『親友の死んだ理由1』
僕も死にたい「かも」しれない。そのことばかり考えて途中まで見ていたドラマも見る気が起きないし、仕事帰りに通い始めたジムも行かなくなった。
そのことを考えなくても、長い通勤時間を少しでも有意義にしようと見始めただけで大して面白くもないし、休みが取れないから帰りに自分の時間を作ろうと通い始めたジムもヘトヘトな体じゃ通う体力も無かった。
そもそも初めの一カ月無料の広告に釣られただけで筋肉をつけたいわけじゃない。僕はただこれらをやらない理由にそれを使っているだけだ。
僕は死にたい「かも」しれない。理由は分かっている。だけどそれ以外にも理由がある気がして死にたい理由を書き出してみた。A4のノートを開いて書き始めようとすると、頭の中ではぼんやりと浮かんでいるのに一文字も書けなかった。しばらく悩んで、お風呂の栓を抜くみたいに一番の理由をまず書いてみた。
『レイヤが自殺したから死にたい』
そうするとお風呂の水は流れだして、次から次へと死にたい理由が僕の頭から肩、肘、腕を通ってペンに流れてインクとなってノートに染みこんでゆく。
『死ぬ前に相談してくれなかったから死にたい。インスタの投稿では幸せそうだったのに死んだから。僕には気づけなかったから。仕事が辛いから死にたい。朝起きたくないから。お金がないから。ギャンブルに負けたから。気づけば周りはみんな結婚しているから。みんなには子供が生まれているから。僕には彼女もいないから。飯を作るのが面倒だから。風呂に入るのも面倒だから。朝コーヒーを淹れる時に粉をこぼしたから。洗い物をしていたらお気に入りのカップを落として欠けたから。ただ何となく、寂しいから。生きる意味が分からないから。何のために働いているのか分からないから。帰り道に知らないおじさんに絡まれたから。親から結婚しないのか聞かれたから。出会い系でブロックされたから。また一日中YouTubeを見て無駄に過ごしたから。最近は誰も、遊びに誘ってくれないから。みんなには家庭があるのに僕には何もないから。来年には三十歳だから。胸の中が重いから……』
インクがなくなると僕はこんなにもくだらないことで死にたいのかと客観的に思えて笑えてきた。レイヤとは考え方が似ていたから、あいつが死にたかったなら僕も死にたいはずだと必然的に思い込んでいた。だけどレイヤは死んだ。きっと、こんなくだらないことの積み重ねで死ぬことを選んだのかもしれない。




