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20代最後のゲイのBL短編集  作者: 赤井獺京
『ラストクリスマス』

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『ラストクリスマス』2

世界の状況は僕が子供だった頃と比べると大きく変わった。10年前にアメリカの大統領が変わった年に日本の総理大臣も変わったことがある。


アメリカは初の女性大統領でレズビアンだった。ミカエル・カーソン大統領だ。彼女は自分のセクシャリティーを公表したうえで、公約にアメリカ全土での結婚の平等を掲げて当選した。


日本の村上総理大臣は当時、当選後に息子があの有名なトランスジェンダーのインフルエンサー『カエデ』だと公表した。


カエデはトランスの手術を父の後押しで行ったという。性的少数派に理解のある人間がトップに立ったことで同性婚が法律で認められるのは時間がかからなかった。


世界はそんな感じで変わっていった。


身内や自分たちがマイノリティ側だからと法律を変えるのはどうなのかって批判は沢山上がった。だけど国のトップの鶴の一声で世界は簡単に変化していった。


そして、良くも悪くも世界は多様性化していった。多様性を容認しすぎたかもしれない。同性婚が認められると、次は私たちもと少数派の人間が騒ぎ出した。


次第に同性婚だけじゃなくて、動物や無機物、二次元キャラクターとの婚姻、多夫多妻制も受け入れられるようになった。次から次へと、ブラックホールみたいになんでも吸い込んで多様性の輪は広がっていった。


その反動で人口減少は進んだ。男女間でも子どもを持たない派の家庭が増えた。


少子高齢化はますます深刻な問題となっている

誰かを否定すること、何かを否定することは「完全な悪」とされていった。自由や多様性があらゆる面で拡張された結果マイノリティだった人々は生きやすくなったと思う。


でもマジョリティー側だったはずの、いわゆる普通だった人がマイノリティ側になった。

争うことも今では「多様性」だからと安易に否定できなくなった。


INC計画にしても、「多様性の一環だ」とする意見も上がっている。

自分に関係のない事なら多様性だから仕方ない、と簡単に片づけてしまう。


世界はそんな感じで腐っていった。

     ***

「来週でアベル出会ってから一年記念だけど……初デートの場所にいくのとか、どうかな?」と彼が頬を赤らめながら言ってきた。


僕はそれが可笑しくて、飲んでいた珈琲を吹き出しそうになった。彼が照れ臭そうに言ったその言葉に僕は驚きながらも、思わず頬が上がるのを止められなかった。


「覚えていてくれたんだ。いいね、初デートの場所」と僕は言った。


「あの時言ったホテルも……」とカインは僕の服の裾をつまみながら、もじもじと口にした。


「今さら何を恥ずかしそうに……最高だね、それ」


記念日を覚えるのは苦手だとカインは言っていた。その彼が自分から記念日の提案をしてくれるなんて、胸の中が温かくなった。

***

初めて出会った日に僕たちはホテルに行った。そして告白をした。ホテルに行こうとしたのは彼で僕は健全なデートだけのつもりだった。


告白したのは僕の方からで、彼と会って話をして気がついたら告白をしていた。本来僕は、そんな軽い人間じゃない。


出会い系アプリでの出会いに半信半疑だったけれど、彼は「断る理由もないから」と僕を受け入れてくれた。


カインは僕より少し背が低くて、話し方は学校の先生みたいな印象だった。


小学校の保険室の先生だ。太縁の眼鏡がよく似合う丸顔をしている。


まつ毛が長くて、愛情をもって育てられた猫みたいな目をしていた。


髪は少しだけくしゃくしゃとした癖っ毛の黒髪だ。ベッドで眼鏡をはずして見えた僕だけの表情に、一瞬で心を奪われてしまった。

あの日からずっと、僕はずっと、彼に夢中だ。


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