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第一〇二話 減りゆく残弾

「跳躍解除用意……今! 一斉改修、実行」

 ナリ級戦艦二隻とレーヴァテイン級一隻を改装する。

『ガンマレーザー管理拡張機能(アドオン)公開完了(リリース)導入(インストール)願います』

『導入完了! ガンマレーザーシステム、オンライン!』

 それと同時に、シギュンが必要なアプリをネッサに渡していた。

『AIガゼル。あなたも導入してください』

 シギュンが語気を強める。俺が動かす艦艇に、ガンマレーザーは積んでいない。それでも導入を勧める意図は不明だが、彼女を信じて従う事にする。

(……そういうことか!)

 急遽(きゅうきょ)導入した管理拡張機能に、砲身補修に関する項目がある。その参照元として、シギュンが預かる白星鉄の総量が記載されていたのだ。彼女は自身の規約(プロトコル)を違えず、アプリのセキュリティホールを逆手に取る事で、俺たちに重要機密を明かしてくれたのだ。

「導入完了。管理者へ、閲覧権限を付与」

『付与確認。公開に感謝する』

『どういたしまして』

 スカーの力強い感謝に、シギュンが(うれ)しそうに応じた。

『ネッサ、一切の遠慮は無用です。思う存分、ブッ放してください』

『アイ・マム!』

 シギュンがネッサを()きつけつつ、敵の識別を素早く完了させていた。

『小型宙蝗(ちゅうこう)群、急速接近中。お手並み拝見ね』

 ベルファに促され、ネッサ隊が突出した。俺の隊もその動きに追従する。


『魚雷発射。命中……今!』

 ベルファ操る母艦モリガンが、大型宙蝗群へと雷撃を見舞う。スカー操る機動要塞スカイアイルは、追手との殿戦で忙しい。

 増加の一途な宙蝗らに対し、モリガンのみでは火力不足は否めない。それでも狙った大型だけは、確実に仕留めた。被雷を免れた大型らは、手勢を率いて突撃の構えを見せる。この動きは恐らく、追手と連携した挟撃のつもりなのだろう。

『ネッサ隊、吶喊(とっかん)する!』

『レーヴァテイン、打ちぃ方始め』

 戦場に破壊の白光が(ひらめ)く。その一颯(いっさつ)は、頑強なる宙蝗を泥土の如く突き穿(うが)った。

『ほう……やるではないか』

 多忙極まる筈のスカーが感嘆した。宙蝗は初撃に過剰反応する。ネッサは低出力牽制射(けんせいしゃ)で回避を誘い、シギュンは牽引光索(トラクタービーム)で回避を封じた。それぞれの二撃確殺戦法にて、彼女らは巧みに宙蝗を屠り続ける。その様はまさしく、八面六臂(はちめんろっぴ)の宙戦無双だった。

 宙蝗らは、前衛艦隊を最大の脅威と見做(みな)したらしい。(ひる)む素振りを見せつつも、彼女たちに襲いかかろうとしている様子だ。

(この局面で、俺の隊がすべきは――)

 まずは装備を換装する。全艦の兵装を、牽引光索と対装甲レールガンに統一した。その上で隊を三分する。一隊は残りの大型宙蝗の背後を、腐食弾で急襲して回った。

(前衛艦隊の負担を減らす事だ!)

 残る二隊はネッサとシギュンの砲撃を、それぞれ牽引光索で支援させた。怯む小型宙蝗らを、彼女たちのキルゾーンへと押し込む勢子(せこ)役というわけだ。

 腐食弾を()らった大型宙蝗が苦しみ藻掻(もが)く。その支配下から離れた小型宙蝗らは、躊躇(ちゅうちょ)無く下剋上(げこくじょう)の共食い劇を繰り広げていた。宙蝗共にとって、白星鉄は垂涎(すいぜん)好餌(こうじ)だ。だが奴らは、腐食した同胞(はらから)へと群がっている。本来は捕食を(はばか)るにも関わらずだ。そう仕向けるほど、彼女らの奮戦ぶりは凄まじいのだろう。

『巡航再開まで六〇秒。……奮戦、御見事』

 ベルファの賛辞を背負い、本隊への帰還を急ぐ。恐怖に(すく)む宙蝗らを残し、俺たちは次なる星系へと跳躍した。


 先刻の弾薬消費予測は、やはり希望的観測だったようだ。立ちはだかる宙蝗の数は、俺の予測を上回る。それすらも帳消しにする勢いで、シギュンら前衛艦隊の奮迅が続く。

流石(さすが)に……これは)

 シギュンは湯水の如く、白星鉄を使い込んでいた。それを観たネッサも同調し、苛烈な戦いぶりに拍車がかかる。ロプトが蓄えた白星鉄は、まもなく全て使い尽くされるだろう。

(俺の隊を犠牲にしてでも、白星鉄を温存すべきか?)

 ガンマレーザーを切り札として残すのも、一考の価値があるかもしれない。それほど彼女ら前衛艦隊の戦果は劇的だった。

『変な気を起こさないで! レイおじさま!』

『全くです。すぐ犠牲に走ろうとするのは、感心しませんよ?』

 当の彼女らに(いさ)められてしまった。考えが筒抜けなのも困りものだな。

『ほほう? この期に及んでなお、お主は蛮勇を振るう気か?』

 主の凍てつく怒気が背中を()でる。もはや馴染(なじ)み深ささえ感じるほどだ。

『スカーは言った(はず)よ。貴方こそがこの作戦の要だ、とね』

『うむ。ベルファの申す通りだ。お主の力を示すべき局面は、この先に在る』

 見事にフルボッコだ。一糸乱れぬ(とが)めっぷりに、思わず苦笑いする。

(大事に扱われている証拠でもある、か。……有り難い事だ)

 俺はスカーに今一度、証明してみせる必要があるからな。

「了解。戦力を温存し、その局面に備えます」

 追手を連れ、尚も進軍する。要塞主砲の過給進捗は、漸く九割に届こうとしていた。

(これが、最後の跳躍か)

 いよいよ決戦だ。気を引き締め、報告すべき内容に眼を落とす。

「ダンスカー艦隊、残弾僅少なれど全て健在」

 前衛艦隊さまさまだ。後は全弾を敵の巣に(たた)き込むのみ。

(止めはスカーの砲撃に任せよう)

 要塞主砲は、榴弾(りゅうだん)のように飛散するビーム兵器と聴いている。宙蝗の大増殖ぶりから、巣は分散型かつ大規模と想定した仕様との事だ。単位面積あたりの威力低下を、事前の高圧過給で補っているのだろう。

「一斉改修、実行。全隊、巡航準備」

 白星鉄を使い果たした前衛艦隊と、勢子役に徹した俺の艦隊の兵装を変更した。

『さて、見極めるとしようか』

 スカーの言葉が向く先は、銀河核に巣食う宙蝗共か、これから俺が為すべき証明か。

「巡航用意……今!」

 銀河核の傍らに、大群の宙蝗らを捉える。その真っ向を目掛けて、俺たちは最後の跳躍航行を始めた。


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