『親友の死んだ理由』4
次は郡山と前の電光板に書いてある。僕は首をこすってからストロング缶の残りを勢いよく飲み干した。口から少しこぼれてワイシャツに垂れる。そんなこともどうでもいいくらいに悪い気分だった。そして新幹線は郡山駅で停止して乗客を吐き出してからまた走り出した。新幹線はあっという間に暗闇の中に眠る福島駅に到着した。
新幹線ホームに降りると澄んだ冷気に身を包まれて、久しぶりの福島の空気に懐かしさを感じた。だけどこの懐かしい空気の中にレイヤがいないと体が分かっていると、無重力状態みたいな気持ち悪さに襲われて急いでトイレに駆け込んだ。僕はストロングとブラックサンダーを吐き出して、西口の駐車場に降りた。大きく変わったようで何も変わっていない駅前で、目の前にあった大きなイトーヨーカドーが建物ごとなくなって更地になっている。
ここにもレイヤと何度も遊びに来た。むしろ無くなっていてくれて良かったかもしれない。この街はレイヤとの思い出に結びつかない場所がない。いっそのこと全部取り壊してくれても、今なら文句もない。僕の心はスッキリするはずだ。駅前は大きな建物が一つ取り壊されただけで他は五年前と何も変わっていなかった。中途半端に時間が止まっているみたいだ。
駐車場には両親が迎えに来てくれていた。僕を見つけると手を振って元気だったか、ちゃんと食べてるか?痩せたんじゃないかと心配してきた。僕はそんなに心配されるのが嬉しくて、頬が勝手に上がってしまった。その顔を見られたくないと下を向いて大丈夫だよと言った。
顔を上げると、街並みは時間の経過をあまり感じさせないのに二人の顔には確かに時間の経過を感じさせた。時間は確かに過ぎている。
「ご飯食べた?一応作っておいたけど、好物のハンバーグとコロッケ」
母さんから見たら僕は、時間が経っていないのかもしれない。小学生の時の好物をこの歳になっても用意しているとは、僕は食べるよ、と言って後部座席に座った。車が走り出してカーナビのモニターにバラエティ番組が映っている。母さんはそれを見て笑いながら、父さんはツッコミを入れている。僕は窓ガラスに頭をつけて、車の振動を直に感じながら外の景色をただ眺めていた。駅から離れるほど暗く、暗く、暗くなる。街灯すら無い道は関東で生活していると考えられない。でも確かにここで暮らしていた。レイヤと遊んでいた。何もない場所でも二人なら楽しかった。
二人とも翌日の朝までレイヤのことは何も触れてこなかった。普通の帰省みたいに当たり前の夜を過ごした。ただ葬儀の時間を母さんが眠る前に事務的に言ってきただけで他は何も言わなかった。
僕は空っぽの胃袋にハンバーグを一つとコロッケ二つ、ご飯と味噌汁を入れてお風呂に入って眠った。久しぶりの自分の部屋は、僕が残していった本やフィギュアで構成された不完全な部屋だ。不完全だけど関東の自分の部屋より落ち着くのは座標的に、この場所にいた時間の方が長いからだろうか。とてもしっかり眠れた夜だった。そして起きると雨が降っていた。
「よく寝られたか?」」と聞いてきた父さんはすでに喪服を着ていた。母さんも同じだ。そうか二人も行くのか、考えてみれば家に泊まりに来ていた時はレイヤを双子の兄弟みたいだと可愛がっていた。二人からしても辛いはずだ。
目玉焼きと昨日の残りのハンバーグ、白ご飯が用意されていて食べた。いつも朝ご飯は食べないから食欲は無いけれど、母さんがせっかく用意してくれたのと、僕は生きているのだから食べるべきだと思った。ちゃんとした睡眠と、ちゃんとした食事で僕は明らかに元気になっていた。




