英仏殲滅戦
英国・仏国が一日に次々日本に戦線を布告した。
〇二〇〇 二日になった時、戦艦扶桑が真珠湾口にて砲撃を開始。真珠湾の燃料タンクが吹き飛んだ。一,二番主砲弾は焼夷弾を使用している。時代遅れの一四インチ砲だが燃料タンクという薄っぺらい鉄の缶などどうと言うことは無い。
重油が流れる。「第六・五主砲ドッグを狙え」閃光…。空気をきりさく砲弾の音が真珠湾の悲鳴に聞こえる。ドッグは粉末化するように崩壊した。硝煙が周囲を覆い隠した。「第三,四主砲湾口の設備を破壊せよ」クレーンが吹き飛ぶ。資材置き場などが紙細工のようにに飛んだ。
燃料タンクのガソリンなどが燃えて、真珠湾を照らしてくれる。そこに主砲弾が叩き込まれる。
湾内の米軍駆逐艦などに米軍兵士が動こうとしたが、すでに火に包まれていてただ逃げ惑うしかなかった。重油に引火した。重油は燃えにくい。が一度燃え出すと手が付けれなくなる。真珠湾の重油はものすごい勢いで燃え始めた。
米軍兵士が次々飛び起きて消火などに当たるが、いたずらに死傷者を増やすだけだった。陸は燃やし尽くされ、ドッグや湾は徹底的に破壊され、海軍の艦艇が続々と破壊されていく。真珠湾は地獄となった。軍設備の建物が吹き飛び瓦礫と化していく、湾ではクレーンが針金のようにひしゃげ、倒れる。燃料タンクは赤々と燃え、船は沈む。何もかもが破壊されていく。何もかもが…。
扶桑は主砲弾を一体何発叩き込んだのだろうか。昼間のような明るさを思わせる真珠湾を艦長や船員は眺めていた。これほどの戦果を挙げているのに、どこかどこか悲しそうだった。
「艦長、自沈の用意できました。既に潜水艦が到着しています」「うむ、総員退艦」
扶桑はこの日から大日本帝国より除籍された。そう殴り込んだら底で沈ませる予定だったのだ。しかしただ沈ませるのではない。地獄となった真珠湾口の入り口に沈ませ、復興に時間をかけさせる為だ。
潜水艦が扶桑の乗員を収容した後、扶桑に向かい雷撃を行った。扶桑は自沈していってるが、確実に沈めるためである。白い航跡が扶桑に伸びて行き水柱が立った。一本、二本、三本と魚雷を受けた大日本帝国の象徴の一つである戦艦扶桑は、真珠湾に沈んでいった。
ソビエト連邦では心の底から湧き出てくる共産主義の夢を叶えようとする男が笑みを浮かべていた。。
「スターリン閣下。準備が整いました」
「これで中国を我が物にできるな。最も真の目的は他にあるが」とスターリンが微笑んだ。日本はこの日のまでに日ソ不可侵条約を締結していた。これはソ連側が始めた交渉であった。何か裏があるような気がしたが一国でも多くの敵を作りたくない日本にとってはうれしい限りだった。
また中国への侵攻を共同で行うことも計画されていた。
ソ連軍百万名を超える三個方面軍に加え、大量の火砲と戦車を千単位が一斉に国境を超えてきた。共産党軍は状況を理解する前に次々なぎ倒されていった。日本を対峙する事になると意気込んでいた共産党軍はソ連の侵攻に理解を示せずにいた。
ソ連は日本が裏切るような動きを見せたときのために四〇万の兵士と戦車一〇〇〇輌を満州北部に貼り付けていた。スターリンらしいやり方である。
動きようが無いアメリカは海軍戦力の補充に乗り出していた。
日本軍の次の目標は資源地帯の確保。並びにその地域の英仏両軍の殲滅だった。
日本海軍は空母二隻を使用しフランス領インドシナを爆撃し制空権を掌握した。さらに陸軍は二個師団を上陸させた。一五〇門を使用し拠点を破壊しインドシナ東部を一ヶで占領した。陸軍が西部に侵攻を行っている間に日本軍は飛行場を建設し陸海軍の航空機を配備した。これにより西部攻撃も比較的容易なものとなり、フランス軍を年が変わった一月末に降伏させた。
1月1日。戦争が始まっての初の正月だ。来年この雪が降ってるころに戦争は終わっていれば良いんだが…山本五十六はそんなことを思いいつもの居酒屋に向かっていた。
二月になり戦艦越後が完成した。
この間日本は陸海軍共同制作機九六式戦闘機を作成した。落下式増槽という画期的な物を使用する事により航続距離は二〇〇〇キロにも達し、速度も四五〇キロを超え同時期の戦闘機と比べても遜色ない物だった。さらには背面装甲版を装着している。
