砂利と猫 第2話
眠りについたのは覚えている。
だが、また一時半に目が覚めた。
そして――砂利の音が、家のすぐ外で止まった。
砂利の音が、家のすぐ外で止まった。
耳を澄まさなくてもわかるほど、近い。
窓のすぐ下――そこに“何か”が立っている。
布団の中で息を潜めた。
心臓の鼓動がうるさくて、相手に聞こえてしまいそうだった。
外は真っ暗で、街灯もない。
砂利の上に立つ影がどんな姿をしているのか、想像するだけで背筋が冷えた。
しばらくして、砂利がわずかに沈む音がした。
――ザリ…。
ほんの一歩分。
それだけで、僕は喉がひゅっと鳴るのを感じた。
次の瞬間、音が完全に止んだ。
静寂。
耳鳴りだけが響く。
その静けさが、逆に“こちらを伺っている”ように思えた。
どれくらい時間が経ったのか分からない。
やがて、砂利の音はゆっくりと遠ざかっていった。
足音は家の裏手へ回り、やがて聞こえなくなった。
安堵と同時に、全身の力が抜けた。
だが、眠れるはずがない。
布団の中で震えながら、夜が明けるのを待った。
朝になり、恐る恐る外に出てみた。
砂利の上には、猫の足跡とは明らかに違う、深く沈んだ跡が点々と続いていた。
人間の足跡に近いが、形が曖昧で、輪郭がぼやけている。
まるで、重さだけが残ったような跡だった。
その日の学校では、授業中に何度も眠気が襲ってきた。
だが、目を閉じると、昨夜の“止まった足音”が蘇る。
眠るのが怖い。
そんな感覚を、人生で初めて味わった。
夜。
僕は布団に入るのが嫌で、リビングでテレビをつけたまま時間を潰した。
だが、家族に「早く寝ろ」と言われ、結局いつも通り二十三時に部屋へ戻った。
布団に入っても、眠気は来ない。
目を閉じると、外の砂利の音が聞こえてくる気がした。
耳を塞いでも、心臓の音がうるさい。
眠れないまま、時間だけが過ぎていく。
そして――また一時半。
目を閉じていたのに、突然意識が浮上した。
その瞬間、家のどこかで“カチッ”と音がした。
センサーライトの音だ。
外灯が点いた。
誰かが、家の前に立っている。
布団の中で、僕は目を開けられなかった。
見てしまったら、戻れない気がした。
外灯は、昨日と同じように――消えなかった。
外灯が消えないまま朝を迎えた翌日、僕は学校で何度もあくびをした。
授業中に目を閉じると、昨夜の“止まった足音”が耳の奥で蘇る。
眠るのが怖い。
そんな感覚を、人生で初めて味わった。
放課後、家に帰ると、外灯は何事もなかったかのように消えていた。
父に聞いてみたが、「壊れてるんじゃないか」の一言で終わった。
確かに古いライトだ。
誤作動と言われれば納得できる。
だが、あの“止まった足音”だけは説明がつかない。
その夜、僕は二十三時に布団へ入った。
昨日よりは眠気がある。
目を閉じていると、意識がゆっくり沈んでいくのがわかった。
――気づけば、一時半だった。
まただ。
まるで体内時計が狂ったように、ぴたりと同じ時間に目が覚める。
耳を澄ます。
外は静かだ。
砂利の音はしない。
廊下も軋まない。
今日は大丈夫かもしれない。
そう思って、もう一度目を閉じた。
その時だった。
――ギシ…ギシ…。
廊下の床が、ゆっくりと沈む音がした。
家鳴りにしては重い。
誰かが、ゆっくり歩いているような音。
昨日よりも、はっきり聞こえる。
音は階段の方から近づいてきて、僕の部屋の前で止まった。
息を止める。
心臓の音がうるさい。
耳を塞ぎたいのに、塞いだら逆に近づかれそうでできない。
しばらくして、足音は離れていった。
だが、昨日と違って、階段の方へ戻らない。
家の奥――仏間の方へ向かっている。
仏間には、昨日猫がいた。
あれがまた入り込んだのかもしれない。
そう思いたかった。
だが、猫の足音はこんなに重くない。
床板が沈むほどの重さではない。
音は仏間の前で止まり、しばらく動かなかった。
その静けさが、逆に“何かがそこに立っている”ことを確信させた。
やがて、音はふっと消えた。
まるで、そこから“いなくなった”かのように。
朝になり、恐る恐る仏間を覗くと、昨日と同じように何もなかった。
猫の姿もない。
ただ、仏間の畳の一部が、わずかに沈んでいるように見えた。
気のせいだ。
そう思い込んだ。
だが、その日の夜――僕はまた一時半に目を覚ました。
そして今度は、廊下の足音が“僕の部屋の前で止まったまま、動かなかった”。
廊下の足音が、僕の部屋の前で止まったまま動かない。
その静けさが、逆に“そこに誰かが立っている”ことを確信させた。
息を止める。
心臓の音が耳の奥で跳ねる。
布団の中で目を閉じているのに、視界の暗闇がじわじわと濃くなっていくような感覚があった。
――ギシ…。
床板が、わずかに沈んだ。
誰かが体重をかけた時の音だ。
猫では絶対に出ない重さ。
その瞬間、背中に冷たい汗が流れた。
やがて足音は離れていき、階段の方へ向かった。
その後は何も聞こえなくなった。
朝になり、僕は恐る恐る廊下を確認した。
もちろん誰もいない。
だが、僕の部屋の前の床板が、昨日よりも深く沈んでいるように見えた。
気のせいだ。
そう思い込むしかなかった。
その日の放課後、僕は家の周りを歩いてみた。
砂利の上には、猫の足跡らしきものがいくつかあった。
だが、それとは別に、妙に深く沈んだ跡が点々と続いていた。
人間の足跡に近いが、形が曖昧で、輪郭がぼやけている。
まるで、重さだけが残ったような跡だった。
その夜、僕は布団に入るのが怖かった。
だが、眠らなければ明日が辛い。
無理やり目を閉じて、眠気が来るのを待った。
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