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20代最後のゲイのBL短編集  作者: 赤井獺京
僕はサンタとキスをした

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僕はサンタとキスをした②

募集している人を見てみると、クリスマスイブなのに相手を探している悲しい人が多い。みんな1人で寂しいのか、と思うと僕もその1人だと思い出してより悲しくなった。

 募集している人の年齢を見ていると、30代以上が多くて僕のタイプじゃない。とりあえず僕も「今から会いたい」の募集をして家に帰った。雪は降り続いていて、自転車に乗るのも滑りそうで怖かった。家まで自転車で15分、静まり返った夜の住宅街を1人で走る。通り過ぎる家の明かりは昨日よりも暖かい明かりに見えて、あの中にはクリスマスの幸せな家庭があるんだと想像してしまう。手が冷え込んで、少し痛いくらいになった。誰か温めてくれないだろうか。片手ずつポケットに入れて暖を取りながら走った。


 ちょうどスマホの入っている右ポケットに手を入れているときに、スマホが振動した。自転車を止めて見てみると、「あなたの投稿に反応がありました」と通知が来ていた。アプリを開いてみると、サンタクロースから「いいね」が押されていた。正確に言えばサンタクロースのアイコンの人だ。可愛いサンタクロースの置物の写真。顔写真は乗せられていないから分からない。

 僕は雰囲気の分かる写真だけ乗せている。どう撮ればいいのか分からずに数十分悩んだ写真だ。サンタクロースのプロフィールを見ると、年齢は19歳で、身長は僕より5センチ低い、170センチだ。体重は53キロで、プロフィール的に言えば好みのタイプだ。冬休みで実家に帰省中と、自己紹介のところに書かれていた。悪くはなさそうだと、僕はメッセージを送った。


「こんばんは、メリークリスマス」


 早く家に帰ってからメッセージをすればいいのに、僕の体は冷え切っていた。

「初めまして、メリークリスマスです。イブの夜なのに1人で寂しくなっちゃって一緒に過ごせる人がいないか探していました」とサンタクロースから返事が来た。「僕も一緒です」とそれに返した。


 しばらく他愛のないやり取りを続けていると手がかじかんで、上手くメッセージが入力できなくなってきた。僕は寒さと寂しさと空腹感で半ばやけくそでメッセージを送った。


「チキンもケーキも無いですけど、家に来ますか?これから一緒にクリスマスを過ごしませんか」


 メッセージのやり取りしている感じ、悪い感じの人ではなさそうだから勇気を出して誘ってみた。数分経っても返事が無くて急ぎすぎたかと後悔した。僕は自転車に乗って家に帰った。帰るとちょうど通知が来て、返事が来ていた。

 ビニール袋の写真と一緒に送られてきた。「コンビニのでいいなら一緒に食べましょう。チキンとケーキ買っちゃいました」そう送られた文章の後には、サンタクロースの絵文字もつけられていた。顔も知らないサンタクロースに僕は家の住所を送った。本物のサンタクロースなら住所を教えなくても来られるか、送った後にそんなことが浮かんだ。


 出会い系アプリで誰かに会うのは3回目だ。2回ともご飯を一緒に食べたけれど思った以上に会話が弾まなくて盛り上がらなかった。そして解散したらブロックされていた。家の住所を送ってしまったけれど、どこか近くで待ち合わせにしておけばよかったと後悔した。寒さで頭が回っていなかった。少し後悔をしながら部屋の明かりと暖房をつけた。さっき見た外の家の明かりと違って冷たい光だ。

 携帯を見るとサンタクロースから、今から向かいますとメッセージが来ていた。10分くらいで着くようだ。急に緊張してきて、胸がドキドキと高鳴る。顔も知らない人を家に呼んでしまっていいものか、本当はおじさんで年齢を偽っていたらどうしよう。覗き穴から覗いて様子を見るか。


 部屋が温まってきて、ご飯を食べて眠ってしまいたいという衝動も出てきた。会うのが面倒くさくなってきた。居留守を使おうか、ブロックしてしまおうか、いろんな感情が渦を巻いた。だけど答えが出る前に部屋のチャイムが鳴った。

 僕は唾を飲み込んで、足音を静かに玄関に近づいた。覗き穴から覗いてみるけれど暗くて見えない。どうにでもなれ、と思って玄関を開けた。


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