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出逢い2

「坊ちゃんいつも来てくれてありがとうねぇ、銀行の操作ってどうも苦手で」


「いえ、これが俺の仕事ですから。それと橘さん、流石にもう子どもではないので坊ちゃん呼びは......」


 集金に赴いた橘邸にて僕はお茶をご馳走になりながら橘さんのお話に耳を傾けていた。橘さんは僕がこの仕事を実家から引き継いだ時から、もっと言うなら小さい頃から知っている言わば"馴染み"のお婆さんだ。


「あはは、坊ちゃんがこーんな小さな頃から知ってるんだから難しいわねぇ。それに二階堂さんの所の息子さんだし」


「はぁ...参りました、降参です。坊ちゃんでも坊やでも好きに呼んでくださいもう」


 俺は諦めてため息を吐いた。それを見た橘さんは笑いながらお茶のおかわりを注いでくれる。ただの近所のお婆さんの家に遊びに来た孫みたいなノリだがこれもれっきとした仕事なのだ。ただ俺が"周り"に知られ過ぎていると言うだけで。


「それより坊ちゃん、はい今月分ね。それとウチの畑で採れたんだけどね、これも持って帰ってくれる?」


「......はい、確かに受け取りました。お、これはキャベツですか?いつもありがとうございます」


 お金と採れたてのキャベツを受け取り俺は橘さんの家を後にする。気付いたら小1時間ほどお邪魔してしまっていた。次の集金に向かうべく停めていた車に乗り込む。

 ふと助手席に放り投げていたスマホを手に取り、確認してみると着信3件、メッセージ7件ほど届いている。全てが怒らせてしまったあの子からの連絡だった。


『まだ話は終わってない』

『お家の用事が終わったら来れるでしょ?』

『ねぇ、さっき怒ったの?』

『なんか怒らせちゃった?』

『連絡待ってる』

『もしかして無視されてる?』

『仕事の合間でいいから話そう』


 えりなはサッパリした性格ではあるのだが、少しだけメンヘラ気質のある女の子だった。ギャルかつ幅広い交友関係を持つ天然の陽キャ。そんな彼女だがこんな一面があると他の誰が知っているのだろうか。

 俺は深いため息を吐きながら次の集金に向かうべく車を走らせて行った。

 その日の午後、俺は実家に訪れていた。家は町内のちょうど真ん中に位置している。敷地がとても広く何でもないような道すら、自分の家の敷地だったりで俺もあまり全容は把握しきれてない。

 大広間で相手の家族と見合い相手含めて顔合わせをしている。そうしてうちの母親と向こうの母親が世間話にのめり込んでいた。

 俺と言えば向こうの見合い相手に愛想笑いを浮かべるだけだ。


「それにしても二階堂さんの所の息子さんは本当にかっこいいわねぇ、それに理知的なお顔立ちをしていますし、お母様も鼻が高いんじゃないですか?」


「やぁね、お世辞でも嬉しいわ、ありがとう。未だに女っ気一つもなくてとても困っていたから、こうして素敵な縁に巡り会えて元気もとても喜んでるわ」


ね?と圧を込めた笑顔を母親から向けられて僕は鷹揚に頷き返した。もちろん笑顔100%である。


「もちろんです。今日という素敵な日に感謝を」


 それを聞いた両方の親はイケると思ったのか、若い者同士、庭でお喋りしてきなさいと放り出された。俺が1番苦手な時間がこれだった。何故なら向こうには俺に興味があるわけではなく打算ありきという前提があるからだ。


「2人にされちゃいましたね、あはは」


「そうですね」


「元気さんって何かスポーツとかされていたりするんですか?すごく体つきが良く感じられるのですが」


 相手の女性は興味ありげに俺の体を見ながらそう尋ねてくる。悪気は無いのだろうが不躾な視線に少しばかりの嫌悪感を覚えた。

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