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小説賞に申し込む時は応募要項はよく読もう

作者: 和泉将樹

カクヨムでは『雑記』の一部として公開しましたが、ぶっちゃければカクヨムのコンテストではさほど気を付けなくても大丈夫なんですよね。

一方で『小説家になろう』は多種多様なコンテストが開催されてるので、より気を付けるべきだと思い、こちらは単独でエッセイとさせていただきました。


 書籍化を目指して小説賞に応募する人は多いと思います。

 私も一応放り込むことが多いです。

 まあ無理だろうって思いながらやってますが(ぉぃ


 で、今回はその応募前に気を付けるべきこと、具体的には応募要項についての注意事項についてお伝えします。


【著作権について(簡易版)】

 まず著作権、というものをご存じでしょうか。

 まあ、知らない人はほとんどいませんね。

 著作権とは、何かしらの創作行為を、それを記録するか、または他者に対して表現した時点で自然発生的に認められる権利です(無方式主義という)

 その一方で、これは財産権としての側面を持ちます。


 著作権は大別すると大きく二つに分類されます。


 一つは著作財産権(著作権法21条~28条の権利)。

 一般の人がイメージする著作権はおおむねこちらでしょう。財産権的な機能を持ち、財産であるため他者に譲渡することや許諾することも可能な権利です。


 もう一つが著作者人格権(著作権法18条1項、19条1項、20条1項の権利)。

 これは名の通り『人格』なので、他者に譲渡、あるいは許諾することはできません。ただし、契約で『不行使』の条項に同意した場合は、その権利は制限されます。

 また、『著作(財産)権』『著作者人格権』を総称して『著作権』ということも多いです。


 著作者人格権は『公表権』『氏名表示権』『同一性保持権』の三つがあります。

 公表権とは未公表の著作物を公表するかどうか決める権利です。小説賞に応募した場合は大抵、応募要項に従い、受賞時に公表することに同意したとみなされます。

 氏名表示権はその著作物の著作者としてどのような表示をするか決める権利。

 同一性保持権は、著作物の内容を変更させない権利です。

 前述した通り、他人に許諾するなどは出来ない(代理人の設定は可能)権利なので、これに関してはいかなる契約でも他人がその権利を使うことはできません。

 言い換えれば、この権利が有効なうちは、著作物に対して勝手に公表することも、その作者の名前を変えることも、その内容を(たとえ一文字、線一本だろうが)変更することも、著作者が拒否した場合は出来ません。


 そのため、実はこの著作者人格権については、契約で不行使を定めることが多いです。なぜなら、これがあると例えばイラストの明るさを調整するだけでも、ダメとなることがあるためです。

 まあ、軽微な変更(トリミングやサイズ調整)などはしても良い、とするケースもありますが。


 まあこちらは譲渡不可なので著作者人格権について、応募要項で言及されていることは極めて稀ですし、言及されているとしたら『著作者人格権の不行使』に同意したとみなす、とあるくらいでしょう。


 問題は著作権。

 著作権のその内容は非常に多岐にわたります。

 以下、漢字だらけになるのを承知で並べますと……。

 複製権、上演権及び演奏権、上映権、公衆送信権、口述権、展示権、頒布権、譲渡権、貸与権、翻案権などがあります。

 これに加えて著作隣接権というのもありますが、普通、小説には(特に公募小説には)あまり関係ないので割愛します。


【小説賞の応募要項】

 さて今回の主題。

 それは小説賞の応募要項では、応募作品が受賞した場合の著作権の扱いについて、予め定義されていることが多いのです。

 そしてそれは、応募した時点でその応募要項の内容に同意したとみなされ、受賞となった際にはその応募要項に則った契約が提示されると思われます。

 当然、同意している前提なのでそれについて異を唱えるようなことがあれば、それは契約違反(規約違反)になり、最悪受賞の取り消し(賞金の返還を含む)ということも起きえます。


 問題は著作権に関連する部分の記載が、小説賞によって著しく異なることが多いのです。

 どの小説賞がそれに該当するかについては、実際に応募要項を見てください。

 この後に、どういう見方をすればいいのか、簡単に記載します。


【二次利用に関する応募要項のパターン】

 二次利用とは、著作権法上は『翻案権』と定義される権利が主体で、著作物を使って新たな著作物を作り出す(翻案する)こと、わかりやすく言えば、二次著作物を作る権利です(その他頒布権や公衆送信権、複製権なども含まれることも)

