第一章④ "学友"
そうして時は現在に戻る。
「それで、感じ悪い態度で挨拶を返してくれた真夜は一体何を考えてたんですか?」
「悪かったって…」
感じの悪い風になってしまったことを嫌味ったらしく言ってくる真昼に苦笑してしまう。
「まあいいんだけど。実際何考えてたの?」
「ぼーっとしてたが一番正確だけど、強いて言うなら…どのクラスに該当するか、だな」
「…ああ。なるほどね」
学園では主にS、A、B、C、Dの5つのクラスに分けられ、クラス分けは知識思考力、身体能力、能力の3つの観点の総合点を図る総合150点のテスト、通称IPSテストによって定まる。
「真夜何点だった?私119点」
「…確か131点」
「え、きも」
「きも、は心外だな」
僅かに距離を取りながら蔑んだような目で言葉を浴びせる真昼。そんな言葉に真夜は少しムッとするがそれは顔には出さない。出さなかったが何かを察した真昼は慌てたように次の話題へと転換する。
「そ、そういえば年によって基準は違うけど大体115点越えでクラスSだよね?」
「確かそうだな。って言ってもクラスSはランクSの事じゃなくて、ランクB上澄みからランクA相当を表すものだからそんなに大したものでも無いけど」
「だよね。てことは多分私たち二人ともS入りできそう…あ、あとその発言は後ろから刺されるから辞めようね」
「気をつけまーす」
そのように駄弁っていると学園の目の前に着く。
「改めて、これからもよろしくね。真夜!」
「同じく、よろしく。真昼」
そうして二人は魔境の水に自ら染まりに行った。
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既に張り出されたクラス表と経路図を見て、自身のクラスへと向かう。道中ですれ違う生徒は皆どこか緊張した様子だった。目当ての人物を多少探すが、どうせクラスで会えるだろうと考え人探しは中断した。クラスのドアを開けると、喋っている生徒数人と自席で黙然とした様子の生徒が数人。そのうちの何人かが一瞬視線をドアに向けるが、すぐに背ける。現在クラスにいる人数はおよそ10人。席の数的にもあと残り多くて30人といったところだろうか。とりあえず自分の席の方へと向かい、先にいた生徒に声をかける。
「やっぱり同じクラスだったな。真昼」
目に見えないほど一瞬だけ肩をビクッとさせ振り向く。
「そ、そだね」
「?どうした?そんなに緊張して」
「いや、だってさ」
只事ではなさそうな雰囲気に真剣に聴き入る真夜。そして真昼はその口を開いた。
「本当にSクラスだとは思わないじゃん?!」
「…え?」
「いやなんだかんだ言って結局Aクラスだと思ってたからこんなんだけどめちゃくちゃ今嬉しいんだよね」
「ああ、うん。そっか」
物凄く白けた態度と反応と顔で心底どうでも良さそうに返す。それに気づかない真昼はまたしばらくの間ペラペラお喋りするのであった。
クラス内に合計40人ほど揃った頃、美波からクラスAだったことがメールで知らされ若干一憂した。
「美波が他クラスなのは残念だけど、同じ学校なのは良かったよね」
「でもあの時誰も自己紹介でこの学園に通うことは言ってなかったけど全員分かってたよな。こいつも多分同類だな、って」
「能力者は生物としての自我が若干曖昧なところがあるからそれが所以かもね」
「自我が薄いから同じ様態のやつと自我が混ざって…ってことか?」
「まあそういうこと。能力って言うか魔法分野での知識だけど」
真面目な話をする時は割と博識だよな。そのような感想を抱きつつ会話を続けていると、隣から声を掛けられる。
「私たちも会話に混ぜてもらっていいかしら〜」