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青春vs 校則

作者: Reanata
掲載日:2026/04/21

公募用に書いた2000字程度の短編小説です。

私の学校を含め、世の中の中学校のほとんどでは学校内でのスマホの使用は禁止されている。私の学校の場合、使っているのを見つかったら問答無用で生徒指導行きだ。だが、校則をばれないように破ってみるのも青春なんじゃないか、なんて思っている自分がここにいる。

 私はクラスでも目立たないほうだ。この女子校の、女子だけの世界の序列の上位に入ることよりも、趣味や勉強のほうが大事。生粋の帰宅部がモットーだ。恋愛なんて二の次。自分にチャンスは来ない。そう確信していた。

ただ、そんな私にも、この生活に突然色が添えられた。引っ越してもう会えないと思っていた小学生の頃の男友達と偶然再会がかなったのだ。連絡先を交換し、気づけばほぼ毎日連絡を取り合う仲。

 まさかこの私が恋心を抱くはずがない。

 間違っていた。今日、私は彼と面談の待ち時間に、メールで話そうと約束したのだった。彼は校外学習の休み時間。私は先生がいつ来てもおかしくない空き教室で。信じられないことに、私は危険を冒してでも話していたいという沼に、すでにはまっていたのだ。


 ほとんどの生徒が帰った学校は静かだ。いつもの喧騒はどこに行った、そう静まり返った廊下で叫びたくなる。だが、誰もいない、電気もつけていない空き教室は意外と居心地がいい。窓際の席。午後の光がこの端一列だけに降り注いでる、特等席だ。鞄を机の横に置き、プリントの入ったファイルを机に置き、勉強道具と筆箱を無造作に机に散らす。そして私は、カバンの外ポケットからスマホを取り出した。机の上にそっと置くと、その黒々とした液晶が日の光を受けてギラリと光った。下の階には先生がいる。見つかったらなんて言われるだろう。真面目で静かな生徒だったのに、と失望されるか。あの恐ろしい生徒指導の先生には怒られたくない。言い訳を考えるが、本当の理由なんて言えっこない。

「どう?そっちは大丈夫そう?」

 スマホの黒い画面がぱっと切り替わった。その通知をタップする。彼からだった。私はもう一度先生が来ていないかを第六感くらいまで含む自分のフル感覚で確かめ、彼にメッセージを返す。

「大丈夫そう。午前中お疲れ様」

 絵文字を添え、送信する。すぐに既読がつく。

「ありがと。そっちもお疲れ」

 お菓子の絵文字がくっついて返ってくる。ピンク色のドーナツの絵文字だ。

「おなかすいた?」

 聞いてみると、今食べているところだと返ってくる。何食べたの? と聞くとお弁当だという。職場体験をやっているらしいが、体験先ではその店主がスマホ使ってもいいよ、と融通をきかせてくれたらしかった。彼の手のピースが映ったお弁当の写真が時間差で送られてくる。手しか映ってないのに、どこか彼が照れているのが分かった気がした。

「おいしそうだね」

 そう返す。あまり私と変わらないようなお弁当だ。ごはんが敷き詰められ、野菜と鳥のつくねだろうか、が端に寄せられている。そしてふとーーーー話していると、思わず口角が上がっていることに気づく。

「なんか学校なのにあおと君と話してるとにやにやしちゃうんだけど」

  汗付きの笑っている絵文字を選択。思わず打ち込んだものを、気づいたころには既に送ってしまった。

「はあ……まったく、なにしてんだろ!」

 そう独りでつぶやく。こんなことを言うとき、いつもだったら携帯を投げ出している。今は投げ出す代わりに、体温で生暖かくなった表面とその奥の機械の冷たさの境界にある携帯を握ったまま、机の中にその手を勢いよく突っ込んだ。

 ぐしゃり! 

 手を突っ込むと手に紙の荒い感覚が走る。慌てて手を引っ込め、机の中を見ると、そこにはプリントが一枚、奥のほうがつぶれていた。

 ああ、つぶしちゃった。その紙をとりだし、しわを伸ばそうと試みる。しかし、開いて内容を見た瞬間、私は思わずため息をついてしまいそうになった。なんでここにこんな紙があるのよ。神様が仕組んだ、何かの警告? そう言いたくなる。その紙は年初に配られる、学校での「スマホ使用のルール」のプリントだったのだ。

 同時にスマホが振動した。膝の上に置いたスマホを再び手に取る。

「僕も」

 彼のたった二文字と同じ絵文字一つに、私は思わずふっと微笑んだ。口角の角度が尋常じゃないくらい上がっているのは自覚できた。だが、ここからなんて返せばいいのかわからないことに気づく。目の前の紙を睨む。しわの寄ったところに影ができている。あちこち不規則に折られた紙の上で、スマホの使用ルールの箇条書きはガタガタと歪んでいる。

私は携帯のカメラを起動した。そっとピースを作り、プリントと自分の手をカメラの中に収める。

 カシャリ。

シャッターボタンに指を滑らせると、特有の音が教室に響き渡った。それを添付して彼に送る。写真は容量がある。「あおと君」、彼のアイコンの下にゆっくりと送信中の青い線が伸びていく。

少し考えてから、私は文字を打ちこんだ。

「先生にばれたら、誰だって青春はあの手この手を使って楽しみたいんです、って言うわ」

「続きはまたあとでね」

 青い線が伸び切り、写真とともにその一言が送られた。既読がつく。反応を待つ前に、私はスマホをカバンのポケットに差し入れた。


読んでくださりありがとうございました。

引き続きほかの作品もどうぞよろしくお願いします。

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