 これは著作権者固有の権利であって、基本的にそれ以外の人にはそれは許可されません。なお、いわゆる二次創作物は全てこれに該当しますが、日本では特に慣習的に、それほど大規模に利用しない限りはそれを著作権法違反にはしませんし、あるいはガイドラインなどである程度二次創作物を作ることを認めていることが多いです。


 ちなみにこの『二次利用』というのは著作権の中でも最も利益を出す部分でもあり、コミカライズ、映像化、フィギュア化などなどのあらゆる元の表現方法以外への展開、または元の著作物に描かれていない展開(スピンオフ等)は全てこの『翻案権(二次利用権)』によって行われます。

 そのため、たいていの公式のキャラグッズなどは、二次利用料を翻案権を持つ相手(通常は著作権者)に支払うことで二次利用権を許諾されています。


① 特に記述がないパターン

 ごく稀にあります。

 この場合、応募時点では縛りはありません。


② 二次利用について、主催会社及び協力会社に優先権を付与

 あまり多くはないですが、このパターンがあります。

 著作者の自由度が高く、権利は守られますが、欠点として二次利用を行うための契約作業からそもそもの営業について、支援がありません。

 なので、著作者が二次利用展開したい場合は、その負担がかなり大きいです。

 ただしその分、二次利用における収入は、基本的に全て著作者が獲得できます。


③二次利用の窓口を主催会社に設定するまたは委託する

 こちらも著作者の自由度は極めて高いですが、二次利用の話があった場合は、必ず主催会社を通す必要があります

 ただ同時に二次利用展開についての作業を代行してくれることになります。

 その代わり、二次利用料から事務手数料を引かれる形になります。


④二次利用を独占的に許諾する

 独占的に許諾、とは契約した対象(通常は主催出版社)以外には許諾しないという意味です。つまり、コミカライズその他について、主催会社またはその会社が認めた相手以外が実施できなくなります。

 ここで注意が必要なのは、著作者自身すらこの制限を受けること。

 つまり、スピンオフを作成する、他のサイトに掲載するなどすら、基本的にできなくなります(※初稿で続編もダメと書きましたが、これは誤りでした。失礼いたしました)

 ただ、たいていこの手のはセットで事前の書面(メールなどでもたいていは可)による承諾を必要とする、とありますので、作者の自由度は①~③よりは少ないですが、著作者にとってのリスクはそこまではないと思います。

 また、著作権はあくまで著作者が持ってるので、二次利用料などを受け取ることができます。二次利用の窓口もやってくれるのが普通なので、独占的であることを除けば③に近いです。


⑤二次利用の権利を譲渡する

 この場合、二次利用の権利を相手に譲渡します。

 これによって何が起きるかというと、事実上その著作物について、それ以後ほとんどの自由を失います。作者自身がスピンオフの執筆をする場合も、相手からその許諾を受けなければできなくなるということです(※初稿で続編もダメと書きましたが、これは誤りでした。失礼いたしました)。

 著作者であっても、翻案権(二次利用権)を譲渡するということは、その著作物を使ってそれ以上何か新しい作品を作ることをする権利を、完全に喪失するということを意味します。

 そして、譲渡した場合は、たとえ元の契約が失効したとしても(何なら譲渡相手が倒産したとしても)著作者に権利は戻ってきません。返還されるには、譲渡契約書に譲渡した著作権の返還に関する条項が定められているか、または別途契約を締結する必要があります(もっともその場合は再譲渡でしょうが)

 当然、二次利用料を請求する権利も失います。 

 契約次第では払われることもあるでしょうが。

 また、二次利用を行うにあたって原著作者に確認する義務はなく、原著作者が反対する権利もありません。


【その他著作権に関する記述】

●出版権

 それ以外によく出てくるのが、出版権です。

 これは著作権法に定義があり、複製権と公衆送信権などを合わせて、当該著作物の出版(または電磁的手段、ネット等での頒布)行為を行うための包括的権利として定義されているものです。

 要するに出版を行う権利ですが(これ行う出版者を「第一号出版権者」という)、放送あるいはネットなどで公衆送信を行い頒布する場合(これを行う出版者を「第二号出版権者」という)も出版とされます。ただし、原則として必要と認められる以上の改変を行うことは許されませんし、改変した場合は著作者への連絡が義務となってます。


 出版権はどちらかという個人の権利というより、出版事業者に『設定』される権利で、著作権者は出版社に出版権を設定することを『承諾する』というのが法律的には正しいところです。