日本海軍はこの新鋭機と九六式陸上攻撃機で爆撃隊を編成し台湾を経由して、米国がフィリピンに持つクラーク・イバなどの飛行場を爆撃して周り、軍港をも攻撃し壊滅させた。 これによりフィリピンの制空権・制海権を日本海軍は完全に掌握した。
さらに日本はマレー半島に上陸作戦を行うことを決行した。台湾では南方作戦のため戦艦越後と長門などがいた。
2月15日に上陸に向かう輸送船団が白い航跡をひきながら、二〇〇〇〇名の兵士と戦車や火砲などを運んでいた。
だが同日海軍の潜水艦よりイギリス国籍の艦隊がシンガポール周辺にて航行中という報告がきた。これを聞いた日本軍は台湾に駐在している越後と駆逐艦四隻で高速打撃戦隊を編成し派遣した。このままイギリス艦隊が北上すると揚陸が終わっていない輸送船が物資と共に沈められる可能性があるからだ。無論英国艦隊の狙いはそこだ。
2月16日〇五五〇 爆音が響いている。ここは 元山航空基地だ。マレーに迫る英国部隊を撃滅すべくインドシナから飛び立とうとしていた。
九六式陸攻二六機(魚雷装備一七機、爆弾装備九機)が出撃する。さらに護衛として、九六式戦闘機三六機を投入される。この方面に配備される最大の戦力である。
この時、台湾から出港した戦艦越後と駆逐艦四隻がこの時マレーまで二〇〇キロという地点まで来ていた。
〇六〇〇 マレーに迫る艦隊を発見したと偵察機からの返信が来た。これを受けると滑走路で爆音を上げる大小六二機に約一五〇名ほどの熟練搭乗員が乗り込みマレー沖へと飛び立った。
〇六二〇 「もうすぐでジャップの猿どもに制裁が下せるな」「猿の世界に法律何ザねーよ」「そうだった」と英国戦艦の上で兵士がのんきにしゃべっていた。もちろん緊張をほぐすことを狙ってもいる。
〇七〇〇 戦艦越後が遂にマレー半島が見える位置までに接近した。戦艦越後は今回航空機が打ちもらした敵艦隊を叩き潰すのが任務だった。
航空機で戦艦が沈めれるはずがない。その常識が覆るとはまだ誰も知らなかった。
英国艦隊が日本の航空隊を発見した。
「総員対空戦闘用意!」艦載機飛ばせ。英国艦隊の内容は次のとおりだ。
戦艦 ネルソン レパルス
空母 アーク・ロイヤル
駆逐艦 エレクトラ テネドス エクスプレス ヴァンパイア
戦艦ネルソンは戦艦長門と同じく世界のビッグ七と呼ばれたものである。(世界のビッグ7 日本は長門級二隻 イギリスはネルソン級二隻 アメリカはコロラド級三隻 計七隻)
駆逐艦ヴァンパイアはオーストラリア海軍の駆逐艦だ。
アーク・ロイヤルは艦載機六〇機で速力三一ノット。排水量は二二〇〇〇トンと意外に少ない。また防御力のほうは軽巡洋艦の主砲や二〇〇キロ爆弾にもたえれる用に作られている。
そのアーク・ロイヤルから三六機の戦闘機が迎撃にあがった。艦載機はグラディエーター、速力四二〇キロほどで武装は七,七ミリ機銃四丁の複葉機だ。空母に対し艦載機は旧式だった。
そして数分後空中戦が開始された。イギリス搭乗員は一枚翼であることに若干驚きながらも、九六式戦闘機を攻撃した。
だが九六式戦闘機は予想外に軽い動きを行った。そして九ミリ弾が容赦なくグラディエーターを襲った。グラディエーターも反撃するが装甲板を供えている九六式戦闘機はものともせずに、クルリと旋回しその機を撃墜する。速力で劣る
そしてイギリス戦闘機は三六機全てが海にダイブ又は空中分解して全滅した。「なんてことだ」イギリス水兵が叫んだがもう遅い。
日本攻撃機が空を覆った。
九六式陸上攻撃機の爆装部隊九機はすべて空母を攻撃、魚雷装備はもちろん戦艦狙いだ。対空気銃が唸る。勢いあまった九六式戦闘機が機銃掃射をかける。
ネルソンに近づいた雷撃部隊が一機まともに機銃を受けて黒煙を吐き出した。だがその機体は落ちることもなく、引き返す様子もなく真っ直ぐにこちらに向かってきた。
このままでは衝突する。対空機銃の束がその機体に集中したが遅かった。陸上攻撃機の乗っていた搭乗員達は覚悟を決めたのかネルソンに突入した。
