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神魔の元で  作者:
第零章
1/3

① "神が始めた日"

遥か昔、まだ種族の区別など無く、ただ平穏に生命は暮らしていた。そんな太古の世界を観測していたある上位神は更なる世界の発展を望んでか、ただの退屈しのぎがためか、神の権能の一部を"能力"という形で、下界に産み落とした。その能力は他人を害することは不可能なもので、能力を得たものたち、能力者は生命全ての生活をより豊かにする為だけに能力を用い、世界全体の幸福を実現しようとした。

数千年が経過した時代、そんな幸福は一変する。 他人を害することが出来る能力を持つ者が現れてしまったからだ。そして不幸にも、彼らは他人を害する事に対して何も罪悪感を覚えなかった。

平和は一欠片の悪意によって崩壊の一途を辿る。ある地帯では力に溺れた"傲慢(スペルビア)"な人間が、ある地帯では力を渇望した"強欲(グリード)"の吸血鬼が、ある地帯ではあらゆる事象に"憤怒(イーラ)"した鬼が、ある地帯では生を堕落そのものだと考えた"怠惰(アケーディア)"の思想を持つ亡霊が、各地で暴動を起こし世界の半分を消し去った。生き残った生命は正義の鉄槌を神に求めた。そんな生命を侮辱するかのように彼らが唱えた言葉は、


"唯我至神(ゆいがししん)"。


自身が最強だと思い込んだ彼らはその力をより広範囲へ知らしめようとする。

そんな彼らに対抗するようにして、妖精が"慈愛(アフェット)"について教え、エルフが"純愛(アモーレ)"の尊さを知らせ、マーメイドが"自制(アブスティンティア)"の大切さを説き、武力による恐怖支配ではなく、安心をもたらす穏便派として生命を纏めあげた。

大した時間も経たずに、神は天使と悪魔を神の使いとして下界へ召した。当初の穏便派は神が救いの手を差し伸べたのだと錯覚した。しかし、神の使いは暴動を起こした種族だけでなく、穏便派も含めた全ての生命を鏖殺していると理解した。神自身のプライドのために使いを召したのだ。与えられた分際で神を自称する事実に腹を立てただけだ。その事実は穏便派を大きく歪ませた。そして、穏便派もある大罪を犯した。

一方で、神の使いは命令を遂行する過程で、暴動を起こした者たちと出会う。相も変わらず彼らを鏖殺しようとした。だが、神の使いは死んだ。神の使いは殺されたのだ。人間によって、吸血鬼によって、鬼によって、亡霊によって、生命によって。上位存在の殺害が可能であると証明されてしまった世界は正に魔境へと変わり果てた。挙げ句の果てには、上位存在を自ら殺して回る化け物さえ生まれた。こんな狼藉を働く彼らを神々が当然許すはずもなく、直接裁くために神自身が下界へと赴き、後に"天地戦争"と呼ばれる戦争を引き起こした。その過程で多くの生命が、多くの神々が死滅、消滅した。





大いに荒れ果てた世界の秩序を戻すために、神は下界に対して"原初ノ掟(オリジンコード)"を設け、下界ではそれぞれの種族が不可侵条約を結び戦争は終息した。事の発端となった上位神は姿を見せぬまま。


───────────────────────


これが現代にも語り継がれている神話の一説である。



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