 また、出版行為に対して『専有する』と定義されているので、出版権を設定した場合、著作者であっても同一出版物を出すことはできなくなります。


①出版権の独占的許諾

 出版権は前述のとおり基本的に一つの事業者に『専有』されるものなので、設定した場合は自動的に独占的に許諾した状態と同じになります。


②出版権を譲渡する

 当該著作物の出版に関する権利を相手に完全に譲渡します。

 独占的許諾と、事務的にはほとんど同じですが、大きく違う点として、譲渡された権利は再譲渡などを出版社が行えるということです。

 通常は①と②の違いはほとんど問題になりませんが、例えば出版社が違う出版者に出版権を設定または譲渡するとしても、著作権者は口出しできません。


 ちなみに、出版権の設定は、基本的に著作物単位、それも一冊単位で行うのが業界の慣例の様です。

 つまり、続刊があったら、その都度出版権の設定について契約します。

 これは譲渡でもおそらく同じです。


●その他著作権

 他にも前述したとおり、著作権にはいくつもの種類がありますが、単純に小説を出版するにあたっては、普通は出版権以外は出てきません。

 あるとしたら二次利用権で、これのパターンは前述したとおりです。

 また、著作権を全てあるいはほとんど譲渡させるとなっている応募規約も存在します。

 この場合は、実質は当該コンテストで受賞した場合は、文字通り『作品すべてを賞金で売却する』と考えた方がいいです(印税をもらえることは多いですが)


【応募要項の書かれ方】

 では実際、応募要項のどこを見ればいいのかは……すみません、要項次第です。

 ただ、たいていの場合は『受賞作の権利について』『注意事項』『受賞作品の取り扱いについて』などのところに書いてあります。

 ごく稀に出版権の設定以外何も書いてないこともありますが、気になる場合は『二次』とかで検索すると引っかかることが多いです。

 そういえば、なぜか募集要項が画像で、文字検索できないところがあるんですよね。すごく不便。まさか検索させないためだろうか……。

 そして記載があった場合、そこにどう書いてあるかが問題になります。


●独占的許諾をする

 これはその字面の通りで、指定された対象に指定された権利を独占的に許諾、つまり権利を使うことを許すというものです。

 大事なのは『独占的』の部分で、これを行った場合、相手が認める場合を除いて、その他の者(人・会社)は、その権利を使用することはできません。これには、原則として著作者自身も含まれます(『著作者自身の二次利用は含まない』といった例外規定を設けることもある)

 ただし、大抵の場合は事前の文書等による確認で承諾されれば、問題ないとされることも多いですが。

 ちなみに、独占的の逆は『非独占的』で、これは、ゲームなどのコラボ企画などで、キャラクターの使用を認める場合などはこちらがよく使われます。


●帰属する

 こう書かれている場合は、譲渡することを前提としてる可能性が非常に高いです。ただ、『帰属』という言葉は法律用語ではないので、その定義は実質的にはかなり曖昧なものになってしまいます。とはいえ、注意が必要なのは間違いありません。


●移転する、移動する

 こちらは法律用語の意味合いがより強く、その意味は『譲渡する』と同義です。

 こちらも書いてあったら要注意です。


【最後に注意です】

 これらはすべて『応募要項』だけの話です。

 冒頭の繰り返しになりますが、応募要項には『応募した場合はこれに同意するものとします』とほぼ確実に書いてあり、実質の契約行為に相当します。よって、著作権の譲渡などについて書いてあった場合は、それに異を唱えることは契約違反に相当するとみなされ、受賞の権利そのものを失うこともあり得ます(定義上は応募要項を遵守していないため選考対象外、など)


 一つ安心材料を出すと、KADOKAWAはいろいろなレーベルがありますが、どのレーベルの応募要項も、独占的許諾を求めることにはなっていますが、権利の譲渡と読み取れる記載はありませんでした。

 また、カクヨム上で展開される他社主催のコンテストも同じ記述になっているので、著作権の譲渡を事前に同意していることにはなりません。


 ただし、カクヨム以外で他社が主催するコンテストはケースバイケース。 

 なので、必ず応募要項を確認し、自分が納得できる応募要項であるか判断してください。

 実際、いろんな小説賞でどういう定義になっているかについては、以下のリンク先にサンプルがあります。

 カクヨムの近況ノートですが。

 https://kakuyomu.jp/users/masaki-i/news/822139838229334387


 繰り返しますが、あくまでこれらは応募要項だけの話。

 実際には、受賞後に締結する契約書こそが最重要です。

 契約書は隅から隅まできっちり確認し、不安なら必ず専門家に意見を聞くようにしましょう。

 下手をすると、数百万円の利益をフイにする可能性だってあるんですから。


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