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20代最後のゲイのBL短編集  作者: 赤井獺京
親友が死んだ理由

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『親友の死んだ理由』6

 レイコさんの家に入ると記憶の中の家とは違っていた。玄関に飾られていた沢山の家族写真は無くなっていて、芳香剤と片付けられていないチラシが置かれたままだった。

 左側にあるピアノの置いてある部屋は、ピアノに布がかけられていた。扉の窓越しから練習しているのをよく見て聞いていた。あまり詮索するのは良くないとレイヤの部屋のある二階に上がった。

 階段を登って一番最初の部屋だ。部屋に入る時は三回ノックするのが決まりだった。ノックをすると中からレイヤが扉を開けて出てきてくれた。僕は三回扉をノックした。


 トン。静かに響く。トン。僕は息を呑んだ。


三回目を叩く前に僕は馬鹿らしいと思ってやめて扉を開けた。部屋の電気をつけると僕はまた息を呑み込んだ。時間の止まった部屋がそこにあった。


 時間が止まったというのは、僕の記憶の中にあるレイヤの部屋そのままだった。小学生の頃に遊びに来た部屋そのままだ。この街も実家もこの家も、記憶の中にあるイメージとは少し違っていた。


 確実に変化している。いつまでも全く変わらない場所はないはずだ。古くなった建物は壊されて街の雰囲気は変わる。実家のリビングだってインテリアの配置は僕が居た頃と全く違う。それでもこの街はこの街であって実家は実家だ。変わりながらも変わらない場所だ。

 だけどこの部屋は変わることを拒んだかのように何も変わっていなかった。学習机、本棚とベッドはもちろん、布団の模様、本棚に置かれた少年漫画と学習図鑑、壁に貼られたレイヤの好きな戦隊ヒーローのポスター、僕とレイヤが笑顔で映るキャンプの時の写真、見るものすべてがそのままだった。


 最後にこの部屋に来たのは小学校の卒業式が終わった後だ。中学生になっても仲よくしようって二人で約束をしたのを覚えている。だけど中学生になってからこの部屋に来ることは無くなった。


中学一年の時は奇跡的に同じクラスになれた。だけど僕はサッカー部に入って帰る時間も遅くなってレイヤと放課後に遊ぶことがなくなった。それでもレイヤはたまに遊びに誘ってくれて駅前の方に行ったりゲームセンターに行ったり小学生の時には制限されていた場所に遊びに行った。


 僕は壁に貼られたキャンプの時の写真を剥がしてよく見てみた。僕とレイヤが水着姿で肩を組んで映っている。その二人の足首に巻かれたミサンガを見て思い出した。


「これを付けていれば僕たちはどこにいても繋がっているんだ。来年は中学生になるし同じクラスになれるか分からないから、お互いに他に友達がたくさんできてもたまにはこれを見て僕を思い出して遊びに誘ってね。僕も誘うから」


 僕たちの家族とレイコさんとレイヤの五人で、卒業前の最後の夏に二泊三日のキャンプをしに行った。キャンプ自体は初日だけで二日目は五人で旅館に泊まった。その最初の日の夜に、レイヤは赤色のミサンガを僕の右足に付けてきた。レイヤは自分の分を僕に渡してきて、付けてと言った。お互いの足に巻き付けることで二人の絆は切れなくなるおまじないだと説明してくれた。


「こんなのなくても、僕たちは一緒だろ?」と言ったけれど、中学生になることが不安だった僕はものすごく嬉しかった。ズボンをつかんで右の足首を確認してみても、今の僕の足にはもちろんなかった。

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