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神魔の元で  作者:
第一章 "神と能力"
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第一章⑨ "尋問"

───────────────────────


突如崩壊した空間の背景には二つの事象があった。一つはクラスA能力者による命を賭した最大規模の自爆。本来ならば空間内にいた生徒全員が死滅し、この学園は終わりを迎えていた。が、それを二つ目の事象が阻んだ。それがゲームの終了である。ゲームの終了条件は多くの生徒が予測していた通り規定人数の死亡である。その条件は、東部の人間全員が死滅したことにより満たされた。


それをまだ知らない生徒は当然頭に疑問符を浮かべた。


「……終わった、のか?」


真夜は一人疑問を投げた。その言葉に誰かが返すことはなく、辺りの喧騒に揉まれて霧散した。


───────────────────────


そういったアクシデントはありつつも、その後は無事に入学式を迎えることができた。学園側から先の事態の顛末を聞かされ、生徒は驚愕に染まった。


しかし学園側ではもう一つの問題点があった。


ある会議室に玉座を思わせる位置に座る学園長、そしてその他教師が会合をしていた。


「一切の省略を行わなかった神勅、それも命を賭したもの、それの影響で生物が死滅することなんて何もおかしくはない。それを避けられなかったのも察せられなかっただけだ。だがな、」


学園としての特権である能力と死亡者の精査は既に済んでおり、この件は解決に進むとばかり思われた。しかし、ある重大な問題点が一つだけ残った。それこそが、


「意図された被爆者は誰だ?」


全員がそれには沈黙を返す。


「あの爆発規模と死亡者を照合した結果、能力は爆弾魔(ボマー)で間違いないことがわかった。だが爆弾魔が自身の命を焚べてまで爆殺を試みる対象が死亡者には見受けられない」


「つまり、あの規模の爆発を生き延びた奴がいる、と」


別の教師がその論旨の続きを請け負う。


「命を賭した爆弾は空間そのものを破壊する威力を秘めていた。仮に我々教師があの空間内に居たとして五体満足で生還することは…却々(なかなか)、難しいでしょうね」


ここでも生存が不可能とされないのが学園教師の末恐ろしい点であるが、この場の誰もその様な感想は抱かない。彼らにとってはそれが当たり前であるから。


「絶対防御の線は無いのか?」


「そちらの線は既に検証を終えました。結果、騒動の二分前に島の西端で能力発動の痕跡が確認された、との事です」


「なら不可能ですね。被爆者の痕跡を辿ることは?」


「そちらも芳しくありませんでしたね。何せ戦闘の情報の一切が残されていませんので。能力発動による空間の歪みは確認されていないため魔術や幻術の可能性は考えられますが…」


「確実な情報は無さそうですね〜」


再びの沈黙。議論は煮詰まった。その結果議論の不可能性が示されてしまった。なんとも皮肉であるが結論は覆らない。


「では、会議の結論としましては、有り得ない事象を完遂した生徒が一人必ず生存している。ということでよろしいでしょうか」


誰一人首を縦にも横にも振らなかった。


───────────────────────


後日生徒に向けられた報告にはめぼしい情報は掲載されなかった。死亡者数と今試験の各データ、そして生き延びた生徒約四百名が正式に生徒として迎え入れられるということ。


謎の解明を求める勢力も散見されたがそのほとんどが無駄足となった。


中には教師陣と同じく爆弾魔による犯行であることは突き止めた者もいたが結局は教師と同じ原因でその考察も行き詰まった。


当然先の騒動の疲労が回復したタイミングで教師による大規模な聞き取り調査、という名の尋問が行われた。


「一ノ瀬真夜、あなたは能力発動の歪みを感じ取り、全速力で逃走を試みた。ということであっていますわね?」


「……訂正させていただきますと、歪みを感じ取った。というよりも私の考察の正解を恐れたから逃げ果せた。ですね」


一端の教師なら幾分か砕けた口調で応答を返したであろう真夜であるが、この場においては当人が使える最大限の敬語を扱った。理由は単純、尋問を行っている、つまり目の前に今いる教師が一端の教師ではなく、


「納得いただけますか?学園長」


生残戦開始の際の声の主である、学園長。そんな大役が相手だったからである。


「私としてはなぜ学園長が直々に尋問を行っているのか疑問で仕方がないのですが……」


「その問いに答えるとするのならば重要人物になり得る生徒は私が直接尋問をするということで話を通してあるからですわね。自分が直接見聞きした情報以外を信じるのはどうも難しく感じてしまう性ですので」


「……なるほど」


要するに自分を信用している。嫌な言い方をするのなら教師を信用していない。ということになり、多くの教師を敵に回す発言であるのにもかかわらず余裕綽々な態度を取っていることから、彼女が相当な実力を兼ね備えていることが察せられる。


「…………」


なぜ自分がこの場に呼ばれ、尋問官がこの人なのかも理解した。学園には崩壊した世界の能力の残穢を読み取る術があることも把握した。その一方で魔法などについて言及がないことからその手の力を判定する方法はないということも。そして、事件の真相に近づいたような気もした。


その感覚の真偽を判定するために情報を小出しすることにした。


「……私が敵対した相手が洗脳されていたことはご存知ですか?」


「へぇ、そのようなことが……ふむ、なるほど」


学園長であるのだから純粋なフィジカル以外の実力も当然持っているだろう。故に彼女もまた真相に近づいた。犯人がエルフである可能性が極めて高い。という事実に。


しかしどこか不服そうな雰囲気を醸し出しており、そのことから更に察せられた。


「……爆心地付近で、犯人の能力の残穢を検出できなかったようですね」


「ふふふっ、強かですわね。その通りですけどね」


尋問を受ける立場だというのに情報収集に事欠かない態度に対しての感想だろう。


「……私も命の危機に晒されたわけですから。犯人に対しては怒りを覚えているということです」


「犯人は爆弾魔の能力者ですけどね」


「……より根本的な方ですよ」


少し遊ばれているような気もした。どうも話しにくい相手だ。敬語を使わなければならないというのもそうだがどこか見透かされているかのような感じがする。


「最後は少し尋問ではなくなってしまいましたね。ですが、尋問はこれにて終了です。退席なさって大丈夫ですわ」


「……そうですか。失礼します」


少し消化不良でもあるが、退席を暗に命じられたのだからそれに反発する必要はない。


席を立ち、背中を向ける。扉を開け、外に出る。


「最後に」


扉が閉まる瞬間に、かかる声が一つ。


「爆心地からはあなたの能力の残穢も確認されたということだけ、お伝えしておきます」


「!!!!!」


ガチャ、という音と共に扉が施錠された。言葉の真意を確かめようと再び扉を開けようとしたがそれは叶わなかった。


爆弾から全力で遠ざかった自分の残穢が爆心地で発見された?


どんなに頭を捻ってもそれへの妥当な解答は浮かび上がらなかった。


久方ぶりです。小説書くのって大変ですね。こんな作品でも数時間かかるのだからプロの方たちに尊敬の眼差しを向けないことはできません。

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