重量は大和の方が250キロ重い1200キロの大和の砲弾運動力は365040000Jでる。それに対して飛騨は343187500Jである。
なんにせよアイオワ級戦艦の防御はサウスダコダ級戦艦の45口径16インチ砲の防御しかとられていない。これは対31064063Jということになる。頭が痛くなるほどの数値だが単純に考えて飛騨の主砲に対してウィスコンの舷側装甲が耐えれないのだ。しかし遠ければ速度は落ちるのは当然である。
鴨田は距離を縮めることを決意した。その時アイオワが砲弾を弾き出した。それはものの見事に戦艦金剛に命中した。金剛は巡洋戦艦だ。その分装甲が薄い。対36センチ装甲しかされていない金剛の甲板に命中した。煙突の根元に砲弾が突っ込む。夜中の海を輝かす炎がゴォ…と燃え上がった。金剛はものすごい振動に襲われた。
「損害報告!!急げ!」鈴木義尾大佐がすばやく聞く。
「25mm3連装機銃10番機銃座及び、甲板半径1メートル損傷。火災も発生」幸い火災は小さいものであり対空機銃座が潰れただけである。甲板も1メートル程度ならさして問題は無いだろう。そのため消化は3分とたたずして消され、速力も落ちていない。
しかし、その間敵の砲弾は左右に水柱を立てる。ただ水柱がたつだけなら大丈夫だ。外れているということである。
「越後被弾!」越後の舷側装甲に砲弾が命中した。が、さすが日本海軍の最新鋭艦である。被害は無かった。ただ越後は集中防御区域という絶対に破られないというほどの装甲を張っている場所が全体の5割8分しかなく後は半分程度か皆無である。
「敵艦、距離2万1000!」
「全艦砲撃開始」
とたん霧島が命中弾をたたき出した。2発の36センチ砲弾がミズーリに投げ飛ばされる。距離2万2000メートルである。さすがのアイオワ級戦艦とはいえこの距離では少々きつい。ただ榴弾だったためひがいはいまひとつだ。
「3時の方向よりより敵水雷戦隊が接近!」越後の報告員が1万メートル向こうに動く敵影を見て報告した。日本海軍の偵察力は夜でもかなり高い。
「数の差か…」鴨田は唸ったが来るものは撃破しなくてはならない。
「金剛、比叡は水雷戦隊を撃退しろ。」鴨田はそう命令したが戻ってきたときは敵戦艦の戦闘力を喪失させれるという自信があった。
「全艦2番艦を集中攻撃せよ」鴨田は2番艦に攻撃命令を出した。 ニュージャージーである。最初に命中弾をたたき出したのは戦艦越後であった。越後の砲弾は喫水線ギリギリに命中した。ここは魚雷に対するバルジが張られているが1トン超えの砲弾が入ってくるなど想定されていない。
ニュージャージーは巨大な揺れに襲われた。船体が細い巡洋戦艦であるそんなものを受けたら大損害を被る。が、アメリカのダメコンが死に物狂いの働きで船の浸水をなんとか食い止めようと奮闘した。
アメリカとて負けていない。
霧島に3発の砲弾を殴りこんだ。1発は舷側装甲を貫通し爆発した。2発目はマストを吹き飛ばした。3発目は2番砲塔に飛び込んだ。天蓋装甲を突き破ったその砲弾は火薬庫に飛び込んだ。
次の瞬間二番砲塔が吹き飛びシルエットが闇夜に浮かび出た。さらに舷側装甲が破れ浸水が発生した。霧島は徐々に右舷に傾いていった。
一方の水雷戦は日本軍が優勢に立っていた。アメリカは巡洋艦サンフアンが沈没、ジュノー 、サンディエゴが大破していた。駆逐艦もベンソン級は10隻が沈没し、3隻大破。シムス駆逐艦も1隻が沈没。
日本側は駆逐艦が3隻沈没。4隻が戦闘力喪失。7隻損傷。巡洋艦鈴田が第2主砲使用不能というだけだった。
さらにこの時―――――。
綾波、暁型9隻が距離1万にまで接近した。巡洋艦フリトンが暁に砲火を浴びせた。魚雷発射管に命中し台場発を起こした。たちまち暁は炎に包まれた。
それを見るなり三隅が20cm砲を10発撃ち込んだ。放物線を描き見事に6発がフリトンに命中した。駆逐艦に毛が生えた程度の装甲しか施されていない軽巡洋艦である。たちまち大火災を起こした。しまいには浸水多量で轟沈した。
綾波型駆逐艦がいっせいに魚雷を6発ずつ放つ。計48発だ。距離1万メートルで砲弾よりずっと魚雷は遅い。
しかし48本も一斉に放たれては何発かはほぼ確実に当たる。白い跡すら残さず魚雷はぐんぐん進んでいった。巡洋艦リノは迫ってきた綾波型駆逐艦に砲撃を浴びせていた。その時砲弾とは違う水柱が立ち上った。右舷に2発命中した。巡洋艦は左右に揺さぶられた。まるで巨人が舷側を殴りかかってきているようだ。装甲がきしみ一気に傾いた。優秀なダメコンも2発の魚雷には苦闘した。さらには缶室に浸水した。
「総員退艦!」やもえず船を放棄することとした。
「くそジャップが!できるんなら俺も殺してみろ!」半狂いで呪詛をカッターボートの中で叫ぶとその言葉に返すようにカッター船の目の前に砲弾が落下しカッター船はぼろぼろになりながら転覆した。
さらに駆逐艦に1発命中した。動揺した駆逐艦は衝突したり航路をふさいだりして陣形が滅茶苦茶になった。そこに参戦した金剛、比叡による主砲が降り注いできたからたまらない。たちまち2隻が爆発し戦闘能力を一瞬にして喪失した。
その戦闘中燃え上がり絶好の目標となり最後に建造された金剛型戦艦である霧島はアイオワより徹底的に攻撃され前のめりになるように沈没した。命中した砲弾は実に21発を数えた。日本海軍魂を見せ付けながら霧島は将兵と共に海のそこに消えていった。




