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神魔の元で  作者:
第一章 "神と能力"
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第一章② "本物の吸血鬼"

事情を聞き出した真夜たちは男を解放し、軽く食べ物を奢ってやった。去っていく男を二人共に眺めなていると、少女が思い出したかのように口を開く。


「…そういえば、色々あって言えてなかったわ。ありがと!えーっと」


名前を知らないため少し迷った様子を見せた少女に対して彼は、


「一ノ瀬真夜。これが僕の名前」


と自己紹介をする。


「真夜…ね。うん、いい名前!私は葵真昼!改めてありがとね!真夜!」


満面の笑みで感謝を述べる真昼に対して、


「別に大したことはやってないよ。それどころか事情も聞かずに突っ込んでより迷惑かけたから寧ろこっちが後始末ありがとうって感じ」


と非を詫びる。


「いやいやいや、あのまま戦ってたら大事な大事な私の顔に傷がついてたかもしれないから感謝は受けとって!」

「ならいいんだが…」


お世辞としてではなく割と本当に心配だった真夜はその言葉を聞き、安心するが、


「あれ、私の小ボケは拾ってくれないの?」


と真昼と名乗った少女は不貞腐れる。何か触れた方がいいか考えた末、放置する、と結論づけた彼は心外そうに見てくる少女を尻目に身を翻して、


「じゃあ僕はこれで」


と、そそくさと帰ろうとする。そんな彼を少女は慌てて引き止めて、


「待って待って、さっきの男の発言について少しくらいは考えようよ。現場検証も大事大事」


と説得する。その説得に彼は、


「それもそうか」


と応じた。


「じゃあまあとりあえず僕の意見から。僕的には信じ難いけど、能力者が群れてたってことはそれ相応の何かがあるんだろうし、本当なら管理者に通報でもしてあとは任せた方がいいと思う。けど…」

「それでもいいっちゃいいけど、最近の管理者はアレを捕まえるのに躍起になってるから下手に通報なんかしたら違った時にどんな仕打ちが待ってるか…でしょ?」

「ああ。そういうこと。しかも違これでったらあの子にめちゃくちゃ申し訳ない。一番の手はいっその事僕らで真意を本人に確かめることだけど、どうする?」


そう提案した彼を勝ち誇ったような顔をしながら少女は見る。


「…何だよ。その顔は」


思わずツッコミを入れてまう真夜。


「僕らって言うのは当然真夜も入ってるよね?」

「そりゃそうだが、え、ほんとに何の確認?」


さらに訝しみ始めた彼に対して少女は答え合わせをする。


「なら、一緒に私の家行こうね?」

「…あぁ、そういう事…帰れねぇよってことね」

「理解が早くて助かる助かる!」


さっき助けたか弱そうな少女は真昼の家へと避難している。即ち事情を聞くならば真夜も家へとついていかねばならない。


「自分から言った以上別に僕は良いんだけど見ず知らずの男を家にあげるのって普通に嫌じゃないか?」

「別にそんな?寧ろ友達作りたいからウェルカムって感じ」

「え、てことは勝ち誇った顔の意図って友達候補ともう少し話せるから?」

「そうだけど…何か変?」


少し可愛らしい所…というよりアホらしい所を目の当たりにし、思わず目を伏せる。


「あれ、照れてる?照れてる?」

「呆れてるだけだ」

「酷い!」


そうして彼はやはり面倒に巻き込まれた。



───────────────────────


真昼の家に辿り着き呼び鈴を鳴らすが、中から反応はない。


「あれーなんで出ないんだろ。留守なわけないし…まあ鍵あるからいいんだけどさ」


ガチャ、っと音を鳴らし、


「ただいまぁ!」


と声を上げるがやはり反応は無い。


「え、ほんとに大丈夫?」

「あの話を聞いたあとだと少し心配だな」

「先手必勝ってことでこっちから攻めちゃお」

「えまじ?」


足音を立てないように慎重にリビングの扉へ近づき、

バーンっと音を立てながら扉を開けると、


「へぇそうなんですね!勉強になります!」

「あくまで一個人の意見だがな」


先程助けたか弱そうな少女と真夜よりかは歳をとっていそうな若い男が談笑していた。ムスッとした顔をしながら手に持っていた買い物袋で後頭部を殴り付ける。


「あ痛っ!」

「あ痛っ!じゃないわよ!愛しい愛しい娘が帰ってきたらまずは、おかえり!でしょうが!」

「こんな凶暴な娘やだ…」

「こんな堕落の限りを尽くしてる父親やだ!」


コントのようなやり取りに、真夜と助けられた少女が呆ける。それに気づいた真昼が慌てて咳払いをする。


「んっ、んん。大変お見苦しい所をお見せしました。きちんと自己紹介させていただきます。私は葵真昼。この終わってる男が葵湊。一応私の父親です」

「あ、因みにここで言う一応は本当の意味の一応だ。皮肉でも冗談でもなんでもなく、まじで血は繋がっていない」

自己紹介をされるだけだと思っていたらとんでもない爆弾を投下する真昼たち。その雰囲気を感じとり2人共自身の失言に気がつく。


「お、おい。自己紹介でこれはまじで禁句だろ!」

「言っちゃったもんはしょうがないでしょ!どうにかして!」

「どうにかって…」


小声で何か言いあっている様子を見て、真夜は助け舟を出そうとする。


「あー僕らも自己紹介するよ。名前は一ノ瀬真夜。最近は魔法の研究にハマってるかな」

「え、魔法!って言うことはさっき私に回復魔法いきなり頼んだのも私が使えるって視えたから?」

「それに関しては勝手に口から飛び出してた感じだけど多分無意識のうちに感じ取ったんだと思う」

「なるほどねー!」


気まずい空気を流してくれる会話を始めてくれた真夜の話にしっかり乗り、さっきの暗い雰囲気を拭う。

「えっとじゃあ私もこの流れで自己紹介するね。私は七海美波。特に趣味とかはないかなぁ。あ、先に言っておくと種族は吸血鬼ね」

「え、吸血鬼!?初めて見た!ちょーレアじゃん!」

「種族に対してレアは失礼だぞ」

「そーだそーだ真夜君の言う通りだ!教養がないぞー」

「教養は父親に似ちゃってるから〜しょうがない!」


とある世界では物語上の架空生物としても取り上げられる吸血鬼だが彼らが暮らすこの世界では吸血鬼は人類の一部となっている。もちろん吸血鬼のため、日光には弱く、力は強い。それでいて血液を基本必要とする。しかし、


「ずっと気になってたんだけど吸血鬼の人って血液問題ってどうしてるの?あ、言いにくかったら全然言わなくていいよ」

「えーっとね、実は太古の時代では血液が必要だったんだけど今は一般的な食事でもエネルギーは賄えるんだよね。血液が一番いいっていうのは間違いないけど」

「へー、勉強になる!」


素直に感心する真昼を見て、真夜は静かに湊に近づき耳打ちする。


「あれ、失礼ですがあなたの娘さんって本当に教養がない…?」

「ああ。悲しいほどにない」


二人して悲痛な面持ちをしていると、真昼からどうしたのー?と声を掛けられるが2人は口を揃えて


「いや別に」


と返した。

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