轟!!何が起こったかわからなかった。艦橋がそのまま吹き飛ばされたような感じだ。船員は閃光で目を痛め爆風で吹き飛ばされた。火災が起こった。
「突っ込んでくるなんておかしいだろ!!」ネルソンの船員は地獄の火に燃やされないように水をかけた。しかしさらなる危機が迫ってきた。艦橋が吹き飛ばされて操舵が不能となってしまったのだ。。
上空から二機が迫ってきた。一〇〇〇メートル前方で魚雷を放すと急速に機体が浮き上がった。白い尾を引いて魚雷がネルソンに迫った。轟音を立て水柱があがる。命中した場所は左舷艦首と第二砲塔の下部だ。艦首はどの船でも浸水に弱い。たちまち大量の海水が入ってきた。「急げっ、早くしろ!」一致団結で毛布などが運ばれて防ごうとする。
しかし上で火災艦首から浸水し左に傾いている。こんな状況でまともな対策など出来ない。とどめを刺さんとばかりに六機の陸攻がネルソンに雷撃を敢行した。四本の水柱がネルソンのマストの高さを超えると、急激に左に傾き爆発しながら沈んでいった。
空母アーク・ロイヤルは現在二発の爆弾を交わしている。しかし三分前に受けた至近弾でスクリューが痛んだらしく速力が二九ノットまでに低下した。「右舷 斜め方向より爆弾です」「取り舵四〇度」アーク・ロイヤルは華麗にその爆弾を交わしたがそれは罠だった。
日本軍は先読みをしていた。五機が一斉に爆弾を投下した。八〇〇キロ爆弾が二発甲板に命中した。飛行甲板はめくれ上がりそこから炎が噴出した。火山のように炎が吹き荒れ火の粉がシャワーのように右や左に流れ兵士たちに降りかかる。
「格納庫が危ないです」「くそ火薬庫に注水だ。急げ!!」火薬庫に水が入った。アーク・ロイヤルは沈没こそ免れたがまともな作戦は不能となった。
そして二〇分後、魚雷や爆弾を全て使用した日本は帰路に移った。
日本側の被害は九六式戦闘機四機墜落 九六陸攻は五機が未帰還で四機がひどく損傷した。
イギリス側はネルソン轟沈 アーク・ロイヤル大破 駆逐艦テネドスが機銃掃射で二〇人が死亡し三七人が重傷を負った。アーク・ロイヤルとテネドスはシンガポールに向かった。
レパルスと駆逐艦3隻はシンがポールに向かわず単独で侵攻した。
そして〇九〇〇 「敵戦艦発見 レパルスと思われる」越後の測距儀で確認された。「距離は三六〇〇〇メートル、方角は右三〇度」「うむ」艦長はうなずいた。この艦長はそう嶋田である。
「三二〇〇〇をきったら撃て」「了解しました」越後の一六インチ砲が三〇度方角を向いた。「距離三二〇〇〇です」「よし仰角三九度撃て」閃光が甲板を覆った。長門より強力な火砲が放たれた。
レパルスの艦長フィリプスはこの砲撃に驚いた。何しろ敵の主力艦艇はいないと思っていたのである。レパルスの四三口径三八センチ砲では対抗できない。
レパルスは双方の距離を縮めた。こちらの射撃が効く位置まで迫るのだ。
「近弾三〇〇メートル」「照準やり直せ」「砲術長次は当ててみせよ」嶋田の声に応えるように砲術長は指揮を行う。「仰角三六度撃て」各砲塔から三連中二発が撃たれた。しかしこれはレパルスのはるか後方に行ってしまった。「三五度に修正だ。撃て」三発の弾が放たれた。レパルスは何度か射撃をしていたが一向に当たらなかった。
そのとき強い揺れを感じた。越後の砲弾が甲板に直撃したのだ。レパルスは巡洋戦艦だ。つまり攻撃力は戦艦だが防御力は巡洋艦と大差ないのだ。レパルスの甲板は七六ミリこれでは話にならない。大火災が起こった。そして一度捕らえた艦を日本が逃すはずが無かった。九門からそれぞれ砲弾が放たれた。
もちろん弾は拡散していくので全てが命中するわけないがそれでも四発が命中。この時の距離は二三〇〇〇だった。この距離なら四五センチ以上の装甲が突き破られる。レパルスは主砲装甲が三〇〇ミリでそれ以上に厚い装甲部位はない。左舷に次々砲弾が命中した。 越後の砲弾が紙細工のようにレパルス装甲を突き破るとそのまま火薬庫に入り込んだ。後はどうなったかなど書くまでも無い。
駆逐艦二隻は砲塔を吹き飛ばされ沈んでいくレパルスを背に逃走した。
その日ラジオでは大本営が華々しく戦果を伝えた。
次回三月二七日 更新予定